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山々の木々が色づき、秋が深まって参りました。
段々と寒くなり、雪の便りももうすぐそこまで来ているように思います。
福井県のまつのべジフルサポーター
野菜ソムリエプロ
だしソムリエ協会認定講師の
水嶋昭代です。
今回は、福井県民がこよなく愛する「蕎麦」のお話を致します。
11月に入ると、県内の蕎麦店では「新そば」の販売が始まります。
福井の蕎麦といえば、【おろし蕎麦】
主に、十割や二八で打った太めの冷たい蕎麦に大根おろしとそばつゆ、かつお節、ねぎをかけて食べることが定番です。
昭和22年、行幸された昭和天皇が、お気に召され、「あの越前のそば」と言われたことから、おろし蕎麦に「越前そば」の名前が付きました。
福井の蕎麦は、殻ごと挽いた「ひきぐるみ」を使うことが多いため、黒くて、太くて、固め。
つるっと喉越しで味わうのではなく、噛んで蕎麦の甘みと香りを感じます。
県内に400店舗以上はあるといわれる蕎麦店は、手打ちの店が多く、 その店独自のこだわりの蕎麦が食べられます。
福井の蕎麦の作付面積、収穫量は共に全国第4位 (平成27年農林水産省統計調査より)
全国でも有数の蕎麦産地なのです。 福井では、大野、丸岡、美山などその土地の気候や風土に合った在来品種の蕎麦が何百年も栽培され続けています。
全国的に、大粒で収量の多い品種が栽培されている中、福井では、県内全域で在来品種の蕎麦だけが栽培されています。
自分の畑で採れた蕎麦を毎年撒いて、その土地ならではの蕎麦が今も作り続けられているのです。
8月の旧盆の頃に播種された蕎麦は、約90日と短い期間で収穫されます。
蕎麦は連作、過湿を嫌うことから、栽培には、とても気を遣います。
種は筋蒔きにし、圃場の溝切りをして、水捌けをよくします。
播種から播30日余りで、一面に白い花が咲きます。 蕎麦の花は可憐でとても美しいのですが大変臭い匂いを放ちます。
蕎麦の花には、長柱花と短柱花があります。
長柱花・・・めしべが長くおしべが短い
短柱花・・・めしべが短くおしべが長い
蕎麦は、自分の花の中では受粉ができず 長柱花は短柱花、短柱花は長柱花の花粉ではないと受粉しない「他花受粉植物」です。
受粉のためには、ミツバチなどの訪花昆虫の力が必要なのです。
結花率が低い蕎麦は、その強い匂いで、受粉を促してくれる虫を誘うそうです
蕎麦は密集して生育すると共に、他の植物の成長を抑制するアレロパシー物質が根から出ていると言われ、、雑草が生える心配がなく、農薬を使う必要がありません。
また、吸肥力の強い植物であることから、やせ地でも栽培しやすく、かえって、倒伏することを防ぐために、福井では、施肥も行われないそうです。
自然栽培で育てられた蕎麦は、小粒ですが、実が詰まっていて、とても甘みがあります。
10月下旬には、蕎麦の実が熟します。 近年ファンの増えている青みがかった早刈り蕎麦は、11月初旬に。黒く熟した蕎麦は11月中旬にかけて刈り取られます。
蕎麦や米などを栽培されているあわら市の長谷川農園、長谷川太佑さんの圃場で、蕎麦の収穫を見せていただきました。
長谷川さんは、9年前に大阪から来られ、奥様のご実家にて就農されたそうです。
蕎麦の栽培、収穫には、雨が大敵、今年は、秋の長雨に悩まされたそうです。
収穫後は、できるだけ早い乾燥が必要で、ご自身の農園の大規模な乾燥施設を使い、じっくりと2日間かけて、乾燥します。
在来品種の蕎麦は、1aあたりの収量は、米の2割ほどととても少ないのですが、粘りが強く、風味が良いために、福井の蕎麦をと求められる蕎麦屋さんが多いそうです。
また、福井の蕎麦について詳しい(株)カガセイフンの6代目社長、加賀健太郎さんに、お聞きしました。
製粉を始められて130年のこちらの会社では、代々受け継がれてきた福井県小清水産の石臼で丁寧に蕎麦を挽いています。
短時間に大量に製粉する機械とは違い、1時間にわずか1㎏しか製粉できないそうです。
石臼でゆっくりと挽かれた蕎麦は、挽くと共に、練られる作用があるため、粒子が丸くなり、滑らかでしっとりと、風味の良い蕎麦粉になります。
加賀さんは、美味しい蕎麦を作るために生育状況を生産農家さんから密に聞き、圃場まで自ら赴いて、刈り取り時期を決められているそうです。
また、休日には、各地に蕎麦を食べに行かれるくらいの根っからの蕎麦好きでいらっしゃいます。 福井の蕎麦を支えているのは、農家、製粉会社、蕎麦屋、そして、蕎麦をこよなく愛する福井の人たちです。
その一般の蕎麦ファンの中には、プロ顔負けの蕎麦打ち名人が居ます。
1985年、蕎麦打ちが体験できるそば道場が全国で初めて福井に作られました。
そば道場は、県内各地にあり、こちらで腕を磨いた人が蕎麦屋を開業されたり家で蕎麦を打って楽しまれています。
また、11月の終わりごろには、県内各地で新そば祭りが開催され、蕎麦打ちの名人戦で腕を競われています。
私も、二年ぶりに蕎麦打ち体験に行ってきました。
道場では、水回しから、捏ね、伸ばし、切りまで、丁寧に教えてもらえます。
少し、太めで不格好な蕎麦ですが、畑から大根とネギを採り、昆布と混合節で丁寧にだしをひいて、手作りのおろし蕎麦を作りました。
新そばの香りと大根おろしのぴりっとした辛み、だしの風味が相まって、とてもおいしかったです。
これからの宴会シーズン、福井では食事の最後の〆には、たいてい冷たいおろし蕎麦が出てきます。 もたれた胃もさっぱりとしてくれます。
「蕎麦団子ぜんざい 蕎麦クッキー添え」
殻ごと挽いた蕎麦粉を豆腐で捏ね、茹でてぜんざいにしました。
蕎麦粉と砂糖、卵、牛乳で作ったどこか懐かしいクッキーは素朴な味がします。
「蕎麦粉のガレット」
砂糖を入れず蕎麦粉と塩と卵と牛乳で焼いたガレットには、卵とチーズを入れて焼き、季節の野菜を添えて、休日のブランチに。
蕎麦のでんぷんは、消化は早いのですが、ゆっくり吸収する難消化性でんぷんで、血糖値が上がりにくいそうです。
「ルチン」というポリフェノールは、抗酸化作用や、血圧降下作用があるといわれます。
炭水化物やたんぱく質をエネルギーに変えるビタミンB1や食物繊維も豊富です。
蕎麦は、体にもとても優しい食べ物、蕎麦料理を食べて、ダイエットに挑戦した人たちもいるそうですよ。
蕎麦を愛する福井人として、少し、熱く語ってしまいました。 長々とありがとうございました。
福井のまつのベジフルサポーター
野菜ソムリエプロ
だしソムリエ協会認定講師の
水嶋昭代でした。