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みなさま、こんにちは。
北海道のまつのベジフルサポーター、シニア野菜ソムリエ、6次産業化プランナーの田所かおりです。
黄色やオレンジ色の楕円形の果実シーベリーをご存知でしょうか。
日本ではまだ馴染みの薄いこの果実。とても機能性の高い果実として、何世紀もの間、主にヨーロッパとアジアで使用されてきました。例えば、古くはチベット医学の古典に記録が残され、現代では、ロシア人宇宙飛行士の食事や宇宙空間を飛び交う宇宙線からの保護クリームとして使用されています。
今回は、そんな驚くべき効能が期待できる機能性成分を含むシーベリーを栽培し、加工品を作られている株式会社遠藤組フォレスト・ベリー農園さんを訪ねました。
まずは、シーベリーについて。
学名は、Hippoohae ramnoides L.
原産国によって名前が異なり、中国では沙棘(サジー)、モンゴルではチャチャルガン、ロシアではオピルビーハ、イギリスではシーバックソーン、フィンランドではトゥルニなど、様々な呼ばれ方をされています。日本には自生せず、和名をスナジグミといいます。
シーベリーは、-43度~40度という幅広い温度帯や、海水の塩が周囲にある沿岸地域、そして、窒素固定力のある放線菌と共生することができることから、栄養分が少ない土地でも育つことができる環境適応力が高い植物です。
果実には、鉄分、亜鉛、ビタミンACE、アミノ酸、不飽和脂肪酸オメガ3・6・9、パルミトレイン酸(オメガ7)が豊富に含まれています。また、シーベリーに含まれる油脂は、免疫や皮膚再生、スキンケアに関する研究が進んでおり、特許文献が多数報告されています。これだけの機能性成分を含むシーベリー。北海道で一番最初に栽培を始められたのが、北海道の道央圏南部に位置するむかわ町にある株式会社遠藤組フォレスト・ベリー農園さんです。
これまでの歩みを星幸子さんに伺うことが出来ました。
会社名でお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、建設業を営まれている企業です。
今から十数年前のこと、公共事業の大規模な減少の中、建設産業以外の分野への進出を模索されており、新規事業を立ち上げるなら、誰もやったことがないことへの挑戦が条件だったといいます。そこで出会ったのが「シーベリー」。当時はとにかく珍しいということだけ。今から13年前、販売されていた苗を取り寄せ、試験栽培が始まります。どんな種類のシーベリーが気候に合うのだろうか。そんなことで12品種を試験的に植えました。
土地もシーベリー自生地を参考に栽培に適した場所を選択。地元の土質を知り尽くした建設業者だからこそできる判断でした。そして、栽培に適した土地で、残留農薬など気にしなくて良い雑種地を切り開きました。むかわ町は海棲生物の化石の産地として有名な町。そして、本州に比べ乾燥している北海道の気候。西欧では海岸沿岸に、中央アジアでは乾燥地帯に育つシーベリーにとって国内でこれ以上ない条件だったのではとおっしゃいました。
環境に合わずダメになった種類もありましたが、栽培期間中、肥料、農薬不使用で育てた果実が3年目から取れ始め、シーベリーの商品化に向けて加工が始まります。また、収穫できたシーベリーの果実を外部の分析センターに出したことで、機能性成分が豊富に含まれることが明らかになりました。
味、色、香り、加工特性も加味し現在、商品に使用されているものが以下の3品種。
こちらは、ロシア種のポタニットセスカイヤ。品種改良されているだけあって、風味も良好。粒が大きく加工に向く種類。
こちらは、フィンランド種のライサ。小粒で酸味が強くさっぱりした味わい。
両者の粒の大きさは写真のとおり。
写真左:ポタニットセスカイヤ
写真右:ライサ
左のポタニットセスカイヤの方が大きいことがわかります。
こちらは、ロシア種で果汁に含まれる油の含量が多い種類。油が強すぎると加工しにくいそうですが、色味を出したい時に用いるとのこと。
これらの品種をブレンドして加工品が作られます。
番外編として。こちらは食味が劣るため使用されていない中国種サジー。
果実の色は黄色。イクラの大きさ・形にそっくりでした。味見させていただきましたが、確かに酸味とえぐみが強い印象でした。
収穫は、木を揺らして落ちてきたものを集める方式をとります。
当初は手摘みしていたそうなのですが、完熟果は潰れやすく、完熟していない果実を集めることになり、食味に影響が出てしまうとのことで、現在は、鋸の刃の部分を独自に改良し、枝を挟んで揺らす機械を使って、収穫しています。
収穫したものは、選別されます。ここでも独自のアイディア機械が。
園芸用の土を振るう機械を改良したもので1次選別を行い、2次選別では傷んでいる果実、虫食いを取り除き、果実同士でくっついているものをバラバラにする作業を人の手で行います。
その後、丁寧に洗浄され、冷凍されます。果実一粒一粒がバラバラになるように、全体が完全に凍る前に一旦取り出し、容器を揺する作業を加え、再び冷凍します。使い手のことを考え、冷凍の方法もこだわってらっしゃいました。
フォレスト・ベリー農園さんで作られているのは、冷凍の「シーベリー果実」の他、
「奇跡の果実 ブレットペースト」
「奇跡の果実 フルーツソース」
「シーベリーシャーベット」
「シーベリージュース」です。
選別所のすぐ隣に工場があり、そこで全ての商品が一つずつ手作りされています。まず最初に商品化されたのが、
「奇跡の果実 ブレットペースト」
「奇跡の果実 フルーツソース」
加工の段階でもご苦労がありました。シーベリーに含まれる油成分が直火加熱によると匂いを発するとのことで、湯煎で丁寧にソースを作っています。
シーベリーのpHが2.6と低いために、低温加工が可能なのだそうです。シーベリーの特性に苦しみながらも、シーベリーの特性をうまく利用した加工方法を取られていました。その後、果実生産量が増えるに従い、加工品に、シャーベット、シーベリージュースが加わりました。
シーベリーという北海道で誰ひとり栽培したことのない果実の栽培を始められたフォレスト・ベリー農園さん。お話を伺う中で、新しい作物栽培とその加工の開拓者ならではの沢山の壁を壁と思わず、知恵と工夫で乗り越えられてきた姿勢に感銘を受けました。
フォレスト・ベリー農園さんを後にし、シーベリーの商品が販売されている道の駅「むかわ四季の館」に立ち寄り、シャーベットを頂きました。
鮮やかなオレンジ色にシーベリーの香りがふわり。さっぱり爽やかなシーベリーの酸味が効いたシャーベットでした。
ご紹介した加工品はフォレスト・ベリー農園さんのHP
(http://seaberry.biz/)からもお取り寄せすることができます。みなさまも、ぜひ召し上がってみてはいかがでしょうか。
北海道のまつのベジフルサポーター
シニア野菜ソムリエ、
6次産業化プランナーの田所かおりのレポートでした。