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熊本県まつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの佐藤真美です。
今回は、私の農園「かえふぁーむ」をご紹介します。
農園を始めて約1年。きっかけは、野菜ソムリエとして野菜の知識は身につけても、農業のことや生産者の思いなどが全くわからないことに気付いたのが始まりでした。野菜ソムリエの役割は、生産者と生活者の架け橋になることです。このままでは架け橋の役目は果たせないと思い、野菜作りを経験するしかないと思いました。
最初は家庭菜園より少し大きめの畑を借りてスタート!近所の方々がとても親切で、ビニールハウスまで建ててくださいました。「これでいい野菜ができる!」そう思っていました。しかし、思うようにはいきません。
昨年の春は雨不足。当時の畑には灌水設備がなかったため、近くの用水路に20キロのポリタンクを持って水を汲みに行き水やり作業、また梅雨時期は大雨になりハウス内が浸水、夏は台風でハウス内のトマトが倒壊、さらに今年の冬は例年より気温が低く、野菜の育ちが遅いため植え直した野菜も。1年目とはいえ、お恥ずかしい話しです。
「大変」の一言。しかし、それ以上に貴重な学びが多くありました。生産者として野菜を生産する上で基本的なこと、野菜の播種、育苗、収穫、土作りや灌水の方法、ビニールハウスの建て方まで教わりました。さらに、販売をするようになると、価格の設定や流通の動向、宣伝の仕方や野菜の見せ方など、生産以外の情報も勉強になっています。
そして何と言っても、人とのつながりが多くなり、1年で100件以上の生産者の方々や農業関係者の皆さんとご縁がありました。人とのご縁、私の宝物です。現在の畑は、株式会社燦燦ファームの一部の土地をお借りしています。
こちらは灌水設備や作業場、機械設備などすべて揃っており、当施設のバックアップもしてくださっている会社で大変感謝しております。
「かえふぁーむ」は、10アールほどの畑で約50種類の品種を栽培しています。品種選びのポイントは、色と形。そして、珍しい野菜です。当施設で生産している野菜を一部ご紹介します。
・カーボロネロ
イタリア野菜で別名「黒キャベツ」とも言われていますが、ケールと同じ仲間になります。甘味も旨みも感じられ、栄養価も高く、最近特に注目されている野菜です。炒め物やパスタ、スープなど、どんな料理にもよく合います。
・スティックセニョール
ブロッコリーと中国野菜のカイランを掛け合わせた品種です。最初の花蕾はブロッコリーのような大きいものができます。その後、わきから茎が細くて長い花蕾が顔を出し始めます。花蕾の部分はブロッコリーのような食感、茎の部分はアスパラガスのような食感なので、一つで二つの食べ方が楽しめます。
・カリフローレ
別名「スティックカリフラワー」とも呼ばれています。カリフラワーを茎ごと食べてほしいという目的から開発された野菜です。スティックセニョールとは違って、カリフラワーのように大きな花蕾ができ、花蕾に隙間ができ始めたら収穫適期となります。その花蕾を一つ一つバラバラにして袋に入れて出荷です。
・カステル・ブランコ(ヴァリエガト・ルシア)
クリーム色に斑点が入る美しい葉が特徴です。レタスのような食感で少々苦味があります。苦味はイタリア野菜の特徴ですが、中の葉は苦味がほとんどなく、おいしく食べられます。
・ビーツ
赤、黄、うずまき、白の4種類のビーツを栽培しています。品種による味の違いはほとんどなく、どれもビーツ特有の甘さと食感が楽しめます。ちょっと形は不揃いですが個性的な姿となりました。
・紫コールラビ
ドイツ語で「キャベツとカブ」という意味。食用にするのは肥大した丸い茎の部分ですが、葉もおいしく食べられます。ブロッコリーの茎のような食感です。薄くスライスして炒め物やスープなどにもよく合います。
・紫はくさい
育ててみてわかったのですが、紫はくさいの葉の内側は紫、外側は緑という、面白い特徴があります。シャキシャキとしており、サラダにも最適です!
・ラディッシュ
赤、白、赤白、黄、紫の5色を栽培しています。野菜作りを始めたころのラディッシュは、辛さが残り満足の行くものができませんでしたが、近頃やっと、辛味が少なくみずみずしいラディッシュを作れるようになりました。気候や湿度を考慮してビニールトンネルの中で栽培しており、質のいいラディッシュ作りに取り組んでいます。
他に、芽キャベツ、トレビス、ケール、ミニニンジン、4種のカラーニンジン、イタリアンパセリ、赤かぶ、赤茎ホウレンソウ、グリーンリーフ、ハクサイ、キャベツ、紫キャベツ、大根、紅芯大根、赤大根、紫カリフラワー、オレンジカリフラワー、ロマネスコ、春菊、のらぼう菜、ジャンボにんにく、ローズマリー…など
また、別の単棟ハウスには、ベビーリーフ5種と豆類(グリンピース、サヤインゲン、スナップえんどう)を栽培しています。
そして最近、力を入れているのがエディブルフラワーです。現在はビオラや金魚草をメインに栽培していますが、今後10〜20種のフラワーを予定しています。
これだけ品種が揃うと、一つの農園でいろんなことができます。
先日開催したマルシェに出品した野菜は約10種類。珍しい野菜は直売所だと売れにくいのですが、マルシェだと野菜の説明や食べ方などを直接教えることができるので、試しに買って行かれるお客さんも多々いらっしゃいました。この日はほぼ完売しました。
また、お野菜BOXを作って販売しています。これがとても大好評で、毎月定期便にされている方もいらっしゃいます。毎月の野菜の内容がなるべく被らないように考慮して詰めます。野菜ソムリエとして、野菜の説明や食べ方、保存方法を書いた用紙を入れ配送です。
さらに、卸業者に出荷することもあり、今後の展開が楽しみでもあります。
もう一つご紹介したいのが、「かえふぁーむ」の野菜を魅せる一つの手段として、ベジフルフラワーの材料に使ってもらっています。こちらは、第6回野菜ソムリエアワードベジフルフラワー部門で金賞を受賞された熊本県在住の佐々野祐加さんの作品です。いろんな方に作品を通して野菜を見てもらっています。
「始めて食べたけど、おいしかった!また買いたいな。」そのようなメールを頂くと、嬉しいのと同時に、より生産の重要性を感じます。今年はうまくいったけど、来年はうまくできるのだろうか…と考えてしまいます。
そんなとき、ベテラン生産者の方からこんな言葉を頂きました。「農業はどんなに経験年数があっても毎年1年生。今年うまくいっても来年うまくいくとは限らない。そんなことを恐れていたら農業なんてできないから。それより、やったかやらなかったかなんだ。経験年数でも畑の面積の大きさでもない。どんな環境であっても、やった人は必ず成功するから。」
確かに、たった1年であってもやったからこそ、野菜のことがより詳しくなったし、やったからこそ、仲間が増えました。
3月から春夏野菜の播種が始まります。それまでに品種選びをします。2年目は、自分が育てたい野菜ではなく、顧客が求める野菜作りに取り組んでいこうと思います。野菜ソムリエとして、野菜を生産することにより、生活者に野菜の魅力が伝わることができれば嬉しい限りです。
熊本県まつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの佐藤真美でした。