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福岡県の久留米にほど近い小郡市(おごおりし)で、アジア野菜を栽培する川辺農園をまつのクッキングプランナーの谷口恵里、ベジフルサポーターの永利裕子さんとともに訪ねました。
園主の川辺一平さんは、脱サラの新規就農農家です。
冷凍食品会社に勤務時代に中国・ベトナム・タイに駐在し、現地の生産者と日本向けの野菜を栽培。帰国後に就農し、間もなく10年になるといいます。
現在は、ハウス15棟、露地2反の農地で、30種類近い中国・タイ・ベトナム野菜を生産しています。
本場を知る川辺さんがつくるアジア野菜は、バラエティ豊富です。
「これは広東白菜(カントンパクチョイ)。あと少しで出荷の大きさになります。炒め物の定番野菜ですね」
「これはパクチー」
「東南アジアのハーブなのに暑さに弱いんです。うちでも夏場は途切れる時期があります。栽培で難しいのは、芽を出させること。季節によって肥料成分も違います。なかなか難しいハーブです」
このハウスのものはトウが立ち始めているとのお話でしたが、試食した葉は柔らかく香りが濃厚。
パクチーの花は白くて可憐でした。
「こちらはパクチーラオ。洋食でいうディルですね」
「そして、これはA菜(エイサイ)。別名・油麦菜(ユゥマイツァイ)中華のロメインレタスとも呼ばれます。広東料理の定番野菜ですね」
「こちらは油菜芯(ユサイシン)。香港では麺類の定番のトッピング野菜です」
「こっちは、やはり広東料理の定番野菜、芥蘭(カイラン)」
「オイスターソースで炒めると美味しいですよ。茎だけ使う人もいれば、葉の方がうまいという人もいる。茎のサイズ指定も太いものから指くらいの細いものまで、料理人さんによっていろいろです。中国でも地方によって使い方が違うからなのでしょうね」
「そして、こちらが豆苗。エンドウマメの花がつく前のものです」
スーパーでよく見る豆苗は「もやし豆苗」と呼ばれる水耕栽培のもの 一方、土耕で育てるエンドウマメの新芽は「本豆苗」と呼ばれ、葉や茎にもエンドウマメの香ばしい香りと旨みが感じられます。
「これは、わかめ菜です」
「つるむらさきの仲間で、香りや味はより柔らかい感じ。雲南百薬(うんなんひゃくやく)とも呼ばれ、薬膳によく使われます」
「そしてこちらは、龍のひげ。炒めたり、湯がいてあえ物にしたり。ナムルにするとおいしいですよ」
「ただこれは、栽培方法を探っているところで、まだ出荷していないんです。今後に乞うご期待です(笑)」
東南アジアでは長く栽培指導に関わってきた川辺さんだが、日本での栽培は勝手が違うといいます。
「日本の秋冬にどうやってつくるかとか、ビニールハウスでどう育てるかとかね。わからないことが多く試行錯誤しながらやっています」
そんなチャレンジ精神あふれる川辺さんの栽培品目はまだまだ続きます。
「これはバイマックルといってコブミカンの葉ですね。タイ料理のトムヤムクンやグリーンカレーに使われるものです」
「こっちはベトナム料理に使うジャコウライムの葉。刻んだ葉を鶏肉や魚などに乗せ蒸し料理に使います」
「これはカパオ。別名ホーリーバジルと呼ばれるものです」
「冬場につくるのは難しいのですが今、大学の先生と鉄工所と僕とで産学官連携である実験をしているんです」
「バイオマスの燃料でボイラーを熱して温めたお湯を循環させて加温する、油(石油)に頼らない方法です」
品種も栽培方法も体当たりで開拓する川辺さんは、今も毎年1、2回は新しい野菜を求めてベトナムや台湾、中国を訪ねるといいます。
現地に出回る野菜をチェックし、これと思った品種の種を仕入れて帰っても成田空港の検疫カウンターで没収され「こんなに買い込んだのにと泣くこともあります」と苦笑いしつつ、「駐在員時代に食べたアジア野菜の美味しさが忘れられなかったことが就農のきっかけです」という川辺さん。
栽培品目について話す言葉の端々からもその思いが伝わってきます。
川辺一平さん、ありがとうございました。