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山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。
スーパーフードとして世界的に注目を集める「キヌア」。今回は山梨県上野原市へ、キヌアの実験栽培を行っている生産者様を訪問しました。
上野原市では、厚生労働省の委託を受けて、新産業開発による雇用創出を目的とした「実践型地域雇用創造事業」を実施しています。事業の目的達成に向けて平成27年12月に設立された団体が「上野原市地域雇用創造協議会」。上野原市や経済団体、大学など14つの団体で構成されています。今回ご協力いただいた前島達夫さんは「上野原市地域雇用創造協議会」の農業分野の実践支援員としてキヌアの特産化事業に取り組んでいます。
キヌアは数千年前からアンデス地域で食用に栽培されている疑似穀物。ほうれん草やビーツと同じアカザ科の1年草で、穀物の精白米に比べ、食物繊維、鉄分、カルシウム、カリウムなどを豊富に含んでいます。
キヌアは播種後約90日で収穫となりますが、4月に播種して7月上旬に収穫する春播きと、9月に播種して11月に収穫する夏播きが可能です。こちらが発芽したキヌア。
すくすく育っています。
草丈が50センチを超えたころ、倒伏対策を行います。
こちらがキヌアの花。なかなか綺麗ですね。
現在、2品種のキヌアを栽培しており、その1つが「ホワイトキヌア」(WQ)。
もう1つは「協議会選抜C」。協議会オリジナルの品種で、前年に栽培した「A」「B」「C」「D」の4品種のうち、収量や粒の大きさ、栽培のしやすさなどを考慮した際、最も評価が高かったものが「C」だったのだそう。
よく見ると葉の形も違います。こちらが「ホワイトキヌア」。
そしてこちらが「C」。
キヌアというとプチプチした粒を想像すると思いますが、実は葉も食べられることをご存知でしょうか?圃場で実食する前島さん。
私もいただいてみたところ、アクのないほうれん草といった感じ。同じアカザ科なのが良く分かります。こちらのキヌアは有機肥料のみを使用し、農薬は使わずに栽培している上、残留農薬分析も行っていて安全性が保障された葉です。それを聞き、前島さんが躊躇なく実食していた理由がよく分かりました。
実は「ホワイトキヌア」と「C」、味も少し異なるようなのですが、残念ながら私にはその違いが分からず…でも、この葉が料理に使えるということはすぐに分かりました!「よかったら持っていってください」そうおっしゃってくださった前島さんのお言葉に甘え、たくさん持ち帰りました。
早速キヌアの葉を使って簡単クッキング。まずは炊いたキヌアと共にサラダの具に。
次に、バジルの代わりにキヌアの葉を使ったカプレーゼに。
続いて、キヌアの葉の生春巻き。キヌアの葉で作ったジェノベーゼ風ソースを添えました。ソースには炊いたキヌアも加えてダブル使い。
こちらは、胡麻の代わりにキヌアポップを使ったナムル。
グリーンスムージーにも入れちゃいます。
現在キヌアの葉についての研究も進められており、その栄養価については未知数ですが、原産国ボリビアでは既に野菜として食べられていて、粒よりも葉の方が栄養があるという研究結果もあるのだそう。しかしまだそのほとんどを輸入に頼っているキヌアの葉を入手することは、現時点ではとても困難。前島さんのおかげでとても貴重な経験ができました。
この経験から約45日。収穫期を迎えたということで、再び畑を訪ねました。前回草丈が50センチほどだったキヌアは2メートルを超える高さに。
前島さんも「正直ここまで大きく成長するとは思っていなかった」とのこと。それは、元々キヌアは種子を収穫することを前提としているため、施肥の際、葉を茂らせ茎を太くする役割がある窒素の量は意識して減らしていたから。想像以上に成長したキヌアが倒れないよう誘引するのがとても大変だったそうです。まだ栽培方法が確立されていないキヌア。前島さんも試行錯誤の毎日です。
辺りを見渡すと、そこには不思議な光景が!収穫期を迎えたキヌアは色とりどり。もちろん全て同じ品種です。 ちなみにこれは「C」
そしてこちらは「ホワイトキヌア」。
どうやらキヌアは、品種ごとに色が違うわけではないようです。このことも、キヌアが「神秘の作物」と言われる理由の1つかもしれません。
先をつまんで種がポロポロ出てきたら収穫のタイミング。
下の写真、実から発芽しているのが分かりますか。こうなるともう遅いのだそう。収穫期に雨が多いと、水分を吸収して発芽してしまうのです。
収穫期を迎えたキヌアは、90センチほどの長さにカットして収穫します。
その後乾燥させるために吊るします。これが約1日経ったキヌア。
約2週間ほどでカラカラになります。
脱穀するとこんな感じ。
脱穀後は精白し、選別。
現在脱穀と選別は手作業で行っていますが、来年キヌア専用の選別機を導入し、いずれは乾燥室や脱穀機も導入して、収穫以降の作業は全自動化していく計画なのだそう。そうなれば、一気に特産化が進みそうですね。
実はキヌアが吊るされていたのはハウスの中でした。
このハウスは元々キヌアを冬に栽培するために建てられたもの。現在春播きと夏播きを行っていますが、いずれは11月に播き2月頃収穫する冬播きも行う計画があるそうです。
今はまだ実験栽培中のため、皆様の手元に届くことはないのですが、上野原市産キヌアが流通する日は近そうですね。
また、市内の「喫茶珈琲屋」さんではキヌアのメニューをいくつか提供しています。
タラコとキノコのパスタにはキヌアがトッピングされていました。
また、こちらのお店では特産品開発のための会合が開かれており、前島さんや学生らと共に試作会が行われることも。試作には私たちがよく目にしているキヌアの粒(写真右)の他に、乾煎りしてポップさせた「キヌアポップ」(写真中)や、それをパウダーにした「キヌアポップパウダー」(写真左)なども使われています。
そして、こちらは上野原高校の学生が作ったクッキー。キヌア感たっぷりで美味しく仕上がっていたそうです。私も食べてみたかった!(笑)
そして、創業1890年の老舗「菓子処植松」さんではキヌアおかきを販売中。「きぬあ」とひらがな表記にするだけで、一気に和な感じなりますね。
キヌアの栽培だけではなく、加工から販売まで、地域の特産化に向けて多くの方々が関わり、市をあげて6次産業化に取り組む上野原市。これからがとても楽しみです。
●上野原市地域雇用創造協議会
Facebookページ:https://www.facebook.com/uenoharajob/
●喫茶珈琲屋(かうひいや)
409-0112 山梨県上野原市上野原1770
TEL0554-63-2610
●菓子処植松
409-0112 山梨県上野原市上野原578
TEL0554-63-0107
山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。