まつのベジタブルガーデン

信州伝統野菜 白くて柔らかい「村山早生ごぼう」

伝統野菜・食文化

長野県まつのベジフルサポーター 野菜ソムリエプロの戸谷澄子です。
秋も深まり、ほっこりとおいしい根菜の季節がやってきましたね。先日私は信州の伝統野菜でもある「村山早生ごぼう」の収穫体験に行ってきました。今回は、一度食べたらその香りとやわらかい食感にハマってしまう「村山早生ごぼう」をご紹介をしたいと思います。

(写真提供:須坂市農林課)
「村山早生ごぼう」は、昭和22年頃に長野県須坂市村山地区のある農家が、早生でとう立ちが遅く、秋撒き夏採りの品種「中の宮早生ごぼう」を改良し生まれた品種です。昭和30年の最盛期には100戸を超える農家が栽培していましたが、次第に果実栽培が盛んになり、ごぼう農家は減少し現在では14戸の農家が生産するだけになってしましました。

村山早生ごぼうは4月~6月にかけ種を撒き、8月~12月下旬にかけて収穫されます。他のごぼうよりも収穫までの期間が短く、約120日で収穫を迎えます。(一般的なのごぼうは、約150日で収穫)

ごぼうの葉っぱはとにかく大きい!女性の手の平の3倍以上もある大きさです。太くて、長く伸びた立派なごぼうをより多く栽培する最大のポイントは、発芽してから間引きをし、全ての芽の生育の足並みを揃えてあげること。

早く育った芽はどんどん葉を大きく広げ、日光をいっぱいに浴び光合成し、地中で太くて立派なごぼうに育てます。しかし、遅れをとった芽は、常にその大きな葉の下で十分な光を得られず成長するので、細くて短いごぼうになってしまいます。そのためどの芽も同じスピードで成育させることが、ごぼう農家さんの技なんだそうです。また、種を撒いてから葉が大きく成長するまでは草取りが重要。一緒に生えてしまった草の根が地中のごぼうに当たると、ごぼうが枝分かれしてしまいます。地中のごぼうって、意外とデリケートなんですね。

さて、いよいよ収穫です。

まず1メートルほどの穴を掘り、縦にまっすぐ伸びるごぼうに傷をつけないよう、スコップで周りの土をかき取りながら掘っていきます。ごぼうが、手ですーっと抜けるまで、丁寧に、丁寧に…。とても体力のいる作業でした。私は、5本も抜いたらもう汗だくでした。こんなに大変な作業なのに、1本のごぼうが本当に安く売られているんだなぁ、と痛感しました。農家さんのご苦労に感謝していただきたいですね。

折れたごぼうや細くて小さなごぼうを畑に残すと、すぐにそこから発芽するそうです。

小さな命が芽生え始めていました。そしてこれが背丈程に成長し、翌年に花を咲かせ、その秋に種が採れます。つまり2年がかりでやっと種が採れるんですね。

これは、ごぼうの花。あざみに似た花で、とてもかわいらしい花でした。とげとげしているように見えますが、触ってみると意外と柔らかかったです。

さて、早速採りたてのごぼうでお料理です。村山早生ごぼうは、なんといってもごぼうの色が白くてやわらかいのが特徴。アクが少ない上に、皮を剥かなくても食べられます。

洗っただけの皮も、切り口もこんなに白い。切った瞬間、いい香りがしました。
やわらかさとごぼうの香りを楽しみたいので、厚さ2㎝ほどの斜め厚切りにし、玉ねぎやベーコンと合わせてスープにしました。

こんなにゴロッと大きいのに、とてもやわらかく、噛んだ時に ふわ~っと鼻に抜けるごぼうのいい香りが楽しめます。

【ごぼうのトマト煮】
ワインのおつまみに…。

3~4㎝の長さの丸太に切ってトマトで煮込みましたが、とてもふっくらやわらかく仕上がります。村山早生ごぼうは、その特徴を活かし、お料理の幅も広がります。

【ごぼうのかき揚げ】

ごぼうの香りと歯ごたえを存分に楽しめます。ささがきしたごぼうに、玉ねぎ、三つ葉、人参を合わせました。

【ごぼうとカボチャのピリ辛ネギ和え】

乱切りにした生のごぼうとカボチャを素揚げにし、ごま油、ネギ、豆板醤、醤油、みりんのタレで和えました。かぼちゃのホクホクとした甘さ、ごぼうの歯ごたえが楽しめるウマ辛な一品です。

【ごぼうのポタージュスープ】

すぐにやわらかく煮えるので、短時間でおいしいポタージュスープになります。色も白く仕上がります。
ごぼうの素揚げをクルトン代わりに…。食物繊維たっぷりで、カラダにうれしいスープです。

ごぼうには、水溶性の食物繊維のイヌリンや、不溶性の食物繊維セルロースやリグインが含まれ、腸の運動を促したり、血中のコレステロールや血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。アクの主成分はポリフェノールで、抗酸化力に優れているのでアク抜きで水にさらし過ぎないのも効果的に栄養を摂取するポイントです。また、ごぼうの旨みや香りを残すために、たわしできれいに洗って皮付きのままお料理することをおススメします。

ごぼうを食用としているのは日本人だけ。原産はユーラシア大陸北部で、日本へは平安時代に中国を経由して渡来したと言われていますが、原産国や中国でも薬用として使われ食用とはされていないそうです。これから、ごぼうが美味しい季節になりますね。信州伝統野菜「村山早生ごぼう」道の駅や直売所などで見かけたら、ぜひ一度食べてみてくださいね。

長野県まつのベジフルサポーター 野菜ソムリエプロの戸谷澄子でした。

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