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和歌山県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・発酵食スペシャリストの阪口理紗です。
皆さんのご家庭にもきっと置いてあるだろう「醤油」。この日本伝統の発酵調味料である醤油発祥の地が和歌山県湯浅町であることをご存知でしょうか?市街地の北西部は2006年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、古い町並みがそのまま残り、多くの史跡や温泉などがあります。
そんな湯浅町に創業1881(明治14)年の丸新本家醸造元 湯浅醤油有限会社があります。
こちらは、現在は少なくなってきた昔ながらの伝統の「古式製法」で醤油を製造し、国産原料にこだわり、職人たちが丹精込めて手作りしている数少ない醸造元です。また、全国でも数少ない醤油蔵の見学や櫂入れ体験ができる蔵もあります。今回、発酵食スペシャリストの私が、美味しい醤油ができるまでの工程やこだわりなどをご紹介しましょう。
まず、醤油蔵に入ると、大きな杉樽が出迎えてくれました。
案内してくださったのは、みそソムリエで豆腐マイスターでもある宮本結実さん。
これらの杉樽は奈良県の吉野杉でつくられており、古いものでは80~100年程経ったものだそう。現在11基の杉樽の中には「もろみ」と呼ばれる茹でた大豆・小麦・麹を混ぜ合わせた醤油麹、塩、仕込み水が入っています。
この仕込み水も国産大豆を茹でた時のゆで汁を使うのがこだわり。「多くの醤油メーカーでは水を使うことが多いのですが、保存が難しいゆで汁を仕込み水として使用することで、旨味を逃さず美味しい醤油ができあがります」と宮本さん。また、以前杉樽の他に、焼き物やプラスチック製の樽で醤油を作って味を比べたそうですが、その差は歴然だったとのこと。以来、ずっと杉樽で作り続けているそうです。
醤油蔵の2階に上がると、杉樽の上部が見えます。
この11基の杉樽の中には常にもろみが入っていて、もろみを全て取り出して杉樽を乾燥させてしまうと杉樽が傷んでしまうそう。空にならないように常にもろみを入れ続け、菌をつないで使い続けています。また、もろみの表面が酸素に触れていて中は酸素に触れていない状態なので、もろみ全体に酸素がいきわたるように「櫂入れ」という作業を行います。味噌づくりでは「天地返し」と呼ばれますが、この櫂入れが「醤油の天地返し」ですね。
これらの杉樽に入っているものは醤油として商品になるものでガラス越しでの見学になりますが、櫂入れ体験用に準備されているのがこちら。
柄に杉の板が付いた約2.5メートルほどの「櫂棒」を垂直にもろみの中に入れ、櫂入れ(攪拌)し、酸素を杉樽の中に送って発酵がうまく進むようにします。夏場は5~7日に1度、冬場は7~10日に1度櫂入れを行います。
宮本さんのお手本の後に私も初櫂入れ体験をさせてもらいましたが、かなり重みがあり、腕や腰が悲鳴をあげそうでした。これはかなりの重労働ですね。でもこうして手をかけて、約1年半~2年間かけて熟成発酵して美味しい醤油ができるのですから、感謝していただかなければなりませんね。
その後、熟成したもろみを木枠に広げた布の中に8リットルずつ流し入れ、ヘラで均等に伸ばした後また布を被せて、また布を広げてもろみを流す…を繰り返して何層にもしてから醤油を絞っていきます。
ちょうど木枠に布を広げてもろみを搾る作業をしていました。しかし、ただ搾り出せば良いということではなく、3~4日かけてゆっくりもろみを搾り、醤油がにじみ出てくるのを待つのです。この時「醤油を出し切らない」というのもこだわりで、搾りすぎると原材料が持つ油分や雑味が出てしまうので7割程しか搾らないそうです。この時搾らない醤油が「生醤油」と呼ばれるものです。
生醤油を再度杉樽に入れ(上の写真の奥にある3つの杉樽)、約2週間醤油の中にある不純物や沈殿物などが自然とおりるのを待ち、上部の醤油だけ取り出し、発酵を止めるための「火入れ」をして、再度ろ過して瓶詰めをして完成になります。
こうして手間暇かけてじっくりと作られた醤油は、併設されている売店で購入することができます。また味を変えて楽しんでもらえるよう、たくさんのアレンジ商品もあります。味見をして自分好みの商品を見つけてから購入できるのも消費者として嬉しいですね(FAX注文やWEB注文も可)。
これからの時期のおすすめ商品は、発酵を止めるための火入れをしていない「生醤油」だそう。今年は11月11日に発売したばかり。夏の暑い時期は高温で発酵が進むため「生醤油」には適していないので、冬季限定の商品になります。
(写真提供:丸新本家醸造元 湯浅醤油有限会社)
もう一つのおすすめは地元の特産伝統野菜の「湯浅なす」などの夏野菜で仕込んだ金山寺味噌。ご飯や和歌山名物の茶粥のお供として、昔から食卓に並ぶことが多い金山寺味噌も大人気です。
(写真提供:丸新本家醸造元 湯浅醤油有限会社)
ちょうど湯浅なすが店舗入り口に植えられていました。
見学やお買い物を楽しんだ後は蔵カフェで休憩もできます。
看板メニューは、和歌山県の黒沢牧場の牛乳を使ったソフトクリームとコラボした「湯浅醤油ソフトクリーム」!お好みで「生一本黒豆醤油」を垂らしてみて下さい。甘さの中に芳醇な香りと塩味がとってもマッチします。
スッキリとした飲み口で評判の「みかん甘酒」も人気で、和歌山県の早和果樹園の有田みかんを使っています。
味噌や甘酒、塩麹などを自分で仕込む方には米麹も人気だそうです。古くから伝わる日本の食文化の伝統を守り、継承し、新しい形で残す丸新本家醸造元 湯浅醤油有限会社の今後が楽しみです。和歌山県にお越しの際は、日本の料理の要ともいえる醤油を学びに、醤油発祥の地・湯浅町へお立ち寄りくださいね。
和歌山県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ、発酵食スペシャリストの阪口理紗でした。