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香川県小豆島の国産オリーブをレポート

まつのベジフルサポーターレポート

兵庫県のまつのベジフルサポーター
野菜ソムリエ
フードライターの坂田理恵です。

以前、オリーブの産地として知られる岡山県の牛窓地区で、お友達にすすめられて、オリーブのジェラートをいただきました。その時に、食べたジェラートがとてもおいしくて驚き、オリーブに興味を持つようになりました。生のオリーブってどんなものなんだろう?どうしても見てみたくて、収穫のピークを迎えた頃に、香川県の小豆島にある井上誠耕園さんのオリーブ園を訪れました。

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神戸港からフェリーで約3時間。瀬戸内海に浮かぶ小さな島、香川県の小豆島ではオリーブの栽培が盛んです。オリーブはアクが強く、渋みや苦みもあるので、そのままでは食べられません。塩漬けにしたり、オリーブオイルや、その他の食品、化粧品として加工されたもので、接する機会が多いですね。国産オリーブは初秋から12月頃が旬。日本で栽培が行われるようになったのは、明治時代のお話です。

明治41年(1908年)に、当時の農商務省が、アメリカから苗木を輸入して、三重県、香川県、鹿児島県で、栽培実験を行ったところ、香川県にある小豆島だけが、実験に成功をおさめたのだそう。温暖で、日照時間も長いという気象条件が、オリーブの生育に適していたのですね。

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井上誠耕園さんが、オリーブの栽培に着手したのは、終戦直後の昭和21年(1946年)。現在では、瀬戸内の穏やかな海が見渡せる広い園地におよそ3600本ものオリーブの木があります。

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収穫の様子を見せていただきました。オリーブは、想像していたより、背の高いものもあって、手が届かない場合は、脚立が登場。太陽の光をふんだんに浴びて、たわわに実ったオリーブは、まるで宝石のようにつややかです。

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ひとつひとつ丁寧に手摘みされ、収穫した実は前掛けのポケットへ。傷をつけないように、優しく優しく、大切に扱われていました。収穫を待ちきれずに、ころんころんと、地面に転がっている実を見つけると、園内をご案内してくださっていたスタッフのかたが、そっとすくい上げて、手のひらに乗せて、眺めておられました。

私たちはオリーブを、ひとつも無駄にはしないんですよ。と、おっしゃるそのお顔には、オリーブへのあふれる愛情と、育てている作物への自信と誇り、といったものが垣間見えて、農業への真剣な思いが伝わってきました。

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井上誠耕園さんでは、オリーブの生産から商品開発、販売まで、トータルプロデュースを行っています。オリーブは枝から離れると、劣化するスピードが早いので、できるだけ速やかにオイルを搾る必要があります。小豆島では収穫後72時間以内の作業が、標準になっているのだそう。そんな中、井上誠耕園さんでは、収穫後、手作業での選果作業を経て、24時間以内に搾油する、という独自の厳しい基準を作り、そのルールを守り続けています。

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オリーブオイルには、細かい等級があり、その最高峰とされているのが、エキストラバージンオリーブオイル。オリーブの果実を搾ったまま、加熱や化学的な処理が一切施されていないものだけに、その名前が付けられます。中でも、完熟前の青い実を搾った、早摘みエキストラバージンオイル、「小豆島産緑果搾り」は、井上誠耕園さんの自信作で、お米でいえば新米、ワインならボジョレーヌーボーに匹敵する、いわゆる「新油」です。

青くて若い実からは、あまり多くのオイルは搾れないのですが、一般的なオリーブオイルにくらべて、ポリフェノールが豊富です。抗酸化作用で、アンチエイジングにも大きな期待がもてそうですね。わずかしか作ることができない、高価な季節限定商品ですが、毎年この新油を楽しみにしておられる、ファンが大勢いらっしゃるそうです。

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船でしか行けない穏やかな瀬戸内の島を訪れたのは、この時が初めてでした。こんなにも大切に慈しみ育まれるオリーブに出会えたことは、野菜ソムリエとして、とても貴重な経験となりました。商品価値の高い野菜や果物を作る、ということに加えて、作物へのあふれる愛や探究心、そこで働く人たちの楽しそうな様子、燦燦と輝く太陽の光。そこにいるだけで、ふわっとあたたかい気持ちなれる。そんな素敵な場所でした。井上誠耕園さんのオリーブ園、またいつか訪れてみたいと思います。

井上誠耕園さんホームページ
http://www.inoueseikoen.co.jp/

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フードライターの坂田理恵でした。

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