まつのベジタブルガーデン

千葉県ほろ苦い春の味!緑のじゅうたんが眩しい安房の菜の花【栽培編】

畑の社会見学

千葉県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、アンチエイジングフードマイスターの栗原美由紀です。

毎年この時期になると、店頭で見かける鮮やかな緑色…食用なばな(以下:菜の花)の季節がやってきました!春の訪れを一足早く教えてくれるこの時期ならではの貴重な食材ですね。ものすごいパワーを感じるようなその力強さは露地栽培ならでは。真冬の太陽を直接浴びることでエネルギーをたっぷりと蓄えられるのです。
なばな
千葉県は菜の花の生産量が全国第1位(農林水産省平成27年農業算出額より)。主に安房地域(南房総市・鴨川市・館山市・鋸南町)で栽培されています。平成22年に「安房 菜の花」として地域団体商標を取得しました。千葉県の農産物で地域団体商標の認定は、冨浦のびわ・八街の落花生・冨里のすいか・松戸のねぎ・市川の梨・白井の梨に続いて7番目の登録になります。

日本一の産地ブランド品として認定されて以来、ここ安房地域では食用なばなを「菜の花」と呼んでいます。昨年は13万ケースを出荷し、今年も3月3日の節句に向けて出荷のピークを迎えています。
なばな
菜の花は、アブラナ科野菜で、花蕾と葉、茎を食用とします。茎の甘さ、花蕾と葉の独特のほろ苦さがバランスよく、歯ごたえのある食感が魅力です。昔から「春は苦みを食べなさい」といわれるように、この時期に春の食材を食べることで、冬の間に溜まった老廃物が排出されます。新陳代謝を促して体の調子を整えてくれます。菜の花を始め、春の食材に香りや苦みが強いのは、こういった作用が期待されるからなのですね。

今回は南房総市にあるJA安房 菜の花部会長を務めた森茂さんの畑を訪問しました。
菜の花部会長
森さんは、平成13年の退職を機に57歳から菜の花の栽培に取り組み、平成24年から4年間は菜の花部会長として活躍されていました。森さんの畑では、8月終わりから種まきが始まり、収穫は11月から4月まで。早生種の「春華」、中生種の「花かざり」「花かんざし」「花の舞」「栄華」「サカタ001」、晩成種の「サカタ88号」「花まつり」と畑を変えながら、品種を変えて出荷しています。

安房地域では、江戸時代後半から菜種油用として菜の花の栽培が盛んになりました。油採取用の栽培であったため、あまり積極的に食べるものではなかったようですが、地域の人たちはその栄養の豊富さから食生活に取り入れていたそうです。まさに生活の知恵ですね。

食用品種としての菜の花の普及に伴い、品種改良も進み、野菜として扱われるようになったのは、昭和18年に南房総市白浜町の旅館で初めて料理で提供されたのが始まりだそう。その後、日本経済の高度成長に伴い、安房地域全体で栽培されるようになりました。菜の花栽培のノウハウがあったことと温暖な気候で冬でも露地栽培で収穫できたことが理由と思われます。

森さんの畑は小高い丘の上にあります。
菜の花畑
丘の上から眺める景色は、見晴らしがよく、澄んだ空気で心が洗われるようです。奥様の絹枝さんは気分転換したい時には畑に来ると話していました。太陽の光をいっぱいに浴びた緑一面に広がる畑には、開花前の収穫期を迎えた菜の花がいっぱい!
なばな
中には黄色い花が咲いてしまったものもあります。
菜の花
「これはねえ、収穫を待ちきれなかったんですよ」と森さん。菜の花に愛情をもって接している優しい森さんの姿に癒されます。花が咲いてしまうと、苦みが増して味が落ちます。出荷の最中にも花が咲いてはいけません。新鮮な状態で出荷できるようにJA安房では「真空予冷庫」を設置し、短時間で均一に冷却して収穫時の品質を保つことに成功しました。

今回収穫した品種は「花かざり」。蕾がなっている茎を鎌で切り取ります。
なばな
収穫のポイントは「花の咲いていないもの」「花芽の小さいもの」「緑の濃いもの」「しっかりと小さい粒が固まっているもの」。一度刈り取っても葉の付け根から次々と脇芽が出てくるので、次から次へと収穫できます。
菜の花脇芽
露地栽培は自然との戦いです。水に弱い菜の花は、台風や長雨での湿害が大敵。水につかると成長が止まってしまうため、水につかないように畝を上げて水はけをよくします。あの茎の甘さと花蕾や葉のほろ苦さは、ハウス栽培では出せない露地栽培ならではの味ですから。

収穫した菜の花は、このようなパッケージで出荷されます。店頭で見かけたことありますか。
なばな
長さをそろえた菜の花を人形を包むようにくるくると丁寧に巻いていきます。「人形巻き」と言われ、包み紙から覗く菜の花の蕾の部分が、綺麗に揃っていてとても美しいです。店頭に並んでいると目を引きますね。
人形巻き
こちらの道具は人形巻きを行うときに使うものです。
人形巻き
包み紙をこのように置き、菜の花をのせ、11.5センチの長さに揃えてカット。200グラムの菜の花を丁寧に巻いていきます。ここまですべて手作業。ダンボール箱に20束が詰められます。
なばな
4キロの菜の花がぎっしりと綺麗に入っています。手間がかかっている分、形が揃っていて調理しやすいそう。これが安房の菜の花なのです。

菜の花の人気は、栄養価の高さにもあります。花の咲く直前の蕾の部分にたくさんの栄養がぎっしりと詰まっています。ビタミンやミネラルが豊富で、中でもビタミンA(ベータカロテン)、C、Eが緑黄色野菜の中でもトップクラス。抗酸化作用が期待できます。また、葉酸と食物繊維も多く、ビタミンCと合わせて美容の面でも健康の面でも女性に人気なのがわかります。

しかし、日本一の産地を守り続けるためには課題もあります。ここ安房地域でも生産者の高齢化比率が高く、年々出荷額が減ってきています。品質の良い菜の花を栽培し続けるためには努力も必要であり、いかに増産していくかが課題となっています。
菜の花
今回取材でお世話になった方々。お揃いのJA安房の帽子をかぶっています。左からJA安房野菜部会和田支部支部長の釼持隆信さん、野菜ソムリエコミュニティちば代表今井由紀子さん、館山の野菜ソムリエプロ安西理恵さんです。

さて、後編では絹枝さんの菜の花料理の数々をご紹介します。
まつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、アンチエイジングフードマイスターの栗原美由紀でした。

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