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福井県農園たやの挑戦!「福井30豪雪」からの復興へ

まつのベジフルサポーターレポート

福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代です。

連日猛暑日が続いています。これだけ暑いと忘れてしまいそうですが、今年の冬、福井では記録的な雪から大きな被害を受けたことをご記憶でしょうか。

平成30年2月4日から7日にかけて、連続的に雪が降り続き、6日16時までに平地で24時間に降った雪の量は約60センチ、福井市では、37年ぶりに130センチを超える降雪量になりました。
国道8号線では約1500台の車が立ち往生しました(写真提供 福井 災害情報)

短い時間に急激に多くの雪が降ったために、除雪が追い付かず、高速道路、国道8号線、JRなどの主要交通網が寸断されました。

食糧、燃料などの物流がストップし、スーパーでは、パンや野菜などが品薄状態になり、ガソリンが数量制限されたりと県民生活にも多くの影響が及びました。そんな中、福井県の農業も大きな被害を受けました。


例年は比較的温暖で降雪量の少ない、あわら市、坂井市、福井市を中心に約1000棟もの農業用ハウスが倒壊。

ハウスで育成中の野菜はもちろん、春以降の栽培計画にも大きな影響を与え、被災された農家さんに、大きな負担がかかることになりました。現在でも、再建の目処が立たず、規模の縮小や廃業といった選択をされる農家さんもおられると聞きます。
今回、雪による大きな被害を受けられた「農園たや」(以下敬称略)の代表、田谷徹さん(写真中央)に「福井30豪雪」が農業経営に与えた影響と再建に向けた動きについて、お話をお聞きしました。

農園たやへは、昨年11月に松野社長の視察で伺いました。視察の記録はこちらです。視察の時は、丁度台風21号による大きな被害を受けられた直後でした。その被害も記憶に新しい中の今年2月の豪雪被害、農園たやでは、37棟あるハウスのうち13棟が倒壊しました。田谷さんのブログ(30豪雪)にこの時の農園の状況が詳しく書かれています。

例年とは違う雪の降り方、道路の除雪が進まず、ハウスに辿り着くことも出来ない中、
守るべきハウスの優先順位を決め、農園で働く人たちが力を合わせて除雪に立ち向かい、多くの被害を受けながらも、力を尽くして、ハウスを守られたことが記されています。
潰れたハウスから出荷されたロマネスコ
田谷さんは、連日の除雪作業で疲れている中、報道各社からの取材や国会、県会、市会議員、大学、研究機関などからの視察にも積極的に対応されました。これは、雪の被害を少しでも全国に知ってもらい、一日でも早く福井への支援に繋げたい、雪に負けないより強度のあるハウス建築の研究資料になればとの思いから、敢えて受けられた取材や視察でした。今回、私の取材に応えてくださったのも、今だから知ってもらいたい災害復興への現実と思いを伝えるためだと思います。
2月から半年近く経つ現在でも農園たやで再建できたハウスは、わずかに2棟のみ、多品目作っていた作物も昨年の2割ほどは栽培することができず、まだまだ復興には程遠い状態です。

国、県、福井市など行政からの支援は未だ決まっていませんが、農園側の負担はハウスを撤去し再建する費用の半分ほどになる予定で、大きな負担になることが予想できます。新しく建てるハウスは、面積、強度など、ある一定の条件をクリアしたもののみが、支援の対象になります。7月9日現在、まだ具体的な支援は決まっていません。

しかし、田谷さんは、立ち止まることなく一緒に働く仲間たちと共に前に進まれています。11棟のハウスはまだ再建されていませんが、生産量としては、ある程度カバーできているそうです。それには、こんな努力がありました。

1、情報の共有と全体を見る目を持つ
農園たやでは、栽培品種ごとに担当制になっています。以前は、それぞれが自分の担当の野菜を中心に考え栽培していましたが、豪雪の後は全員が全体を見ながらカレンダーを頭に入れ、動くようになりました。他の作物を優先する必要があると判断したときは、そちらを先に。そしてその作業を手伝う。全員が情報の共有をし、全体を見るように意識を変えたことで、生産性が上がりました。
主力のベビーリーフは、昨年並みに回復してきています。

2、株式会社になる
農園たやは、平成30年2月1日に株式会社になりました。これは、台風や豪雪の前から進められていた話です。一般的に農業は先祖からの土地を受け継ぐことから、家族間で継承することが多いのですが、より強い経営にするために農園たやは、株式会社になりました。今後は、会社の理念を引き継ぎ発展できる人が、経営を受け継ぐことになります。

被害を受けた農家さんの中には、高齢で、しかも後継者がいないことから、高額なハウスの再建費用を掛けられないという農家さんが少なからずおられるそうです。農園たやの将来を見据えた法人化は、福井での新しいモデルケースになりそうです。

3、多くの支援
雪による被害を受けたことで、日本全国やJICAを通して農業研修生を受け入れているインドネシアから励ましの手紙やお見舞金、食べ物などを頂きました。温かい言葉と支援が大きな心の支えになりました。
インドネシアからの支援品

4、おまかせ便の再開
品目が揃わず、豪雪から停止していたおまかせ便を再開しました。全国の人に自分たちが作った野菜を届けていきます。

5、さぼてん句会
田谷さんは、3年前から俳句を始め、福井雪解会に所属されています。
ラジオ番組「一句一遊」への熱心な投句がきっかけで、テレビでもお馴染みの夏井いつき先生が4月に農園にお見舞いに来られました。写真は、農園で働く皆さんと夏井先生です。五・七・五の十七文字は、思いを伝えやすいと感じ、農園たやでは、時折、「さぼてん句会」を開催しています。投句した人たちから選ばれた句には、賞金が当たることから、参加する人たちのモチベーションも上がり、前回の会には、投句31句の中からインドネシアからの研修生デデさんの句が見事一席に選ばれました。働く皆さんのコミュニケーションとしても俳句はとても役に立っているそうです。

まだ支援の目処も立たない中、夏の野菜の播種。
育てた野菜を丁寧に出荷します。

強い日差しから野菜を守るために遮光シートをハウスに掛けていきます。

今回の豪雪被害では、大きな借金を背負うことになり、精神的にも、経営的にも辛い時も多かったはずですが、多くの方の支援と一緒に働く仲間たちとの繋がりを強めることで、農園たやは進化を遂げられています。まだまだ再建への道半ばですが、その経験を活かし、発展させていこうとしている農園たやの今後に期待していきたいです。

※お問い合わせ、おまかせ便の注文はこちらへ

農園たやのホームぺージ

ここ数年、日本全国で、地震、豪雨、豪雪といった自然災害による農林業被害が続いています。多くの被災された方たちは、たくさんの問題、悩みを抱えながら、まだまだ復興の途中です。被災直後だけではなく、長い期間をかけてのご支援、応援をぜひお願い致します。

福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代でした。

【写真提供】田谷徹さん、佐藤高央さん

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