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熊本県まつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの佐藤真美です。
「いしや〜きいも おいもっ!」
最近聞かなくなりましたが、みなさまの地域ではいかがでしょうか?焼き芋が食べたくなる季節になりましたね。サツマイモと言えば鹿児島県でしょ?と想像される方も多いと思いますが、熊本県大津町という地域は知る人ぞ知るサツマイモの産地です。町にはサツマイモのオブジェがあったり、祭りが催されたりします。今回は、大津町でサツマイモを生産されている、古庄からいも農園をご紹介致します。ちなみに、九州ではサツマイモのことを「からいも」と呼びます。
広大な土地にサツマイモ畑に案内して頂きました。「どこまでが古庄さんの畑ですか?」「見えるところ全部が我が農園です」あまりの広さに2度程聞き直しました。東京ドームがすっぽり入るほどの面積にサツマイモがぎっしり!(写真は圃場の一部です)
ご案内してくださったのは、古庄利康さん。「この畑、品種が違う物を植えています。葉の色でわかりますよ!どこが境目かわかりますか?」「え?」みなさん、わかりますか?
正解は、ここ!よく見ると、葉の色が微妙に変わっています。
1日に約2〜3トンもの芋を収穫し、貯蔵庫へ。こちらの貯蔵庫は自動で温度と湿度が保たれており、主に夏に収穫されたものが入っているとのこと。では、秋冬用の貯蔵庫はというと…
こちらです!なんと山の斜面に立っている貯蔵庫なんです。周りはコンクリートで覆われていますが、屋根は泥(土)で覆われています。サツマイモは常に呼吸しているため、天井には通気口も。もちろんここには電気は通ってません。ではどうやって温度湿度を保つのでしょうか?その理由が山の斜面という場所にありました。山から流れる水で湿度が保たれ、斜面に生えている木々のおかげで温度が保たれているとのこと。ここは、天然の貯蔵庫なんです。なんとこの貯蔵庫は古庄さんのおじいさまが作られた、日本初の貯蔵庫なんです!
この貯蔵庫を作られたときの様子が、貯蔵庫の正面に掲げられています。
いいサツマイモを作るための努力や思いがこの文から伝わり、感銘を受けました。この貯蔵庫で約2ヶ月、熟成されます。「うちは、キュアリングはしないんですよ!」これまた、驚きの発言でした。
【キュアリング】
芋を収穫したときに切り口や傷口から病原菌等が侵入して貯蔵腐敗が問題になるので、高温多湿条件下において、傷口にコルク層を形成させて腐敗を防ぐ方法。
普通はキュアリングをしないと腐ってしまうのですが…「栽培時に化学肥料を一切使わないのが理由と思われます」丁寧な栽培方法により、キュアリングという手間が省かれた効率のよさと、化学肥料不使用で安心して食べられるよさが兼ね備えられた内容にとても素晴らしく思えました。
「熟成後に出荷となりますが、採れたての芋と熟成された芋、色が違うんですよ。わかるかな?」答えは、写真左の色鮮やかなものは採れたてのもの。一方、写真右の少し黒みがかったものは熟成されたもの。熟成されたおいしいサツマイモの選ぶなら、少し黒いものがよいとのことでした。
古庄からいも農園では、現在3種類のサツマイモを生産されています。(取材時)「焼き芋を作っときました!食べ比べしてみて下さい」えー!!なんという、おもてなし!「左から、とろあま蜜芋、高系14号、シルクスイートです。とろあま蜜芋は、我が社のオリジナルブランド芋で新品種です。ここでしか採れません。」かなり贅沢な食べ比べです。
「とろあま蜜芋」はべにはるかから生まれた品種。3年程前からべにはるかの中に白い果肉の物が混ざるようになったそう。それをきっかけに品種選抜を行い、3年をかけて作られたのが「とろあま蜜芋」だそうです。割ると、黄金に輝く果肉が現れ、繊維質も太く、ねっとり。皮も果肉から剥がれやすく食べやすい芋です。芋のペーストを食べているようで、とにかく濃厚な甘さ。皮の裏まで甘い!今まで食べた事がないくらい最高に甘いのです。それもそのはず!焼き芋にすると最高糖度55度、生の状態でも14〜16度はあるそう。「3年かけて、最高のものが出来ました!自信作です。」と古庄さん。シンプルに、焼き芋で食べて頂きたい一品です。
「高系14号」はよく知られたサツマイモではありますが、こちらの高系は品種選抜されたものなので、市場に出回っている高系とは少し違うものになるそうです。割ってみると、「とろあま蜜芋」とは対称的で、果肉は白っぽく、栗に似た粘り。後から来る甘さが特徴で、昔懐かしい味わいです。
「どちらかというと、天ぷらやいきなり団子に合いますよ。」いきなり団子とは、団子の中にあんことサツマイモが入った熊本県の郷土菓子で、短時間でいきなり作れるという意味や来客がいきなり来てもいきなり出せる菓子という意味などがあります。このいきなり団子を古庄さんのおばあさまが作られているそう。芋の味そのものが生かされた団子となっており、中はサツマイモの餡が入ったオリジナルのいきなり団子。皮もしっとりしていて、とてもおいしかったです。
「シルクスイート」は、「古庄芋」という名前で東京にも販売されているそう。香りもよく、色も鮮やかな黄色で、果肉も程よい柔らかさ。栗きんとんのような甘さで、いくつでも食べられそうな味わいでした。「どんな料理にでも合います」とのこと。東京でも大人気の芋だそうですよ!
「加工品も開発しています!」ご紹介頂いたのが「芋けんぴ」。これがまた、やみつきになる味で、カリッとした食感にサツマイモの甘さと香ばしさがたまらない一品!古庄甘藷店という名前でネット販売されています。【古庄甘藷店で検索】
サツマイモの産地である大津町でサツマイモを生産されている若手生産者で結成されたグループがあるそうです。その名も「イモセガレブラザーズ」。このグループで開発されたのが「熟いも」というお菓子。熟成された焼き芋ペーストと粒あんがもっちり生地でサンドされた一品。いきなり団子ならぬ、いきなりサンドとして販売されています。【くまもと菓房で検索】
「年間120トンものサツマイモを収穫しています。就農して3年目ですが、芋しか作ってきてません。毎日芋を見ていると、120トンの内の一個のサツマイモとして芋を見てしまいがちですが、お客様にとったら、その時に食べる1回のうちの一個なんです。芋は、米や水のように毎日食べるものではないので、その1回に掛けて、おいしい芋を作っています。ある人の話しで、農家は誇りと責任を持って取り組むべきだと教えて頂きました。子供たちに農業の素晴らしさを伝えるために誇りを持って取り組み、お客様においしい芋をお届けするという責任をもって取り組むことを心がけています」
古庄さんは20代の若手生産者。就農してからすぐ芋の品種選抜に取組みオリジナルブランド芋を開発。誇りと責任をもって取り組まれるその姿に本当に尊敬しました。古庄さんの芋がおいしい秘密は、努力と愛情がたっぷり注がれているからこその味!最高のサツマイモです。
その後、私は古庄さんの芋を持って、毎月クッキングで集まっているみなさんに食べて頂きました。
感想は…「こんななめらかな芋、初めて!」「ちょうどいい甘さ!」「なめらかだから、喉に詰まらない!」など、大好評!貴重なサツマイモが食べられて感激していましたよ!
みなさまも、自分好みの調理法で食べてみてくださいね。
熊本県まつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの佐藤真美でした。