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静岡県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエの小櫛香穂です。
夜明け前のまだ暗いビニールハウス。足を踏み入れると一面に広がるみずみずしく爽やかな香りに包み込まれました。頭にライトを装着し、そのわずかな明かりを頼りに収穫しているのは、ここ静岡県久能地区から全国に先駆けて出荷が始まる葉ショウガ。今回は久能地区で葉ショウガを栽培する川島隆年さんに密着取材!早朝の収穫から丁寧な出荷作業の様子までをお届けします。
久能地区は駿河湾を臨む海沿いのエリアで、土地の傾斜を利用した石垣イチゴの栽培でも有名です。久能葉しょうがは例年3月上旬から7月中旬まで出荷が行われます。
外はまだ暗い午前5時半、少し肌寒い朝でした。ハウス内は暖房のおかげで室温は18度ほど。これからの季節、ハウス内は日中40度近くまで上がるため、早朝から作業を始め、6時頃には収穫を終える日々が続きます。
葉ショウガとは根茎が小さく、柔らかなうちに葉をつけたまま若採りしたショウガ。冬場に種生姜を植えつけ、春先から夏にかけて成長したものを収穫します。ピリッとしたマイルドな辛味と爽やかな香りが食欲をそそり、生のまま味噌をつけて食すのが定番です。
川島さんの栽培ハウスは二重被覆してあり、さらにハウス内の葉ショウガにもビニールシートをかぶせ、三重で温度と湿度を守り、生育に必要な条件を作り出しています。
使われてるのは半透明の厚手なビニールシート。これから日差しが強くなる時期には、葉が焼けてしまうのを防ぐために遮光シートが必要になるなど、生育の時期や段階に応じて細かく対応しながら栽培しています。
この日は、このように大きな束を16束も収穫。
例年出荷開始からGW前までは生産者グループ「久能葉しょうが委員会」内で収穫、出荷量を調整しています。
束ねた葉ショウガの葉を切り落とし、トラックへ運びます。
ハウスを出ると海岸線から朝日が昇り始めていました。トラックの荷台に葉ショウガを積み込んだら、出荷のための作業所へと移動です。
川島さんの自宅横にある作業場へ到着。
床一面にビニールシートを敷いた作業エリア。トラックの荷台から降ろした葉ショウガを並べます。他のスタッフが7時半に出勤するのを待ち、出荷作業に移ります。
作業開始まで少し時間があったので、近くにある川島さんの別のハウスも見せていただきました。葉ショウガのハウスは大きな三角屋根が目印。このあたりのイチゴハウスはドーム型なので遠目でもわかります。
扉を開けると若い黄緑色の葉が一面に。先ほどのハウスとは播種の時期をずらしているため、まだ膝下ほどの背丈です。朝もやが広がり、みずみずしい空気と爽やかな香りに包まれていました。
こちらが生産者の川島隆年さん(右)とJA静岡市南部営農経済センターの海野真司さん(左)
川島さんの所属する「久能葉しょうが委員会」は現在25軒の農家で構成されています。種生姜は各農家が栽培依頼先を確保しており、川島さんも近隣市町村で13軒ほどの農家に種生姜の栽培を委託しています。というのも久能地区は海岸沿いから傾斜のある場所で、広い農地が確保できないため、昔から種生姜については委託という形をとっているそう。
種の状態が葉ショウガの生育に大きく関わるため、質の高さが大切です。「久能葉しょうが」の品質を守るためにも依頼先の新規開拓は欠かせず、それが産地としての今後につながるのだと教えてくれました。
川島さんは毎日いくつものハウスの水やりにまわります。自動の散水設備もありますが、ハウスの中をくまなく見て回ることを欠かしません。生育が遅れてないかどうか、苗の状況を細かく確認しながら畑をくまなく歩いて回ります。
この取材前日に有機肥料を追加したため、「ここから1週間は特に注意が必要です」と川島さん。高温多湿な環境ゆえに注意が必要だそう。
それでも万が一、葉ショウガに多い病気の一つ「根茎腐敗病」が出れば、自動散水をやめ、その部分には水をかけないよう避けて、自ら水やりをして回る必要があるとのこと。根茎腐敗病は水を通じて広がるため、1箇所出たら広がらないように食い止めるべく、朝晩ハウスの端から端までを注意しながらチェックするそう。
また今シーズンの記録的な冬の寒さは静岡県も例外ではなく、例年2月上旬に行われる生育調査も今年は芽が全く出ていなかったことから、生育調査は2月中旬に延期され、初出荷も例年より1週間ほど遅くなりました。「毎年栽培をしていても毎回違う」と川島さんは話します。
次回のレポートでは、収穫後、どのようにして出荷されるのか、作業所での様子をお伝えします。
静岡県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエの小櫛香穂でした。