まつのベジタブルガーデン

沖縄県「紅芋の里」読谷村へ!豊かな大地でじっくり旨みを蓄えたサツマイモ(前編)

野菜・果物品目レポート

沖縄県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの齋藤珠美です。
12月初旬、ひんやりとした風が吹き、やっと涼しくなり秋めいてきた沖縄です。今回は、今まさに収穫シーズン真っただ中!読谷村の特産品「紅芋」をご紹介します。

沖縄本島の中央部、東シナ海側に位置する読谷村。残波岬や世界遺産にも登録された「座喜味城」、伝統的な焼き物を作る工房が軒を連ねる「やちむんの里」などの観光スポットに加え、紺碧の海や素朴な自然の美しさが魅力の村です。

さつまいもと呼ばれる甘藷が琉球の時代に初めて渡ってきたのは1605年のこと。明(中国)に朝貢する進貢船の船長であった野国總管が、中国から芋蔓を持ち帰ったのが始まりと言われています。その後、儀間真常が県内で栽培の普及に努め、徐々に各地に広まったといいます。米や麦が不作の時の食料を補い、琉球国の飢えの脱出を図るために甘藷の導入を行ったそうです。(パープルスイートポテト 読谷村役場 農業推進課より)
紅芋畑
郷土の生んだ偉大な先人の功績は今日まで脈々と受け継がれ、今や「紅芋の里・読谷村」として県内外に知れ渡っています。豊かな田園風景を眺めながら、秋風に揺れるサトウキビ畑の道を進んでいくと、仲村渠(なかんだかり)武重さんのサツマイモ畑が見えてきます。
紅芋畑
仲村渠さんが本格的に農業を始めたのは定年退職後。約3500坪ある畑で、サツマイモを中心に空豆や小麦をご夫婦で栽培し、主にファーマーズへの出荷や芋掘り体験の実施、妻の光子さんは菓子などの加工品を作って販売しています。この日は、翌日に控えるイモ掘り体験の準備に大忙し。仲村渠さんのイモ掘り体験は人気で、昨年は保育園・幼稚園児など約1200名を受け入れた。5種類のサツマイモを育てる畑ではイモと葉っぱ、その切り口を見せ、それぞれの特徴を教えてくれます。
仲村渠武重
土の中からどんなサツマイモが掘り起こされるのだろうと私も興味津々!さまざまな彩りを見せてくれる切り口!なんだか子供の頃の芋掘り体験の記憶がよみがえってきます。土から引き抜いた大きなサツマイモを見てうれしくて、自分で初めて収穫したおいも、ふかして食べたらおいしかったなぁ~とそんな幼き頃のイモ堀りを懐かしく思いながら話を伺いました。
紅芋
備瀬(びせ)】読谷村で最も栽培されている品種。皮色は白、肉色は濃い紫色でやや粉質。甘味もあり、焼きいも、ふかし芋にもおすすめ。その昔本部町備瀬(びせ)で栽培されていたという。赤紫色の葉が特徴的。
紅芋


ナゴマサリ】皮色は白、肉色は皮周辺は白いが薄く紅色が入り優しい甘味。ゴボウのように土深く生育し、病害虫がつきにくいといいます。
紅芋

トゥマイクルー】漢字で泊黒。皮色は白、肉色は白と紫色が入り混じり、ホクホク系で備瀬より甘味を感じるサツマイモ。(画像はトマイクルですが、本来はトゥマイクルーと表記します)
紅芋

読谷あかね】読谷村の産地ブランド名。茜色に染まった夕陽のような肉色はベータカロテンが豊富。他の芋に比べ水分は多くしっとりとして、ぐっと甘味を感じます。加熱するとカボチャのような色合いに。
読谷あかね

百号】沖縄県農業試験場で品種改良して誕生し、1934年の登録番号から命名。皮色は薄い紅色に肉色は白。甘味は優しくホクホク系。
百号

赤紫色した備瀬(びせ)の葉っぱの芋畑を見るのは初めて!昔から甘藷の栽培に適しているという読谷村の土壌、風化した琉球石灰岩と赤土が混じった島尻マージと言われる赤茶色の土にはミネラルがたっぷり。「自然の雨が一番!自然の恵にはかなわない」と仲村渠さん。日照り続きの日、雨が降って欲しいとの願いが強すぎたのか洪水になる夢を見たというエピソードも。
紅芋畑 
読谷あかねの鮮やかなオレンジ色はベータカロテンの色素。紅芋の赤紫色は抗酸化作用に期待が持てるポリフェノールの一種アントシアニン。その他、食物繊維も含みビタミンCやカルシウムも豊富でお肌の美容にも良いとされます。(沖縄伝統的農産物データーベース・沖縄県農林水産部 流通加工推進部) 
読谷あかね
【本土への持ち出しは禁止】
沖縄の甘藷栽培の大きな障害となるのが病害虫。皮の表面に見える黒の小さな穴は、アリモドキゾウムシなどのゾウムシ類によるもの。独特の臭いと黒く変色したイモは、食用として出荷することができません。病害虫のまん延を防ぐため、沖縄から本土への生芋の持ち出しは植物検疫で禁止されています。(お菓子や加工されたものは持ち込み可能)
読谷あかね

サツマイモ以外に空豆や小麦の栽培も行っている仲村渠さんの畑。異なる作物を順に作る輪作で、土の養分の偏りを防ぐことができるのと、土壌病害虫を防ぐ効果も期待されます。「空豆の根のバクテリアがいいんだろうね、空豆の後にイモを植えると虫がつきにくいんだよ」と仲村渠さんは言います。他にも、植える時に土寄せをして茎下部を土で覆うなど、病害虫からなんとか防ぐ手だてはないかと日々工夫されながら愛情いっぱいに育てています。
紅芋畑

農業の他に農村地域の活性化にも積極的に取り組まれており、県外修学旅行生の民泊を年間200名ほど受入れ、光子さんの手作り紅芋料理や畑の栽培体験などを通して「沖縄の暮らし」が体験できるという。「昔から土いじりが好きでね、土から芽が出てくるのを見るのが何より楽しいんだ」穏やかな口調に優しい笑顔の仲村渠さん、畑を眺める眼差しは読谷村をこよなく愛する畑人(ハルサー:農家の人、畑で働く人)です。

後編では、その彩り鮮やかなサツマイモの切り口をみてみましょう。沖縄県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの齋藤珠美でした。

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