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東京都のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロの増田智子です。
先日、知人の開催した「きのこの食育ワークショップ」に親子で参加してきました。
大人はきのこの特徴や美味しい食べ方など学べ、子どもには料理体験が出来る。「食育の場」だと思って申し込んだのですが、いい意味で裏切られ実りの多いワークショップでした。
今回の企画は子ども向け食育団体「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」と、国立保健医療科学院 生活環境研究部 主任研究員の山口一郎先生による平成29年度放射線健康管理・健康不安対策事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)「地域保健活動における放射線リスクへの対応のあり方に関する研究」との共催で、食育の視点から放射能のリスクコミュニケーションをみんなで考えるというものでした。
難しい言葉が並んで、私も初めは戸惑いましたがセミナーの内容はとてもわかりやすく、きのこの豆知識から、楽しく学んでいるうちにしっかりと放射能リスクについて考えるきっかけをいただきました。まずはイベントの内容を順を追ってお伝えしたいと思います。
1.まずは、アイスブレイク。今回のイベントの目的についてのお話があり、続いて
2.「きのこの食育講座」
老舗きのこ問屋 株式会社バイオコスモ勤務の「きのこ営業マン」露木啓先生から知ると楽しい様々なきのこの豆知識を学びました。露木先生はお仕事上もプライベートでもきのこが大好きで「きのこまみれ」だそう。
ご趣味はきのこ散策とのことで、珍しいきのこの写真もご紹介くださいました。ベニテングタケ、タマゴダケ…私は食用として販売しているきのこしか見たことかなかったので、興味津々です。そして、実物を持ってきてくださったのはこちらの「きのこ栽培キット」
おがくずと米ぬかなどの栄養源が詰まった入れ物にきのこの菌を繁殖させるのです。割とお手軽に栽培が出来るそう。
また、キッチンの科学プロジェクト代表の金子浩子先生からはきのこの旨みや干し椎茸の戻し方など美味しく料理するコツも学びました。この3つのカップ。何が入っているかわかるかな?
正解は・・・
・塩水
・干し椎茸のだし
・昆布と干し椎茸の合わせだし
でした。比べてみると味の違いがよくわかります。これには子どもたちの方が敏感なくらいでした。
私は干し椎茸の美味しい戻し方を科学的に教えていただき、納得。
「RNAを冷水でしっかり抽出して強火で煮出せば、活性化してうま味成分になります!」
実際、家で干ししいたけの汁を煮出してみましたが、全然違う!料理と科学が密接な関係にあることを改めて感じました。
歌詞がきのこの豆知識がぎっしりで勉強になります。
「きのこ汁の歌」https://youtu.be/YfVnhRZb3Co(こちらから聞くこともできます!)
3 .子ども達は「しいたけクッキング」大人は「リスクコミュニケーショントークショー」
同じ実習室内で分かれての活動です。
子どもクッキングの方は小学生以上が対象でしたが、この回は未就学児も多く、年長の娘も一緒になって参加しました。野菜ソムリエプロの加野有美先生とKKPの金子浩子先生を中心にボランティアのみなさんがつきっきりで教えてくださって大人の分まできのこ料理を作ってくれました。
その間、大人は「リスクコミュニケーション」というちょっと難しいお話です。
「リスクコミュニケーション」
…あるリスクについて関係者間(行政・専門家・企業・市民等)で情報を共有したり、対話や意見交換を通じて意思の疎通をすること。(ワークショップパンフレットより)
講師は(有)BENTON代表取締役で地域メデエータの半谷輝己(はんがいてるみ)先生と国立保健医療科学院の山口一郎先生です。
半谷先生は福島市双葉町生まれで、3・11の原発事故後、科学的な専門知識を地域住民の皆さんへとわかりやすく伝える「地域メディエータ」として活躍されてきました。
事故直後からの被災地の様子もお聞きすることができました。
山口先生はベクレルの基準値など決めた放射能の専門家。セシウムやストロンチウム90の測定のこと、シーベルトやベクレルなど何度も聞いたことはあっても頭の中でごちゃごちゃになっていた言葉も先生のご説明で少し理解できました。
内部被ばくのリスクや基準値の決められ方、海外との考え方の差。最新の情報と共に、私たちの素朴な疑問にわかりやすく具体例をもってお話くださいました。そして、震災から7年たった今でもまだ風評被害があることの問題。
自然界にはもともと存在する放射性物質があり、自然に被ばくすることやレントゲンなど医療被ばくによるもの、ラドン温泉や岩盤浴でだって被ばくしています。しかし、温泉に入るのも検査を受けるのも健康のためと思えば、あまり気にならない方が多いのでは?むしろデータ上安全な値が出ており、物によっては他県より値が低い福島県産の食材。未だに気にしすぎる方が多いとのこと。
データ上の「安全」と心から感じる「安心」とは全くの別物である難しさ。だからと言って、福島県産を無理に食べることが良いということではなく、そのリスクの捉え方は人それぞれ。妊娠中の方や小さなお子さんのママ、病気をお持ちの方がなどは他の方以上に敏感になるのは当たり前。いろいろな考え方があっていい。それをみんなで話し合うのがリスクコミュニケーション。先生のお話は一つ一つ納得がいくものばかりでした。
(先生方と参加者の星野さんと一緒に)
食の安全を考える上でのリスクは常に身近にあり、人には必要な塩分だって多すぎれば病気になるし、衛生面でのリスク、腐敗のリスク、きのこやフグの毒だって、病気になったり死の危険もあります。食を扱う者として、家族の食を担っている者として、もっともっと勉強しなければならないと思いました。何かあった時に、知らなかったと人のせいにするのではなく、自ら学んで自ら判断できるように。
4 .いよいよ、お食事タイムです。
子どもたちが作ってくれたきのこ料理をみんなでいただきます。
メニューはこちら
・しいたけの和風肉詰め~さっぱり仕立て~
・キノコたっぷり炊き込みご飯
・豆乳味噌ポタージュ
娘はきのこはあまり好きではないので、料理教室の参加も本当はあまり気が進まなかったようですが、実際作ってみるととても楽しかったようで、苦手なきのこも少しだけ食べることができました。大人には角切りきのこがゴロゴロ入っていたポタージュスープも子どもたちには食べやすいようにきのこもミキサーで撹拌してくれたそう。まったく受け付けなかった娘がきのこに興味を持てたことだけでもかなりの前進です。
このきのこ料理で使われたしいたけは、福島県南相馬市の泉景子さんがこだわり抜いて栽培された安全なしいたけ。
(写真提供 KKP)
農水省のHPにもご紹介があります。私たちも参加者の皆さんも知ることで安心して、美味しくいただくことができました。
5. 食後には参加者も声を出し合って共に考え、対話する時間です。
参加者の中には私のように子どもに料理をさせたくて気軽に参加させた…という方も多くいらっしゃいましたが、放射能のリスクや食の安全に関して興味を持てた…という方が多かったです。中でも特に印象に残ったある方の言葉。
買い物に行っていくつかの産地があった場合、あえて福島県産を選んでもらうには?それは、検査して安全だから!ということ以上に「美味しさ」とか、「生産者さんの想い」を伝えて行くことが必要なのではないか?その通りだと思いました。私は野菜ソムリエプロとして、生産者さんの想いを伝え、生活者の声を繋ぐ役割の重要性を改めて感じました。
きのこの食育ワークショップ。きのこから放射能、食の安全、リスクコミュニケーションまで。とても充実した時間でした。安心して食べられることを当たり前に思わずに、日々アンテナを張って、正しい選択ができるよう学び続けたいと思います。
東京都のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロの増田智子でした。