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佐賀県のまつのベジフルサポーター野菜ソムリエ・食育マイスター・雑穀エキスパートの前田成慧です。
今回は、今が収穫時期のお米のおはなし。「ホシユタカ」についてご紹介いたします。 「ホシユタカ」は、日本の短粒米(ジャポニカ米)と世界で多く栽培され食べられている長粒米(インディカ米)を掛け合わせて作られたハイブリット米(交雑米)です。5年前(2012年)に日本で開発され、その翌年から栽培がスタートしたできたてホヤホヤの長粒米の一種です。
今回、生産者の木須栄作さん(写真右)に取材に行きました。木須さんの運営する「フェルマ木須」は、種から袋詰めまで一貫生産・管理しており、販売や配達まで行うのが特徴です。10品種(ゆめしずく・さがびより・ひのひかり・ヒヨクモチ・ホシユタカ・赤米・黒米・緑米・その他麦など)以上を育てる米・麦の専業農家で、年間150トンのお米を生産しています。全体面積約40haのうちの2haほどが長粒米「ホシユタカ」で、平成25年の試験栽培時から協力してきました。
長粒米「ホシユタカ」は肥料が多いと大きくなりすぎて倒れてしまいますが、大きく成長できる潜在能力が高い品種だと感じます。炊飯器で炊くのではなく米から作る料理に向いていて、水を吸っても膨らまないため、雑炊に向いています。「安全で安心な国産の長粒米を必要としているレストランなどで消費され続けることで、永続可能なお米になると思います」と話していました。
木須さんの田植え(6月下旬)の風景
ホシユタカの稲はガッシリとしていて、風に吹かれても剣のように止葉(とめば)がたち、身近な短粒米(ジャポニカ米)とは違った力強さを感じます。
9月中旬ごろ、ホシユタカの純白の花が力強く咲きます。稲の開花は午前10時前後からおよそ3時間しか咲きません。平成29年度のホシユタカの作付面積は3.5haほどですが、これから認知度を高め、もっと増やしていけると期待されています。
(昨年の収穫風景)今年は11月8日前後に行う予定。
(本年度の収穫を待つホシユタカ)
さて、なぜ佐賀県で長粒米「ホシユタカ」がつくられるようになったのか。「農業試験場、行政、農協など、それぞれの専門家が連携をとりチームワークを発揮できるのは佐賀県しかない!」と言われた方がいるそうです。それは、埼玉県の米問屋「金子商店」の5ツ星お米マイスターの金子真人さん。「ほど良いパラパラ感と美味しさのバランスに優れた長粒米を国内で作れないか?日本の食文化をもっと豊かにしたい!長粒米を美味しくたくさんの方に楽しんでもらいたい!」という思いで、金子さんは5年前に佐賀県に国産長粒米の生産を提案しました。
(苗はJA伊万里育苗センターで管理)
「日本人は3千年以上短粒米(ジャポニカ米)を食べてきました。しかし、世界を見渡すと長粒米(インディカ米)を食す文化圏の国も多く、世界の約8割の人々が長粒米を食べています。食の多様化により日本でも多くの世界の料理を作って食べる時代、外国の料理を粘りのある短粒米(ジャポニカ米)で作ると工夫が要ります。例えば、チャーハンはパラパラに作るのが難しかったり、リゾットなら炊き上がるのに時間がかかりアルデンテ(少し芯が残る)が難しい。元々は長粒米で作られている料理を無理に粘りの強い短粒米で作っているんです。」と金子さん。
今まで専門レストランでは輸入の長粒米を手に入れるしかありませんでした。しかし、国内で長粒米を安定的に作れれば、日本人好みの香りや食味を持ち合わせた国産米が手に入ります。洋食、中華、エスニックなど、長粒米の料理を提供するレストランには朗報です。
私が初めて長粒米「ホシユタカ」を炊いた時、香りに好感を抱きました。インディカ米の独特なポップコーンのような香りがなく、なじみのあるジャポニカ米の香りそのものでした。形は細く長いのですが、ジャポニカ米より少し長いという程度で、元来あるインディカ米よりは短い品種のようです。ジャポニカ米のもっちりした食味や香りはそのままで、インディカ米特有の粘りが少なくパラパラ感があるので、両方の良いところを兼ねそなえた今までにないお米なのです。
(炊いたご飯・左:ホシユタカ・右:さがびより)
【食育メモ】 稲は大きくアフリカイネとアジアイネに分かれます。アジアイネはジャポニカ、インディカ、ジャバニカの3つに分かれ、日本など温帯に伝わったのは粘りあるジャポニカ米、高温多湿の気候と雨季と乾季の変化に慣れたのがインディカ米、寒さにも強く乾燥した大地でも育つ丈夫な稲をジャバニカ米といいます。稲には2万を超える品種が世界に存在しています。
数年前に金子さんが訪れた中国奥地で出会った長粒米が全ての始まり。現地で食されるお米がその土地の料理に合っていてとても美味しかったので、「日本国民にも美味しい長粒米を食べてもらいたい」と思ったのが、国産の長粒米を作るきっかけとなったそうです。
今回、ホシユタカの取材を通して、夢を実現するために立ち上がる人々の情熱を感じました。「2020年オリンピックの年までに、国産長粒米ホシユタカをもっと広く伝えたい!もっと食べてもらいたい!」という金子さんの力強い言葉が心に残っています。
佐賀県のまつのベジフルサポーター野菜ソムリエ・食育マイスター・雑穀エキスパートの前田成慧でした。