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みなさまこんにちは!高知県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ上級プロ、食育マイスターの斉藤香織です。
高知県はニラの収穫量日本一なのをご存知ですか(平成27年度農水省野菜生産出荷統計より)。ニラは料理の脇役というイメージが強いかもしれませんが、ビタミンC、E、カリウムなどの他に、βカロテンやアリシンを含む栄養豊富な食材で、その栄養成分は疲労回復や免疫力アップなどの効果が期待されます。ニラはその独特の匂いが特徴ですが、実は採れたての新鮮なニラには匂いがほとんどないんです!
香南市野市町でニラを栽培している島内俊さんを訪ねました。
この辺りは森林率84%の高知県の中では貴重な平野地域であり、米作とともに施設園芸栽培が盛んです。高知県のニラ栽培は、水稲の転換作物として昭和33年頃から始まりました。島内家はもともと酪農家で、牛の堆肥を活かせる作物として昭和34年から副業としてニラ栽培を開始したそうです。お母様のてる子さんは「最初はピーマンなどを作っていたけど、ニラは広さも設備もそれほど必要ではないので始めたのよ」と話してくれました。今では周囲に栽培が広がり、香南市の出荷量は全国第1位、日本有数のニラの産地となっています。
まず作業場に伺うと、朝一で刈り取ったニラが山のように積まれていました。25℃を越えると鮮度保持ができなくなるため、室温管理も大切です。ここで作業をしていたのは、てる子さん、フィリピンのベンケット州から来ている実習生のロディさん、ホセさん。高知県とベンケット州は昭和50年に姉妹県州提携を結び、40年以上に渡って農業振興を目的とした交流を続けて来ました。島内さんも5年前よりベンケットの農業実習生の受け入れを行っています。
「ニラは栽培が5割、調整作業が5割」という島内さん。出荷の調整作業とは、外側の葉、折れた葉、いわゆる「カマ葉」を除き、100g束にまとめてテープで止める調整作業です。丁寧に調整作業をすることで、食味の良いニラ束ができます。
梅雨に入っても降雨量が少なく厳しい時期でしたが、圃場へ移動すると、ハウスの中は生長の勢いに満ち満ちていました。この葉ニラはこれから7回目の刈り取りを迎えます。
ニラは越冬多年草。冬は枯れますが、彼岸頃から再生が始まり栄養生長を続けます。生長の盛りは4〜5月。夏至を過ぎた頃から短日を感じ始め、次は少しずつ生殖生長へと変化して行きます。この間に、例年6回くらいの刈り取りができるそうです。いかに生命力が高いかがわかりますね。ハウス内ではCO2濃度を上げるなどの環境制御技術も取り入れられていました。
私も葉ニラの刈り取りを体験させて頂きました。株の根元に鎌を当て、スライドさせるように刈り取ると、元からジュワーっと水分が出てきました。ニラにこんなに水分があるとは驚きでした。
8月後半になると、この葉ニラの株がとう立ちして、花ニラが出てきます。昨年はこの花ニラの収穫もさせていただきました。一般的に花ニラは馴染みがないでしょうが、中華料理ではよく使われる食材です。茎がシャキシャで炒め物などに最適です。花ニラの摘み取りは手で行いますが、これも摘み取った直後からあふれんばかりの雫が滴り落ちて…まるで泣いているかのよう!
実はこの涙、とっても甘いのです。ニラ特有の匂いも全くありません。私たちがいつも感じる「ニラ臭さ」とはアリシン(硫化化合物)によるもので、ニラの細胞を破壊すると、ニラに含まれる無臭化合物アリインとアリナーゼという酵素が反応し、アリシンが形成されます。アリシンは酸素に触れて酸化すると匂いを発生します。「だから鮮度が命なんだよ!」と島内さん。「どんな素晴らしいコールドチェーンがあったとしても、ニラは蒸散し萎れて酸化していく。この圃場で刈りたてのニラの味を体験してほしいね!」ここで刈り取ったばかりの葉ニラ、花ニラは本当に甘い。そのままかじってもとても美味しいのです。
アリシンはニンニクやネギにも含まれる成分。ビタミンB1と結合するとアリチナミンを形成し、疲労回復効果が期待できるので、豚肉や卵、レバーと相性がいいのも納得です。その他にもタンパク質の消化吸収を助けたり、免疫力アップ、血流をよくするという働きもあるので、これからの季節、夏バテ予防のためにも積極的にアリシンを摂りたいですね。
さて、島内さんに教えてもらった調理のコツは「30秒ルール」。茹でるのも炒めるのも短時間で行うこと。加熱しすぎるとニラ本来の甘みやシャキッと感が消えてしまうからです。
サッと炒めて卵でとじるのは朝食の定番。
湯がいたニラとオリーブオイルで作ったソースは鶏肉のソテーに合います。
ニラをたっぷり入れた餃子はスタミナが欲しい時に。
生のまま刻んで少量の醤油と酢で和えてから冷奴に乗せるのもおすすめです。
ところで、ニラ生産量日本一を誇る高知県には、「パーシャルシール包装」による鮮度保持技術があります。これは平成13年に高知県農業技術センターが取得した特許技術で、フィルムでニラを包装する際に、空気をわずかに通す微細な隙間を残すことで、ガスの透過性を調整しています。袋内が低酸素、高二酸化炭素状態になればニラの呼吸作用が抑制され、高い鮮度保持が可能になります。
このパーシャルシール包装のおかげで新鮮なニラを遠方へ届けることができるようになりました。現在は小ネギや青ネギなどの包装にも利用されていますが、実はこの特許、来年には期限切れを迎えます。パーシャルシールは繊細な技術であり、簡単に真似のできるものではないと聞いていますが、関係者が高知県のニラの将来を懸念しているのも事実です。
島内さんの圃場では、毎年花ニラの時期になると、「刈り取り体験」を実施しています。この時期にはたくさんの方が圃場に訪れ、新鮮なニラの美味しさに感動し、自らの手で摘んだ花ニラをお土産にもらって帰っていきます。ニラの本当の美味しさを多くの人に伝えたい!島内さんはその熱い想いを抱きながら、これからもニラ栽培に情熱を注ぎます。私自身も高知のニラの美味しさをより多くの方に知ってもらい、美味しく食べていただけたら…と思います。ぜひ高知空港から近い島内さんの圃場に遊びに来てくださいね!
島内さんはFacebook上でもニラに関する情報発信をされていて、栽培の様子やニラを使った料理が食べられるお店の紹介など内容が盛り沢山です。ご興味のある方はぜひこちらをのぞいてみてください!→『ニラは高知』
高知県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ上級プロ、食育マイスターの斉藤香織でした。