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山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。
9月に入り、すもも品種リレーも終盤。今回は緑のすもも「ケルシー」をご紹介します。
山梨県では様々な品種のすももが栽培されており、収穫量・出荷量共全国トップです(平成28年産農林水産省統計)。県内のすもも栽培は、江戸時代に現在の南アルプス市落合地区で行われていた記録が残されており、当時のすももは「甲州大巴旦杏(こうしゅうだいはたんきょう)」と呼ばれていました。明治時代にアメリカに渡り、バークレーのケルシー農場で品種改良を重ね、大正時代末期に日本に戻ってきたのが「ケルシー」です。
今回訪問したのは、笛吹市の「菊島西洋堂東支店」。山梨県果樹試験場で育成されたサマービュートやサマーエンジェルはもちろん、大石早生、菅野中生、ソルダム、貴陽、太陽、ケルシーを栽培しています。お話を聞いたのは菊島史登さん。ご実家は「菊島西洋堂」という菓子問屋を営んでおり、「菊島西洋堂」のある山梨県甲府市を基準とし、それより東側に位置する笛吹市で農業を始めて今年で7年目。
「菊島西洋堂東支店」のすももは、個人注文による直送や食材宅配業者などを通したり、ファーマーズマーケットなどに菊島さん自ら出向いて販売したりしています。
菊島さんはこの日訪問した畑の他に、同じ笛吹市内に2か所の圃場で栽培されています。1か所にまとまっていないと作業が大変だったり、移動の手間はありますが、天候不順による影響を少なくすることが可能です。
例えば集中豪雨。限られたエリアで強い雨が降った場合、そのエリアの畑で育ったすももが全て出荷できなくなってしまったとしても、別の圃場は全く問題なく収穫できる、ということがあります。また、同じ笛吹市内でも標高が違うと収穫時期を少しずらすことができるので、同じ品種を長く収穫することも可能になりますね。
ケルシーは、他のすももと同じように、4月上旬に白い花を付けます。
すももは自家結実性がない品種が多く、別の品種の花粉を使って人手による授粉作業を行うのが一般的ですが、菊島さんのところではケルシーの人工授粉は行いません。これは、ケルシーが他のすももに比べて花粉が多いため、すぐ隣にあるソルダムなどの他品種の花粉と、風や虫の力に任せています。
すももの外観というと、おそらく形は丸くて色も赤や紫を想像される方が多いでしょうが、ケルシーはとがっていて、皮は黄緑色です。
すももは品種ごと収穫時期が異なりますが、受粉や摘果など、他の作業はほぼ同じ時期にしなくてはならず、どうしても人気品種の作業を優先しがち。となると、ケルシーの摘果作業までたどりつかないことも。そのため、ケルシーが鈴なりになっているところもありました。
よく見ると、赤い点々がついている果実があるのが分かりますか。これは「カイガラムシ」の仕業です。菊島さんは、農薬の使用量をできるだけ少なくしているため、このような果実ができてしまうことも珍しくありません。
木から取ったケルシーにかぶりつく菊島さん。
果肉は黄色。そしてみずみずしいですね。「皮は少し硬いので、ご自宅で食べるときは皮をむくのがおススメですよ」と語ります。
ちょっと傷がついて、出荷が難しいケルシーを分けていただきました。確かに少し傷はあるようですが、新鮮な証拠の白い粉(ブルーム)がたっぷりついています。
カットしてみると、種の下に空洞があるのが分かりますか。この空洞はケルシーの特徴の1つです。
ちなみに、貴陽の切り口はこのように空洞はありません。
とんがりケルシーですが、こうして見るとハート形に見えませんか。可愛い!空洞のおかげで種を取るのが簡単なので、食べやすさは他の品種に負けません。
こんな色なので、一見酸っぱいように思えますが、酸味はほとんどありません。貴陽のような強烈な甘さもありませんが、さっぱりした甘みが大人向け。しっかりした果肉なので、食感はサクサクです。もう少し時間を置くと柔らかくなりますが、私は硬い方が好みかな、と感じました。
ケルシーの出回り時期は8月下旬から9月上旬と短く、今年の菊島さんのケルシーの出荷はほとんど終わってしまっているそうですが、同じ笛吹市内で栽培されたものが9月10日頃までは直売所などに並びます。食材宅配業者などでも取り扱われているので、見かけたらぜひ食べてみてくださいね。
山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。