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商品部 清田達郎です。JA高知県の現地研修会、前編に続いて後編をお伝えします。
香美市・やっこねぎ圃場 山本透さん
出荷を始めてから、今年で42年目に突入した、高知のやっこねぎですが、細く繊細な見た目が特徴です。Sサイズのものは東京で見かける浅つきと変わりなく感じます。
こちらの圃場では春と夏で品種を分けており、それにより通年通して棚持ちがよいとのが特徴です。種をまいてから夏は60~70日、冬は90~100日かかります。また、常に水を撒く量を調整しながら、表面の土が乾いている状態を維持することがコツと仰っていました。
圃場の広さは100坪。ハウス入口からウネごとに順番に栽培、収穫し、ピークの時には、日量で市場規格の100gの20入れケースが200箱程取れるそうです。
やっこねぎは熱に強く、レンジなどで温めても萎びず、さらに辛みも抜けて、より食べやすくなるそうです。名前のルーツは、冷奴の薬味に向いていることや、やっこ凧の様に高い志を持ち続けたいと言う思いから命名されました。
収穫の基準値として丈が50センチを超えると、一斉に手で根っこごと取っていきます。
香美市・にら圃場 田村さん
最新の自動管理ハウスで、気温が上がると自動で屋根が空き、ハウス内に風を送り込むシステムになっており、視察中に実際に作動しているところも拝見できました。
しかし、ニラは繊細な野菜でもある為、直接風が当たると葉の水分が抜けて、葉先が茶色になったものが多くなります。さらに、ほとんどが葉部分になるので、風に煽られると簡単に倒れてしまいます。
そして、高温にも弱く40度以上の状態がしばらく継続すると、今度はトロけて痛んでしまいます。これらが最新のハウスでは自動化となり、ニラの成長を安定的に促してくれる安定した環境下となります。
最初は6本~8本の苗を植えて、それがどんどん分けつしていき、収穫時には40本~50本ほどになります。大体、苗付けから約120日経つと収穫時期となります。
ニラはいったん育つと再生する力があり、同じ株から何度も収穫できますが、何回もとっていくうちに、だんだん繊維質になっていき食味や味が落ちていきます。
こちらのハウスでは、6~7回ほどで新しく植え替えとなります。ハウス内の天井がとても高く、窮屈な印象が全く感じられない、最新式のハウスが特徴でした。
南国市・土佐甘とう圃場 山岡伸一さん
以前は、南国市では大葉を中心に出荷していましたが、そこから他の野菜に転向された方もおられます。お伺いした圃場の園主、山岡さんもそのお一人です。
毎年、まつののお取引先様で「土佐甘とうのフェア」がありますが、こちらのハウスの土佐甘とうも全国の店舗様へ弊社よりお届けしました。部会の方々も地元のお店で召し上がっていただき、評判が良かったとの事です。
その流れで、現地の方のおすすめの食べ方があればと伺いました。名前の通り辛くはない唐辛子ですが、ルーツは中国にある為、油との相性が良いと仰ってました。炒め物中心にはなりますが、トマトの酸味との相性が良く、また全体的に味付けが濃いほうがおすすめとの事です。
この一帯で使用されている品種は「甘とう美人」と言うもので、万願寺に似た細めで先がとがっているもので、特性としては肥大しやすく、実になりやすい為、収穫量も安定しているとの事でした。
南国市・しし唐圃場 中村仁博さん
しし唐の生産者は南国市内に30軒ございます。1月は曇天が続き昨対の80%ほどしか収穫できませんでしたが、2月後半からは快晴続きで、3月以降はたくさん出荷できるとの事でした。
※写真左は農園スタッフの中田雅啓さん
圃場では収穫したものをそのまま試食させていただきました。 鮮やかな緑で、最初はさわやかな甘みからしばらくすると少し辛みが出てきて、そのままでも十分に美味しく頂けました。6月の終盤になると果皮部分が固く、辛みが増したものが出てくるそうで、そのようなものを事前に取り除くことも、収穫の際に気を配るそうです。
また、南国市は海が近く、砂浜の特有の粒子が細かい砂を混ぜて固めて、水はけがよい土壌を作っていました。さらに、水はけがよい事を生かしてウネのヤマを無くし、フラットなハウス内となっておりました。
唐辛子は暑さに強いですが寒さには弱い野菜です。温暖な高知でも、冬場は0℃近く気温が落ちることがあります。その際、フィンという装置を稼働します。熱湯を循環させたパイプをハウス内に巡らせており、これにより、仮に寒い日でも、ハウス内は約23℃の状態を維持したまま、翌朝を迎えることができます。
※写真右の2本のパイプがフィン
冬にしし唐が高値になる理由の一つとして、この機械を一晩中稼働させており、燃料費が大きく掛かることも、原因の一つとなります。品種はヘタ部分が張って全体的に一定の太さになる、葵ししとうをメインに使用され、その他には、面長になるのが特徴の土佐じしスリムも使用されております。
南国市・小茄子圃場 中村邦教さん
小茄子は普段スーパーなどで見かけないものですが、ナスの中でも高級品とされ、お伺いした園主の中村さんは、小茄子は野菜の中で最もチャーミングな存在と仰っておりました。
しかし、栽培に関しては、野菜の盆栽と言われるほど、繊細で難しいものです。2日間まともに晴れ間が無い日が続くとたちまち枯れてしまいます。ところが、奥様とお二人で営まれている中村さんはその条件下でも、多い時で30個入りのケースを100箱近く出荷された経験がございます。
苗木は、花芽部分にしっかり太陽が当たるように、きれいに剪定されておりました。この太陽が当たることが良く育つかどうかの要となるので、葉に隠れている物が無いか、こまめに確認する作業が大事になります。
下は手入れ前の状態
等間隔に手入れをした後
また、縁起物でも有名な小茄子は『子を成す』という意味を持ち、古くから重宝されています。近年は小茄子の生産者様は減ってきておりますが、そのように伝統を引き継いでいくことも大切にされております。中村さんは、半分に切ったものを素揚げし土佐ポン酢につけて食べるのがおすすめとの事でした。
最後に各圃場を回って全体的に設備が整っている事もさることながら、いかに自然を有効活用した栽培方法を取り入れるか、さらに農薬をできるだけ使わないためにはどのように、すればよいのか、それらを適材適所で活用している農家様が多く見受けられました。
例えば、農薬の使用量を減らすことは前提として、茄子類の圃場で多く見かけたのは、ミツバチなどをハウス内に放ち、自然に受粉させる花粉媒介昆虫と言う技法の導入や、全体的に、土着天敵(ダニやカメムシ)が好む花や葉をハウス内に植えて虫の住処を作り、野菜に被害を与える昆虫類を追い出す、天敵栽培法を多く取り入れていました。
長くその取り組みを行う一方で、最近では、最新式の技術も取り入れており、一例では、そのハウスごとの温度、湿度をデータ化して、そのハウスに合った、適切な量のCO2を一定時間ごとに送り込むことにより、成長スピードを安定させたり、また、多湿多温を避ける換気のタイミングや、ハウス内の加温などの適正温度も自動で調節してくれる機械を導入したりと、最先端の技術を有効に使い、より安定栽培を目指す取り組みも増やしているとの事でした。
※CO2を排出するビニールトンネル
そのような環境や時代が変わっていく中で、JA高知県の職員の方と、農家の方が、各地区、各圃場を回るごとに、親身にかつ真剣に具体的な話をされているところを見ているうちに、いかに長い年月で信頼関係を構築してきたのかが、わかるような気がしました。また、研修中にメインで案内頂きました、JA高知県の蓼原さんはこう仰っておりました。
「人とのつながりがあるからこそ、高知をしっかりと案内できる。いろいろな農家さんを案内できるからこそ、高知を知ってもらうきっかけが生まれる。高知の事を知れるからこそ、高知の魅力に気づいていく。知れば知るほど、気づけば気づくほど、ますます高知ファンになっていく」
そのお話を聞いたときに、振り返ると、私も短い研修期間でしたが、その一人になった自覚が生まれていたことに気づかされました。高知県が全国的にも大きく出荷量を誇っている青果物は、高知県の気候や条件が生んだということは元より、人とのつながりの強さが追い風となり今日まで発展拡大させてきた言う印象を、この研修中に感じる事が多々あり、そこも高知県の魅力なのだと学ばせて頂きました。