まつのベジタブルガーデン

福井県甘酸っぱさと、優しい香りで愛される「東浦みかん」

まつのベジフルサポーターレポート

福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代です。
今回は、敦賀市東浦地区で栽培されている「東浦みかん」をご紹介します。敦賀市東浦地区は、かつては、温州みかん栽培の北限と言われていました。その歴史は古く、江戸時代まで遡ります。阿曽生まれの金井源兵衛さん(1785年生まれ)がこの地域の特産品を作ろうと、大阪や和歌山から買ったみかんの苗木を、東浦の農家に無償で配ったことが始まりと言われています。

敦賀湾を望む海沿いの地域は、水はけがよい土地と雪が降ってもすぐに溶けてしまう温暖な気候がみかん栽培に適していました。明治時代には、敦賀港からロシアのウラジオストックへ輸出される産品の出荷量の上位に東浦みかんがあったそうです。しかし、ロシア革命や第一次世界大戦によって、輸出が減ります。四国や和歌山といった温暖な産地では早生みかんが生産され、甘くなることが遅い東浦みかんは徐々に栽培面積が減っていきました。


昭和46年、農家さんたちが相談し、みかん狩りで東浦みかんを楽しんでいただく観光みかん園という道が選ばれました。現在でも東浦では、みかん狩りのみで販売はしていません。
東浦みかん特産化組合お揃いのジャンバー

私も子供のころ、東浦でみかん狩りをした記憶があります。あの頃の東浦みかんは、とても酸っぱかったように思うのですが現在では農家さんの努力により、適度に酸味があり、甘酸っぱくて美味しいみかんを楽しむことができます。今回、敦賀市元比田の下野みかん園、下野寿栄子さんを訪ねてきました。敦賀湾
日本海を見下ろせる山の上に下野さんのみかん園はあります。
下野さんは、笑顔がとても素敵な方。85歳というお歳をお聞きしてびっくりしました。お肌もつやつやで、
しわも無く、とても元気でお若いです。
200本あるみかんの木は、たくさん成る表年と成らない裏年があることを考慮して、100本ずつが毎年交互に成るように育てています。

初夏に咲くみかんの花


虫たちは、みかんの葉が美味しいことを知っていて、アゲハ蝶が卵を産みつけます。エコファーマーの認定を受け減農薬栽培の東浦みかん。下野さんは、農薬を使わず、虫は手で一匹ずつ取り除きます。
下野さんのみかんの木は、大人だとしゃがまないと採れないくらい低くなっています。みかん狩りに来る小さな子供たちが採りやすいように、敢えて木が大きくならないようにしているのです。
みかんの採り方を説明する絵は、子供たちにもわかりやすいように、保育士をしている娘さんが描いてくれました。この絵を見せると、子供たちは丁寧にみかんを扱ってくれるそうです。
農園を訪れる人たちを迎える横断幕も下野さんがミシンで縫い付けたお手製です。現在は週末だけ息子さんが手伝いに来られますが、ご主人が亡くなられてからずっと一人でみかん園を守られてきた下野さん。みかんを我が子のように大切に思われています。例年は10月20日から11月30日までの間、9軒のみかん園でみかん狩りを楽しむことができます。

しかし、今年はこの冬の大雪の時に吹いた潮風の影響で、多くのみかんの葉が茶色く枯れてしまいました。今までに経験したこともない不作に見舞われ、防風林のお陰で塩害を逃れた下野さんともう1軒の農家さんも含め、すべてのみかん狩りが11月末を待たずに終了してしまいました(平成30年11月12日現在)毎年たくさんの観光客、遠足の子供たちを楽しませてくれるみかん狩りが終わってしまい、残念でなりません。
私が下野さんにお話をお聞きしたときに頂いたみかんは、大きく甘酸っぱくて、懐かしい味がするみかんでした。下野さんは、これからも東浦みかんを楽しみに訪れるたくさんの子供たち・お客さまたちを笑顔にできるように100歳まで元気にみかんを育てられるそうです。

東浦みかんの生産量は限られていますが、みかん狩りのみで楽しむだけではありません。実は東浦みかんから様々な商品が開発されています。その開発者のおひとり、Relation Kaori Labo(りらしおんかおりらぼ)のかつだひとよさんは、東浦みかんの果皮から精油を抽出したり、果皮をブレンドしてハーブティーを作られています。

かつださんは、アロマテラピー、ハーブによって、長年人を癒すことを仕事にしてきました。4年前に、敦賀市新商品チャレンジ事業の話があった時にふと思いついたのが、東浦みかんの果皮を使った香りの商品を作ることでした。翌年の春には、みかんの果皮から抽出した精油を使用したブレンドオイルと果皮をブレンドしたハーブティーが作られました。様々な試行錯誤を経て現在、アロマスプレー4種、ハーブティー4種が商品化されています。

精油は、下野みかん園さんのご協力でみかん狩りで出たみかんの果皮から作られます。みかんを食べるときに残す人もいる袋の部分や果実、これらが残っていると果皮が腐ってしまうので、きれいな果皮の部分だけを分けて取っておいてくださるそうです。
1.みかんの果皮の粉砕
2.煮出し
3.気化
4.液化(水蒸気蒸留法)

という地道な作業工程を経て貴重な精油が抽出されます。およそ6kg程の果皮から20〜30ml程度の精油しか採れないくらい、とても貴重なものです。

「かおりらぼ」の名前の通り、作業風景はまるで理科の実験室のようです。みかん狩りの季節は大量のみかんの果皮を煮出す作業が夜通し行われるそうです。
かつださんの商品は、熟した果皮だけではなく、間引きのために摘果したみかんも使います。初夏の青い未熟なみかんと秋の完熟したみかん、2種類のみかんの香りを楽しむことが出来るのです。生産者さんが大切に育てられた東浦みかんが香りになって多くの人々の心を癒し、暮らしを豊かにしてくれる。笑顔になる人を増やしていくことが、かつださんの願いです。

商品はすべて東浦みかんの故郷、敦賀の風景をイメージしてブレンドされています。
アロマスプレー


敦賀の木々や神社の静けさをイメージした【敦賀の杜シリーズ】「花換の頬染め」「気比の兆し」(写真はローズヒップベースの「花換の頬染め」のハーブティー)


敦賀の海辺の風景をイメージした【敦賀の水辺シリーズ】「水面の灯り」「水島の渚」(写真は緑茶ベースの「水島の渚」のハーブティー)

精油を使ったアロマスプレーと果皮を使ったハーブティーがそれぞれ同じ名前であります。

RelationKaoriLabo  https://www.relation358.jp/

オンラインショップ https://relationkaorilabo.stores.jp/

東浦みかんは、この他にも様々な商品が販売されています。
「敦賀ふわっセ 生クリーム」「敦賀ふわっセ カスタード」石臼挽きの福井県産コシヒカリ100%使用のスポンジで東浦みかんのゼリーをクリームとともに挟んでいます。みかんの爽やかさと優しい甘さのクリームのハーモニーが絶妙です。

小堀菓舗 https://www.rakuten.co.jp/koborikaho/


麦芽と東浦みかんの果汁をブレンドしたビール「914BEER」(右)摘果の青みかん果汁と完熟みかん果汁、敦賀の昆布を使用した「914ぽん酢」(左)(914は敦賀市の郵便番号と敦賀市で一番高い野坂山の標高)   

 ケセラセラーみやもと http://www.miyamoto-sake.com/

敦賀の人たちが大切に育て、こよなく愛してきた東浦みかん、これからは、みかん狩りだけではなく、様々な商品を通して、多くの人々を癒し、笑顔にしてくれることでしょう。

福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代でした。

(写真提供)かつだひとよさん

 

 

 

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