こんにちは。山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。

「マンゴスチン」や「チェリモヤ」と共に「世界三大美果」とされている「マンゴー」。インドから東南アジアにかけての地域を原産地とするフルーツで、以前はほとんどが輸入に頼っていましたが、最近は日本でも沖縄県や宮崎県、鹿児島県などで栽培が行われるようになりました。山梨県でもマンゴーを栽培している生産者さんがいるという噂を聞き、松野貞文社長と一緒に訪問しました。対応してくださったのは株式会社採園の齋藤修平さん。

齋藤さんは山梨県でマンゴーを育てるために、宮崎県の生産者さんの農場で8か月間学びました。その後、その技術を使って2015年5月頃から栽培を始め、今年初めて販売できるマンゴーが収穫できるようになりました。ハウスに入ると、一つひとつ丁寧にネットに入れられ、吊るされている大きなマンゴーがたくさん。

こちらで育てているマンゴーはアーウィン種。国産マンゴーのほとんどがアーウィン種で「完熟マンゴー」として出回っています。国産マンゴーの最盛期は5～7月頃。齋藤さんが育てたマンゴーも5月20日から出荷が始まり、6月下旬には終了予定。今シーズンは近隣の直売所と八ヶ岳南麓にあるこだわりのスーパーひまわり市場のみで販売していました。

こちらのハウスのマンゴーは、3月上旬にミツバチの力を借りて受粉を行い、その約2週間後に摘果作業。その後実が3センチ～4センチくらいになったタイミングでネットに入れて吊ります。これは実の重さに耐えられなくなった枝が折れて実が落下しないようにするためです。

木は全て1メートルくらいの高さにそろえられています。この高さに制限することで作業がしやすく、栄養分が凝縮したマンゴーを育てることができます。それぞれの実の下には高密度ポリエチレン極細繊維で構成された糸を熱と圧力で結合させた不織布「タイベック」をつけています。これを付けることで着色促進や糖度上昇、光反射による害虫行動抑制などの効果が期待できます。果実の袋掛けにも使われる素材ですが、袋掛けを行うと表面に傷がつきやすく、品質低下の恐れがあるため、このようにしているそうです。

マンゴーは完熟期を迎えると、自然に枝から離れますが、フックとネットのおかげで落下の心配はありません。

外国産マンゴーは生活者の手に届くまでに時間がかかるため、完熟になる前に収穫しなくてはなりませんが、こちらではその必要がありません。ギリギリまで木で熟したマンゴーは本当に美しいです。

齋藤さんがマンゴー栽培で山梨県を選んだ1番の理由は、東京や関東に近いこと。マンゴーは低温を嫌うため、常温での流通が理想。しかし輸送時間が長くなると炭疽病等の恐れがあるため、長期輸送の場合は10度前後の低温状態で運ぶのが一般的です。しかし一旦低温管理したマンゴーを常温に戻すと、黒色の斑点が発生して見た目が悪くなったり、食味も落ちるといわれています。これは桃や他の果実でも同じ。

また、輸送時間が長いとマンゴーの香りも弱まり、逆に緩衝材のポリエチレン製フルーツキャップや段ボールの匂い移りが心配になります。このように考えると、東京から2時間弱で来られる山梨県は、マンゴーをベストに近い状態でたくさんの生活者に届ける栽培地として最適の場所だったのです。

そんな最適な場所で栽培された完熟マンゴーをカットしてみました。芳醇な香りが漂います。果汁も滴っているのが分かりますか？

糖度はなんと17.1度！でも、もちろん甘いだけではなく爽やかな酸味もあるんです。

また、こちらのハウスでは太陽光発電を使った加温を視野に入れており、横にはソーラーパネルがありました。

今回伺ったハウスがある場所は標高400メートルほど。しかし、将来的には標高約1,000メートル地点での栽培も検討しています。しかも、一般的な国産マンゴーの旬である5～7月頃ではなく、「冬に収穫するマンゴーを作りたい」とのこと。太陽光で集めた電力を使うことで、加温ハウスの暖房費を賄うことができれば、価格高騰も抑えられるのではないか、と齋藤さんは考えています。

現在、北海道に自然エネルギーを使い、ハウスの中の夏と冬を逆転させて栽培を行っているところがあるそうです。夏に寒い時期に積もった雪を使ってハウス内の地温を下げて「冬の環境」を作り、冬に温泉を使って地温を温めて「夏の環境」を作り出す。こうすることで、11～12月に完熟マンゴーを収穫できるのだそうです。山梨県は標高差があり、現在の場所で夏のマンゴーを育て、そして1,000メートル地点で冬のマンゴーを育てることが可能。こうすることで年2回の収穫期を作ることができるのです。

まだまだ特別なフルーツのイメージが強いマンゴーですが、夏冬2回の収穫できるようになれば、もっと身近なフルーツになるかもしれませんね。

実は私、マンゴーがあまり得意ではありませんでした。でも齋藤さんのマンゴーをいただき、その意識が覆されました。ギリギリの状態まで木で熟し、自然落下した完熟マンゴーは香りも強く、エグミもない！今はまだ希少な存在ですが、数年後多くの皆様に食べていただける山梨県産マンゴーができることを楽しみにしています。

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。