皆さまこんにちは。兵庫県まつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロの河内郁子です。
今回は兵庫県に春を告げる味、「いかなごのくぎ煮」をご紹介します。いかなごは日本各地に生息するスズキ系イカナゴ属の魚。兵庫県では毎年2月下旬から3月上旬に漁が解禁となり、4月上旬まで漁がおこなわれます。餌となるプランクトンを豊富に蓄えている瀬戸内を漁場としており、兵庫県のいかなご漁獲量は全国トップクラスを誇ります。「いかなご」の名前の由来とは?その昔、「いかなる魚の子なりや」と、細長くなんの魚の子なのかわからなかったことから、その名がついたそうです。いかなごは主に関西での呼び名で、いかなご漁解禁の頃の約2センチ程度の幼魚は新子(しんこ)、25センチ前後の成魚になると古背(ふるせ)と呼ばれます。日本各地で「コウナゴ」、「オオナゴ」、「カナギ」、「メロウド」など、その呼び名は様々です。
いかなごは醤油とザラメ、生姜で佃煮にして、釘のように見えることから「くぎ煮」と呼ばれます。阪神、播磨、淡路地域を中心に作られてきた郷土料理です。各家庭で入れる材料もそれぞれで水あめ、実さんしょう、ゆず皮をいれたりとバリエーション豊か。くぎ煮をご近所でおすそ分けしたり、毎年楽しみに待つ各地のお友達や親せきに発送したりします。いかなご漁が解禁になると町のあちらこちらから、いかなごを炊く甘辛い醤油の香りが漂い、春の訪れを知らせる風物詩となっています。
今年は3月7日がいかなご漁の解禁日。箱いっぱいのいかなごが市場に出回りました。毎年解禁日にはいかなごを買い求める人たちで行列ができます。
いかなごのくぎ煮をつくるには鮮度が第一。買ってからすぐに炊くのが基本で、鮮度が落ちると綺麗なくぎ煮ができません。それでは、我が家のいかなごのくぎ煮の作り方をご紹介します。
<いかなごのくぎ煮の作り方>
材料
いかなご、濃口醤油、中ザラメ、酒、みりん、生姜(皮付き細きり)
作り方
大きな鍋にいかなご以外のすべての調味料を入れ火をつけます。
ザラメがとけるまでわかし、洗って水切りしたいかなごを一気にいれます。いかなごはとてもデリケートな魚で、洗う際も触らずさっと洗うことが大切なポイントです。
アルミ箔をおとし蓋のかわりに使い、強火で炊いていきます。途中、吹きこぼれないように火加減を調整します。
泡が落ち着いてきたらアルミ箔をとり、焦がさないように煮つめていきます。いかなごのくぎ煮を作るポイントは、途中絶対さわらないこと。箸や木べらなどでさわると頭の部分がとれてしまい綺麗に仕上がりません。
煮汁が少なくなったら火を止め、2回ほど鍋をふっていかなごをかえします。
バットに平たくひろげ冷ましたら、いかなごのくぎ煮のできあがり。
炊きたてのご飯にのせていただくくぎ煮は格別。作りたてよりも、しばらくたって味がなじんできてからの方が美味しくいただけます。
木の芽をのせて、おつまみにも。
くぎ煮入り卵焼き
いかなごのくぎ煮は卵と良く合い、卵焼きに入れると良いアクセントになり美味しくいただけます。お弁当のおかずにもぴったり。
いかなご(しんこ)の釜揚げ
いかなごはくぎ煮の他に釜揚げでいただくのも定番。いかなごのうま味を存分にあじわえます。
いかなごと菜の花のペンネ
いかなごのアレンジメニューで旬の菜の花と自家製セミドライトマトと合わせたペンネに。
いかなごのアヒージョ
ニンニクとオリーブオイルで具材を煮込むスペイン料理のアヒージョをいかなごで作ってみました。オイルで煮込むといかなごのうま味が増して、ワインとの相性も良い一品に。
いかなごは年によって漁獲量も違います。今年は特に不漁のため高騰が続いており、町に漂うくぎ煮の香りが例年より少ないように感じられます。また、近年はくぎ煮を作る家庭も少なくなってきているようです。親から子、孫や嫁に代々伝わる春を告げる「いかなごのくぎ煮」は、これからも守り続けていきたい大切な郷土料理です。
兵庫県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロの河内郁子でした。