まつのベジタブルガーデン

福井県香り高く、食べれば幸せ、ジャンボしいたけ「香福茸」

まつのベジフルサポーターレポート

みなさま、こんにちは。福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代です。

今回は、寒い季節だからこそ出会える貴重な原木栽培のしいたけ「香福茸」をご紹介します。
都道府県別幸福度ランキング(日本総合研究所)で連続1位を獲得している福井県。香福茸は、「幸福度日本一の福井県で採れた香り高く、食した人が幸せになるようなしいたけを栽培したい」との思いが込められて命名されました。

香福茸は、鳥取の「茸王」や石川の「のとてまり」と同じく(一財)日本きのこセンターが開発した肉厚で大きなしいたけを栽培する種菌「菌興115」を使って栽培されています。


スーパーに売っている普通のしいたけと比べるとこんなに大きいです。

その選定は
1.福井県産の原木栽培しいたけ
2.傘の直径8センチ以上
3.肉の厚み3センチ以上
4.傘の巻き込み1センチ以上

という厳密な基準があり、更に、形の美しさや水分含有量も選ばれるポイントになっています。香福茸と呼べる基準に達するしいたけはなかなか無く、原木何本かに1個しか採れません。今年の初競りで64万円の価格がついたほど、とても貴重な幻のしいたけと言われています。
こちらの写真のしいたけは、大きさも形も巻き込みも香福茸クラスのものです。ただし、生産者さんが選ぶものではなく、武生青果市場で認定されたもののみが「香福茸」として出荷されます。厳密には、香福茸とは呼べませんが、肉厚でとてもジューシーなこのしいたけは、まさしく「山のアワビ」と呼ぶにふさわしい味でした。

さて、皆さんは、きのこの栽培に「原木栽培」と「菌床栽培」があることをご存じでしょうか。
ナラやクヌギといった木にきのこの菌を入れ、2年もの間、ゆっくりと自然の中で育てられる原木栽培。
【写真提供:静岡県富士市 今村さんちの香りしいたけ 】

おが屑やふすまなどを混ぜた培地に菌を入れて、湿度、温度、栄養管理され、半年ほどで育てられるのが菌床栽培です。現在、スーパーで販売されているきのこ(しいたけ、しめじ、えのき、ひらたけなど)のほとんどは菌床栽培です。


今回、越前町で原木栽培にこだわってしいたけ栽培されている姉崎椎茸園さんを訪ねました。姉崎さんご夫婦と姉崎さんにしいたけ栽培を学ばれ独立した佐々木さん。姉崎さんの圃場では約4万本のしいたけが栽培されています。

姉崎椎茸園のしいたけ栽培は、地元の山林の手入れをし、木を伐り出すことから始まります。紅葉が5分~7分の頃か成長の止まった休眠期が伐採の時期。伐採後1~2か月そのまま乾燥した木を1メートルほどに切ります。【玉切り】

更に乾燥して植菌します。その時期は、春が適しています。
原木に等間隔にドリルで穴を空けて植菌していきます。
水分調整した木片にしいたけ菌を繁殖させた「種駒」木槌などで打ち込みます

おが屑に栄養分を加えしいたけの菌を培養したオガ菌を駒状に固めた「形成菌」。発砲スチロールの蓋が付いているので、手で植えられます。

種駒がしいたけが発生するまでに2年ほどかかるのに対し、形成菌は1年目からしいたけが生えてくることがあります。

実際に姉崎さんのところで、昨年の春に植菌した我が家の原木から、寒い中にもかかわらず、小さなしいたけが生えてきました。1年目は、菌を植え込んだ場所から生えてきますが、2年目以降は、木全体に菌が回り、様々な場所からしいたけが生えてきます。

しいたけの栽培には、適度な湿度と温度管理が必要です。植菌した菌が原木全体に行き渡るように、原木を適した場所に設置し、時々、木を組み直したり【伏せ込み】、天地返しをして【ほだ起こし】菌の成長を促します。菌が行きわたった原木は【ほだ木】と呼ばれます。
 
原木の設置に適した場所の条件は
1.直射日光の当たらない 
2.通気が良い 
3.排水が良い 
4.湿度が低い 
5.雨が当たる所 
6.周囲に木がある
などです。

特に、原木にとって、直射日光は大敵、温度が上がりすぎると菌が死滅してしまいます。家の周りの木陰や山の中が適しています。気温が15度以上になると、しいたけが生えてきます。しいたけが発生しやすいのは、主に3月~5月の春と9月~11月の秋、特に春先のしいたけは、冬の間にうま味を蓄えており、その多くは乾しいたけに加工されます。

今は稼働していない乾燥機。春にはフル稼働します。しいたけは、植菌と収穫と加工が春に集中して、本当に忙しくなります。

姉崎さんの栽培されるしいたけは、生はもちろんですが、乾しいたけも人気が高く、県内外から多くの注文が入ります。

さて、今回ご紹介している香福茸ですが、12月下旬から3月下旬までの寒い時期に栽培されます

他の原木栽培が露地なのに対し、雨や雪から守るためにハウスで栽培します。
ピンポン玉くらいの大きさになった時に、水分の保持と傘の厚みを出すためにビニールの袋をかけます。また、形のよいしいたけだけを残して、間引きも行います。春や秋のしいたけがあっという間に大きくなるのに比べて、寒い季節のしいたけは、発生から約1か月、じっくり、ゆっくり、香りと旨みを凝縮して大きくなっていくのです。

香福茸は、グルタミン酸の含有量が他品種のしいたけの約2倍もあります(日本きのこセンター調べ)。乾しいたけに豊富なうま味成分グアニル酸は、乾燥することによって発生します。生のしいたけは、グルタミン酸が豊富です。また風邪やインフルエンザの予防に効果的なビタミンB12、免疫力を高めるβグルカン、血糖値の急な上昇を抑え、整腸作用のある食物繊維も含まれています。

たくさんしいたけが採れたり、購入して食べきれない時には、新鮮なうちにスライスして、冷凍保存します。冷凍することで、細胞中の水分が膨張して細胞壁を壊し、うま味成分が溶け出すため、美味しくなります。調理するときは、凍ったまま使います。しいたけは、冷凍しても食感も変わりにくいので、ぜひ冷凍してください。


軽くグリルで焼いたしいたけと様々な野菜でカマンベールチーズの簡単チーズフォンジュ。カマンベールチーズの上部を切り取り、レンジでチンするだけ。肉厚、ジューシーなしいたけととろっととろけるチーズの相性はばっちりです。

シンプルにきのこのステーキ。バターで焼いて、お醤油を少しかけるだけで肉厚なきのこがまるでアワビのようです。


肉厚のしいたけを半分に切り、大葉とチーズを挟んでフライにします。


もちろん、お鍋にも最適です。つくねには、しいたけの軸を混ぜて、余すことなく楽しみます。

冬の間だけ楽しめる貴重な香福茸。ぜひ、皆さんに食べていただきたいです。

福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの水嶋昭代でした。

 

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