松野貞文の全国視察レポート

大分県木の花ガルテン

何もない山あいの農村は、実は宝の山だった────
知恵と工夫と行動力で大きく発展した大分県大山町のシンボルともいえる直売所「木の花ガルテン」本店に訪ねた。IMG_4074_02
まつのの社長補佐、元ロイヤルグループのシズラー社長の梅谷羊次取締役も著書『ファミレスは進化する』で、取り上げている注目の施設だ。
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烏宿山(からどまりやま)に登る中腹、大山川を足元に望む雑木林を切り拓き大分大山町農協がこの地に出店したのが1990年のこと。現在はここ本店のほかに8店舗を出店するまでに広がり、年間の購買客は計270万人。売上高は20億円にのぼる。かつては「日本一貧乏な村」と自他ともに認めていたという大山町は、今や中国や韓国からも視察団がくる地域おこしの注目のスポットだ。
 
訪問した日は雨の平日だったが、朝から多くの人で賑わっていた。

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大山町の発展は、1961年に大分大山町農協が「梅栗植えてハワイに行こう」をキャッチフレーズに掲げたことから始まる。そこにあるのは、ないものねだりではなくあるものを探す精神。町の8割が山林で、農家1戸あたりの耕作地は平均40アール。平野部のような広々とした田んぼや畑はない。しかし、水はけのよい傾斜地ならある。だったら平地と同じ農業ではなく、田んぼに梅を植えよう、畑に栗を植えよう。面積あたりの収益をあげて、みんなで稼いでハワイに行こう。キャッチフレーズにはそんな思いが込められているという。 「何もない山奥」は山菜や野草の「宝庫」だ。 ウド、ワラビ、タラの芽・・・ 春のこの時期、売り場には山菜が溢れていた。

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あぜ道に生えるヨモギや畑では嫌われ者のスギナも干せばお茶になる。ビワも果実の出荷は年1回だが、葉のお茶なら通年の収入源だ。 

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市場出荷では捨てられる大根の葉もここでは商品。 IMG_4052_02
加工品も豊富でゆずこしょうだけでも赤・青・黄、大瓶、小瓶とさまざまな商品が並び、思わず手が伸びる。 

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買う楽しさは、選ぶ楽しさにある。そんな心理が計算されているかのような売り場だ。特産の干しシイタケはずいっと奥まで5メートル近く棚が伸び、圧巻の品ぞろえ。
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ラベルに「木の花ガルテン」とあるのは、大山町農協が自前の加工所でつくったもの。
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敷地内にはベーカリーもあり、町内産の野菜やハーブ、古代米がパンに使われていた。青果や米として売るよりも何倍も収益になる。IMG_4077_02-vert
加工や販売も農協が手がけることで町の収益を確保し、地域のなかで経済が回るようになる。最近よくいわれる6次産業化の理想形の一つがここにある。 売り上げのうち木の花ガルテンの手数料は2割で、 8割は生産者の取り分。市場出荷なら農家の手取りはおそらく2割前後。真逆の構造だ。だから農業で稼げるし、ハワイにも行ける。 「ハワイ」にはレジャーの意味もあるが、海外を見て知識や経験を得ることが本来の目的なのだという。そうして農村の人材を育て、新たな知恵を生む素地をつくることで町がさらに潤うようになる。大山町ではそんな好循環が生まれている。直売所と並んで人気なのが、併設レストラン「オーガニック農園」のビュッフェ。

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旬の野菜や山菜をたっぷり使った農家のお母さんたちの手料理が並ぶ。この日は約40種類。肉を使っているのは肉じゃがやから揚げくらいで、ほとんどが野菜中心だ。IMG_4092_02-vert
季節ごとの野菜でメニューが決まるため、レシピはないのだという。

長年、家庭の台所を預かる大ベテランのお母さんたちが腕をふるう、ここでしか食べられない「大山の味」だ。ちなみに、レシピがないのはその日のロス品でメニューが決まるまつののまかないも同じ。同行したクッキングプランナーの谷口恵里(写真右)は食べながらメモに忙しくしていた(笑) (左は福岡のまつのベジフルサポーター永利裕子さん) 

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週末は開店前から行列ができる盛況でレストランも本店のほかに2店を出店。 福岡県の野間大池店はロイヤルホストが不振で撤退した跡地に居ぬきで入り、人気店に復活させた。
梅谷取締役はこのことを著書でこう語っている。 「『立地が変わった』など、(ロイヤルホストが)売れない理由は何とでも言えた。その場所を、木の花ガルテンの人は『とてもよい場所です』と嬉しそうに話す」

「出店初月の売上は閉店したロイヤルホストの何と6倍」
「どちらが市場に対応しているかは明白である」ないものを並べ立てて
言い訳をするのではなく、あるものでできることに知恵を注ぐ。
まつののスローガン、「できないんじゃない。やらないだけだ」
に通じる学びをいただいた視察でした。

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