岡山県南部エリアは、瀬戸内海の穏やかな気候に恵まれ、温暖で農業も盛んですが、マンゴー栽培とは意外でした。待つこと数カ月、ようやくマンゴーの実が大きくなり始めた頃、岡山県瀬戸内市を訪ねました。
瀬戸内海に近い牛窓にあるマンゴー果樹園のガラスハウス。牛窓の山に3棟あり、屋根は全自動開閉式になっています。マンゴーは、雨に弱い性質をもち、東南アジアをはじめとする地域では、乾期を利用して栽培されるのだそう。「晴れの国」とも表現される岡山でも、さすがに雨の影響は避けられないので、天候の変化をセンサーでキャッチして屋根が自動開閉するしくみです。
実は、マンゴーはストレスに弱く、寒暖差が激しいと、表面に、ヤニのようなストレス物質が出ます。自動開閉式の屋根は、気温の変化にも対応でき、マンゴーをストレスから守ります。
アーウィン種をはじめ、7品種、およそ800本のマンゴーの木を、管理が行き届きやすい、低木の鉢植え栽培で育てています。ガラスハウスに一歩足を踏み入れると、BGMが流れていてびっくり!なんと、モーツァルトの曲でした。音によるリラックス効果は、人間のみならず、動植物にも、期待できるとの研究結果もあるようで、こちらのマンゴー果樹園でも、その手法を取り入れておられます。セレブなお嬢様のように、大切に育てられているのですね。
だんだんと実が大きくなってくると、重みに負けないように、上下からひもをつけて支えます。およそ800本の木のすべてを、1本1本手作業で行うのですが、ガラスハウスの中の気温は42度!ずっしりと重い一眼レフのカメラを抱えてその中にいるだけで、汗が背中をじんわりと濡らし、そのうちに、大汗をかいてしまうほど、ガラスハウスの中は暑い!!!大変な環境の中での作業です。
42度のガラスハウスは、お嬢様マンゴーたちにとっては、この上ない快適な環境で、蝶よ花よと手をかけられ、上品で贅沢な暮らし(笑)をしているのかと思いきや!生育の過程では、水や肥料を与えすぎてはいけないのです。栄養分がたっぷりあると、実よりも木を大きくしようとする本能が働くのか、あまり良い果実ができないのだそう。
環境には細心の注意を払い、ストレスに負けないように、手厚いケアが施され、その一方で、食べ過ぎないように、ダイエットは徹底的に。甘やかされるばかりでは、上品なお嬢様にはなれないのです。なんて健気なセレブでしょうか(笑)
岡山でのマンゴー栽培に興味をそそられたのは、手がけられたのが、水道設備工事や建設・土木工事業を営む、企業だったということ。吉野川流域の瀬戸内市は標高が低く、川や溜池の氾濫がたびたび起こるため1985年に、国や県、地域が共同で行う大規模な灌漑工事が行われました。その工事を請け負った会社のひとつがシンポー工業株式会社さんでした。
灌漑工事の結果、山の上の畑にも、吉野川の水が行き届くようになり、水道の蛇口をひねれば、いつでも使うことができ、安定した農作業が行えます。ところが、農業地域の過疎化が進み、せっかく水道があっても、使い手は減少の一途をたどります。
離農したり、跡継ぎのない農家さんの水道の元栓を閉めに行くたびに、働き手を失った田畑の様子を眺め、胸が詰まるような思いを抱いていたシンポー工業オーナーの神宝さん。せっかく整備した水道設備を活用して農業でこの地域を元気にしたい、と、考えるようになったのだそう。
マンゴーとの出会いは2005年。仕事でインドへ行った際に、生まれて初めて口にしたマンゴーに衝撃を受け、これは瀬戸内市の起爆剤になる!と確信して、水道設備事業とは「畑」違いの農業への道を切り拓いていきます。
現在、マンゴーの栽培を行うのは、シンポー工業から分離独立した株式会社神宝あぐりサービス。農業生産法人として、地域の活性化に貢献するべく、活動を行っています。2008年からの試験栽培を経て、今では年間18,000個を生産するまでに成長しました。瀬戸内・牛窓で育つマンゴーは、『神宝マンゴー』として商標登録され、贈答品としても人気の商品に。
お話を伺った経営管理部部長の井上さんは、マンゴー栽培に活路を見出すことで、若い世代が農業に夢を持ち、瀬戸内市で農業をしたい!と思ってもらえるようなビジネスモデルになっていきたい、との思いもお聞かせくださいました。
そんな心意気とともに育てられる瀬戸内・牛窓の神宝マンゴー。今年の夏は、大切な人への贈り物に大いなる夢と希望を乗せて、大切に育てられた岡山のマンゴーをお届けされてはいかがでしょうか。
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株式会社神宝あぐりサービス
岡山県瀬戸内市牛窓町
牛窓4531-12
Tel:0869-2767
Fax:0869-22-3816
兵庫県のまつのベジフルサポーター
アクティブ野菜ソムリエ
フードライターの坂田理恵でした。