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岩手県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ上級プロ、冷凍生活アドバイザーの千田広子です。
今回は、岩手県の野菜ソムリエ達にことのほか愛され続けているクッキングトマトをご紹介いたします。クッキングトマトが開発されて以来個人的に栽培している野菜ソムリエも多く、私が所属している「野菜ソムリエコミュニティいわて」でも東北農業研究センターや岩手大学農学部、地域の生産者たちと共に勉強会やシンポジウムなどを繰り返し行い、県内のファンを増やしてきた経緯がありました。画像は「すずこま」です。
ところでクッキングトマトって何だろう?と思われる方も多いかと思います。盛岡市の独立行政法人 農研機構東北農業研究センターで育種開発された「すずこま、にたきこま、なつのこま」の三姉妹を総じて、加熱調理に向くトマトを指しています。栽培経験の無い方でも手軽に作れ、皮が厚く長距離輸送に耐える利点から園芸農業の経験者が少ない三陸の農地復興プロジェクトとしても県内各地で継続栽培されてきました。
画像 岩手県雫石町 田原農園のすずこま
しかし、栽培時期が限られ長期供給できない、販路が無いなどの理由でなかなか普及に繋がらなかったことから、長期出荷を実現するために東北農業研究センターとJA全農で共同開発されたのが「すずこま」。施設内での低段密植養液栽培によって出荷調整が可能になりました。普通のトマトと違って卵のような形、ヘタがついていないことにお気づきでしょうか?ヘタの下でほろっと簡単に取れるので、手もぎ収穫で省力化ができます。
トマトは大きく分けて「桃太郎」などピンク系トマトと言われるものの他、ピンク系に比べてリコピンを多く含む赤系トマトがあり、クッキングトマトやミニトマトは赤系トマトに属します。リコピンはトマトの赤い色素、抗酸化力の高い機能性成分で近年注目されていますよね。クッキングトマトは生食では甘みに乏しいと言われがちですが、畑で真っ赤に熟してから収穫する「すずこま」は生食用とは違った味わいですが決して劣らない味です。
昨年は盛岡近郊の生産者を訪ねましたが、今回は9月に最盛期を迎える奥州市江刺区の生産組合、特定農業法人上小田代(かみこたしろ)を訪ねて参りました。日照不足が続いている中、訪問した日は久しぶりの青空に恵まれました。奥州市江刺区上小田代は、現在ILC(国際リニアコライダー)の日本の有力な候補地として期待されている北上高地にほど近い山間部にあります。農業で生きていくために早くから農業法人として田んぼの圃場整備に取り組んできており、現在は米の他・キュウリ・すずこまとその加工品を10名の生産者で生産しています。
北上高地の雪解け水を利用した地下灌漑システムや湧き水を利用しています。トマトは雨除けハウスのソバージュ栽培と言われる放任栽培、支柱や芽掻きが不要なのでハウスの中はもりもりの状態でした。
6月初めに4000本の苗を定植したというハウスは全部で7棟。ハウスの中はこれから収穫時期を迎えるべく、たわわに実っていました。こちらでは土耕栽培ですが、昨年は10アールあたり4トンの収穫があったそうです。
ひときわ目に入ってきたのが、工房とまとキッチンの看板です。お母さんたちがピューレ作りに取り組んでいます。ピューレの鍋の中は真っ赤で美しいですね!選別、洗浄の後、破砕、裏ごし、加熱、殺菌、袋詰めをし冷凍販売をしています。ハウスで真っ赤に熟したトマトのみを使用しているのですから、ビタミンCやリコピンなどの栄養価が高いのもうなづけます。
糖度は7.5です。ピューレの他は粉砕状冷凍品の受注販売、また最盛期の8月9月は生の「すずこま」販売もされています。 ピューレ状にした冷凍品は大手のレストランやホテルに納品しているそうです。
代表理事組合長の伊藤周治さん
「子や孫に引き継ぐ集落づくり」をモットーに生産者の顔が見える農業に取り組みながら、収穫期に大量に採れる農産物を加工し、上手く販売に乗せていらっしゃいます。6次産業化のモデルのように感じました。明日はすずこまを使った料理の紹介を致します。
以上岩手県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ上級プロ、冷凍生活アドバイザーの千田広子のレポートでした。