まつのベジタブルガーデン

鳥取県Uターンで就農!農業女子は楽しくて仕方ない!

まつのベジフルサポーターレポート

鳥取県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエ上級プロ・アスリートフードマイスター2級の長島明子です。

真夏のような日差しが照りつける5月某日、鳥取県琴浦町(ことうらちょう)にある琴鳥(ことり)農園を訪ねました。琴浦町は人口約1万8000人、鳥取県のほぼ中央に位置し、北は日本海に面し、南は秀峰大山から連なる山々に囲まれた、農業と漁業が盛んな町です。琴鳥農園は琴浦町の北部、田畑が広がるのどかな地域の一角にあります。


琴鳥農園は門脇恵さん(44歳)と妹の児玉美穂さん(41歳)とご両親の家族で経営する農園です。

(左から恵さん、お母さん、お父さん、美穂さん)

「琴浦町の『琴』と鳥取の『鳥』をあわせて、琴鳥(ことり)農園と名づけました。最初は『ことり農園』とひらがなにしたかったのですが既存していたので、当て字ですが、『琴鳥』で『ことり』と読ませました。鳥取県琴浦町に貢献したいという思いがあり、今は琴鳥の漢字表記が気に入っています」と語るのは、姉の恵さん。

一年前、妹の美穂さんとともに東京からUターンし、ご両親がなさっている農業を一緒に手伝う形で就農しました。現在2年目の農業女子です。恵さんと美穂さんは東京では事務や販売の仕事をしており、まさに畑違いの世界に飛び込みました。

琴鳥農園は年間で30品目以上の野菜を栽培しています。訪問したこの日は、夏野菜だけで、ピーマン5種類、なす3種類、トマト3種類、かぼちゃ3種類、オクラ2種類、ズッキーニ、メロン、スイカ、枝豆、モロヘイヤ、きゅうり、白ゴーヤを栽培中。

(ピーマン)

(トマト)

(ズッキーニ)

(なす)

琴鳥農園の栽培する野菜は他にも、ねぎ、玉ねぎ、じゃがいも、さつまいも、こんにゃくいも、大根、白菜、キャベツ、小松菜、チンゲン菜、ほうれんそうなどの野菜、ハーブ5種類、果物5種類、花卉9種類、お米も合わせると通年で40品目以上、品種の数でいえば50を超えます。 

「多品目の栽培は、野菜の種類ごとに水も養分も必要量が違い、病害虫の発生も異なるので、管理が大変です。出荷するための資材もすべて野菜ごとに違うので、それだけ経費がかかり、保管場所も必要になります。しかし、さまざまな野菜の成長と収穫は愛おしくてたまりません。出荷作業は同じような流れでも、野菜が違えば作業内容が変わり、それがとても楽しいです」と美穂さんは笑顔で話してくれました。

農作業の様子を見せていただきました。

トマトの人工受粉(交配)作業。トマトトーンというホルモン処理剤を使い、着果を促します。


じゃがいも(キタアカリ)の花を摘む作業。収穫は梅雨入り前の6月上旬の予定だそう。


たまねぎの収穫。わからないことがあれば、その都度、農業の大先輩のお母様に尋ねながら作業します。


ズッキーニの収穫。ズッキーニは今年初めて栽培したそうです。

琴鳥農園は、トマトやオクラなどの苗の販売も行っており、苗を購入する生産者からも高い評価を得ています。


(写真はオクラの苗)

恵さんに苗づくりのこだわりを伺いました。「野菜の苗は少量の水をこまめにやることでポット内にまんべんなく細かい根が張るので、定植時に活着がいいんです。苗の成長にあわせてポットとポットの間隔を広げて、太陽の光を良く当てると、節間(葉と葉の間)が詰まって間延びしない苗になります。また、ポット内が温まって根が張りやすくなります」
ひとつひとつの苗に目配り、気配りをする細やかさが品質の高さにつながっているのですね。

就農一年目となる昨年、農業研修会や勉強会に積極的に参加し、若い就農者と交流を図りました。他の農家との出会いがきっかけで、京都のこだわり食材専門店「ヘルプ」との取り引きが始まりました。こちらの店には、さつまいもやほうれんそうを出荷しています。

少量多品目の栽培を活かし、個人向けの野菜の宅配「お野菜便」も開始。その時期の旬のお勧め野菜を詰め合わせています。基本は「おまかせ」ですが、多めに入れて欲しい野菜など要望もお聞きし、ひとりひとりのリクエストに応えた詰め合わせを作ります。

(写真は過去のお野菜便)

また、琴鳥農園のこんにゃくいもで作るこんにゃくが、周りの方から美味しいと評判になり、希望された方に、お野菜便に「手作りこんにゃくキット」を入れたことも。こんにゃくいもと炭酸ナトリウム(凝固剤)、作り方を書いた資料も同封します。

この日の私の取材にあわせて、恵さんがこんにゃくを手作りしてくださっていました。

こんにゃくは手で持つと、指の跡がそのまま残るほどやわらかく、スプーンですくって食べるとちょうどいい。さしみこんにゃくですが、薄く切るのではなく、厚切りがよさそうです。だし醤油をかけていただきました。これまでに食べたこんにゃくとはまったくの別物でした。

きな粉と黒蜜をかけたら、スイーツに変身!

お客様から商品化の要望もあるそうで、いずれは販売もしていきたいとのこと。

恵さんと美穂さんに2年目の目標を伺いました。「2年目となる今年は、農薬も肥料も使用しない夏野菜の栽培実験をする予定。農薬や化学肥料に頼らず、美味しさを損なわないで収量を伸ばし、お客様に琴鳥農園の野菜だから欲しい、と思っていただけるように努力したい」と語る恵さん。

「琴鳥農園の敷地内に自分たちが作った農産物を使用できるカフェのような憩いの場を作り、そこで野菜の販売もしたい。定期的に教室やイベントを開き、野菜とお花いっぱいの素敵な場所にできたらいいな」と、将来の夢も話してくださいました。

恵さんと美穂さんは、とにかく明るく前向き。創意工夫と行動力で、夢を形に変える日も遠くないでしょう。

現在、日本の農業従事者の平均年齢は67歳(平成27年農林水産省農業センサスより)。日本一人口が少なく、少子高齢化が加速する鳥取県に、恵さん、美穂さん姉妹のように、農業をするためにUIJターンで定住する女性たちが今後も増えることを期待します。

琴鳥農園の野菜は「東伯けんこう」「地場産プラザわったいな」などの鳥取県内の農産物直売所で購入できます。「お野菜便」のお問い合わせは琴鳥農園facebookまで。

鳥取県のまつのべジフルサポーター・野菜ソムリエ上級プロ・アスリートフードマイスター2級の長島明子でした。

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