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みなさまこんにちは。滋賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザーの辻川育子です。
14種類ある「近江の伝統野菜」の一つ、こちらのウリのような野菜は何かわかりますか?葉や蔓の形はかぼちゃに似ていますね。
これは「ユウガオ」です。夕方に花をさかせるのでこの 名前がついていますね。この実をひも状に剥いて干したものが「水口(みなくち)かんぴょう」になります。巻きずしに入っている乾物のかんぴょうです。この大きな実がどのように「かんぴょう」へと姿を変えていくのか、その作業工程と「水口かんぴょう」の歴史をお伝えします。
「きれいな白い花が咲いていますよ」と教えていただいたのが6月下旬。滋賀県甲賀市水口町にある圃場を訪ねると、かわいいお花が咲いていました。
JAこうか・水口かんぴょう部会長の谷口治郎さんにお話を聞きました。
ユウガオの花には雌花と雄花があります。よく見ると、花の下にもうかわいい実をつけているものもありました。この実が直径30~40センチ、重さが10キロ近くになると収穫です。
土の上には稲藁が敷き詰められていました。これは、つるが巻き付いてしっかりと支えるためです。
そして、8月に入ると、いよいよかんぴょう作りが始まります。圃場へ行ってみると大きなユウガオの実がごろごろとできていました。
朝7時前にお邪魔すると、もうすっかり作業が始まっていました。5時には加工作業を開始するそうです。収穫した実は「尺寸大のウリ」の意味を略して「しゃく」と呼ばれます。まずは、しゃく剥きをします。
皮を剥くと中はこんなに白くて綺麗です。ここから幅3センチ、暑さ2~3ミリほどの長い帯状に剥いていきます。昔は包丁による手作業でしたが、現在は丸剥き機で剥いていきます。ではその工程を見ていきましょう。
シュルシュルと勢いよく白い帯ができあがっていきます。長いもので3メートルにもなる帯を竿にかけて干していきます。
途中、かんぴょう同士がくっつかないように離してあげながら1日半干します。昨日干されたかんぴょうをそのまま味わってみると、想像以上に甘くてまるで干し芋のような味わいに驚きました。これをこのまま天ぷらにするとスルメの天ぷらのようになるとのこと。今度おつまみに作ってみたいと思います。
さて、このかんぴょうを干す風景ですが、1600年頃に歌川広重が東海道五十三次の浮世絵木版画に描いてから一躍有名になりました。
その約100年後、水口岡山城主・長束正家が農民たちに作らせ、その後下野国壬生(栃木県)に伝えたとされています。そのため、水口かんぴょうの歴史は、現在かんぴょう国内産シェア1位の栃木県(栃木県干瓢商業協同組合HP参照)よりも古く、かんぴょう発祥の地と言われています。
この「水口かんぴょう」の産地の1つ宇川地区では、宇川天満宮の祭礼にかんぴょうをふんだんに使った押し寿司(宇川ずし)が作られるそうです。すし飯の上に塩ぶりやかんぴょうなどの具材を敷き詰め、竹の皮を挟み、幾層にも積み重ねた押し寿司です。
「水口かんぴょう」の特徴は食物繊維やカルシウムが豊富で、独特のやわらかさがあります。「これを食べたら他のかんぴょうは食べられない」と言う方もいるほど、とても甘みがあって美味しいかんぴょうです。まさに太陽の恵みをたっぷり受けて、おいしさが凝縮されているのですね!無漂白なのも嬉しいです。精進料理にもよく使われ、我が家ではお盆のお供え料理の煮物やのっぺい汁などにも入れます。
ところで、剥いた後の実は捨てるのでしょうか。いえいえ、「なかご」と呼ばれてこの辺りでは焼いたり煮物にして食べられるそうです。1つ頂いたので私もあんかけにして冷やして味わいました。
甘みがあって、とろっとろで美味しかったです。珍しいものを頂くことができて感謝です。
ちなみに、これは種取り用のヒルガオの実。水口かんぴょうは代々種を自家採種している独自品種。現在水口でかんぴょうを作っている農家は16軒。高齢化や農地転用などで生産者は少なくなってきています。そこで、地域の方に種を分けたり、東海道沿いではかんぴょう作り体験などの取り組みも行われています。近江の伝統野菜「水口かんぴょう」。手間暇かけて作られるそのおいしさをぜひ味わっていただきたいです。
滋賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザーの辻川育子でした。