かやぶきの里として知られる京都府南丹市美山町でも、以前は、お正月の準備としてお餅つきをした後に、蒟蒻芋から手作りのこんにゃくを各家庭で作っていたのだそう。時代の流れとともに、手間のかかる作業がだんだんと敬遠されるようになり、こんにゃくは家で作るものから、買ってくるものへと変わっていきました。
そんななか、美山町萱野地区では、町おこし事業の一環として4人の女性が代表メンバーになり、萱野こんにゃくグループを結成。平成元年から手作りこんにゃくの製造・販売をスタートさせました。近隣の若い世代が集まって結成された支援グループ「こんこんひろば」と協力しあい、活動を行っています。先日、京都府・食育のたね交付金を活用した事業として、支援グループ「こんこんひろば」主催の食育イベントが行われ、おとなとこどもを含め、30名以上の参加者が集まりました。
蒟蒻芋は保存がむずかしく、傷みやすいために、収穫後、乾燥させて細かく粉砕した精粉で加工する方法が一般的。萱野こんにゃくグループでは昔ながらのやりかたで、生の蒟蒻芋を茹でてすりおろしたものを原料にこんにゃくが作られています。すりおろした蒟蒻芋は、真っ白!専用の器械で練り込み、絶妙のタイミングで灰汁(あく)を入れて固めます。
ここでいう灰汁とは、くぬぎなどの広葉樹を燃やしてできた灰に熱湯を混ぜて漉したもの。実は、蒟蒻芋は
なかなか手のかかる作物で、収穫されるまでに、およそ3年もの歳月を要するうえに、生で食べるとビリビリとしびれるほどの激しいエグ味を含んでいます!このエグ味の正体は、おもにシュウ酸で、そのままではとても食べることができず、畑の作物を狙うイノシシでさえも、ソッポを向く、というツワモノ(笑)
灰汁には、このエグ味成分を中和させる働きがあり、さらに、こんにゃくの凝固剤としての役割も果たしていて、昔ながらの知恵には、驚かされるばかりです!
灰汁の配合や分量など、試行錯誤を重ねて導き出したレシピは、萱野こんにゃくグループの企業秘密なのだそう(笑) 灰汁を混ぜあわせてしばらく撹拌したのち、ほどよく固まったこんにゃくのタネをボールに取り出します。
小さなこどもたちも、かわいらしい手で、こんにゃくをくるくるっと丸めていきます。中に空気が入ってしまうと、あとで割れてしまうので、気をつけながら作業します。
次に、丸めたこんにゃくを、熱湯で20〜30分茹でます。その日の温度や湿度などによって、最適な茹で時間が少しずつ違うのだそう。萱野こんにゃくグループのみなさんの、長年の経験と勘が頼りです。
茹で上がるのを待つ間に、手作りこんにゃくの楽しい試食タイム。なんとスイーツの登場です!黒蜜ときなこをかけて、わらび餅のようにしていただきました。驚くほどのもちもち食感!特有のにおいも感じられず、手作りこんにゃくのおいしさをあらためて実感できました。
イベント終了後は、参加者のみなさんで作ったこんにゃくをおみやげとして持ち帰ることができ、真剣な表情でこんにゃくを選ぶこどもたちの姿が、とても楽しそうでした。地域で守り継がれている伝統食と食育活動のコラボレーションはこどもたちのみならず、おとなにとっても楽しいイベントとなりました。
美山町萱野地区の手作りこんにゃくは、蒟蒻芋が収穫される10月以降、4月までの限定生産です。
お問い合わせはこちらへ
萱野こんにゃくグループ
0771-75-1277(田中さん)
0771-75-1361(藤原さん)
もちもち食感の萱野こんにゃくは、次世代へ継承したい日本の伝統食。ぜひ一度ご賞味くださいね。
兵庫県のまつのベジフルサポーター
野菜ソムリエ
フードライターの坂田理恵でした。