野菜ソムリエ、北海道のまつのベジフルサポーターの福島陽子です。
今回取材に伺った町は、胆振地方にある勇払郡のむかわ町。むかわ町と言えば、北海道の太平洋沿岸のみで獲れる秋が旬の魚「鵡川ししゃも」と、穂別地区で首長竜の化石が発見されたことでも有名ですね。
水産業のイメージが強いむかわ町ですが、農業もとても盛んな町です。日高山脈が源である鵡川の河口に広がる肥沃な大地。上流の蛇紋岩を通りマグネシウムなど豊富なミネラルを含む水を運ぶ鵡川は太平洋にそそぎ、農作物と海の生き物を豊かに育てています。
冬は比較的温暖で降水量や降雪量も少ないむかわ町で、冬の特産物として大きな役割を果たしているニラ。市場関係者の間でも葉肉が厚く甘みが強いと評判です。
今回、むかわのニラの取材に伺わせて頂いた「株式会社 小坂農園」。自然の恵み豊かな鵡川のほとりで、3代に渡り、この土地で農業を続けていらっしゃいます。爽やかな笑顔が素敵な代表取締役の小坂幸司さんにお話を伺いました。
小坂農園のニラは、こちらのハウスで栽培されています。ふだんは雪が少ない鵡川地区ですが、今年は雪が多いとのこと。ご覧の通り、ハウスが雪に埋まっています。
ハウスに入ると、早朝に収穫を終えたニラの残り香りがふんわり。
むかわのニラの品種は「パワフルグリーンベルト」で葉色が濃く、葉肉が厚い品種です。小坂農園では土に合った成分を解析して窒素を減らすなどの工夫を凝らし、ピンっと立った生命力のあるニラを作ってます。
取材に伺った2月頭は、休眠させた株から最初に出る1番ニラの収穫期。アスパラ鎌を使用し、45cmまで育ったニラを根元から刈って収穫します。株の大きさを見て判断する目利きが必要な作業です。
ハウスは3重にかけられ、冬場は壁面下部に風船状に空気の層を作って保温しています。
冬の間も日光が出ていると室温が上がりすぎる日があるので、ハウスに外気を取り込んで温度調整をしているとのこと。夜間は冷え込むため、病害虫の発生は極めて少なく、農薬の使用をほとんどせずに育てることが出来るそうです。
ニラ栽培の1年の流れは、3月にニラの種を蒔き、6月に定植。夏は株を養成し、にんにくのように球根を太らせます。11月後半にニラが枯れるので、枯れた葉を取り除きます。
ブラックマルチとハウスで被覆すると、1週間でニラの芽が伸びてくるとのこと。12月下旬頃には一株ずつブラックマルチのフィルムを手作業でカットし、ニラの芽にたっぷり日光を浴びせてあげます。
そして1月上旬、1番ニラの収穫がスタートします。旬の時期である1月~3月、1つの株から3回だけ収穫が行われます。むかわでは一番美味しい時期のニラだけを食卓に運んでいるのですね。
ニラは収穫後、作業場の機械で圧縮空気を当てて根元の薄皮や汚れを飛ばします。
100gの重さを計り、「むかわ」のテープで束ねられ、JAむかわなどに出荷されます。
1回の種で約3年行われるニラの収穫。収穫後も翌年に向けてニラの株に力を蓄えさせるため、1年がかりの地道な農作業は続きます。
「(年間を通して農作業があるため、)冬の野菜は結構大変なんですよ。」と小坂さんはおっしゃいます。
そんな素敵な取り組みを行う小坂農園では、美味しいニラのほかにも雪のように真っ白でふわっとした甘みが特徴の「ゆきさやか」という美味しいお米を中心として、様々な農作物が作られています。
後編では、そんな素敵な小坂農園のうるち米「ゆきさやか」と、甘酒や塩麹、自社工場で作る加工品、そして小坂さんのニラで作ったニラのお料理をご紹介致します。ぜひご覧くださいね。
野菜ソムリエ、北海道のまつのベジフルサポーターの福島陽子でした。