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三重県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの小畑貴子です。
「日本書紀」で「美(うま)し国」と記されていたという三重県。今回はこの「美し国」に古くから伝わる伝統野菜「伊勢芋」をご紹介します。
伊勢神宮から車で30分、多気郡多気町で栽培されている伊勢芋は300年以上前に伝わったヤマノイモの一種で、親しみのある棒状の形ではなく、ゴツゴツしたボール状で巨大なジャガイモのような風貌です。
一見地味で華やかさはない伊勢芋ですが、切ってみるとその断面は真っ白なきめ細やかな果肉で、その白い切口は1日経っても変色しにくいのが特徴です。
収穫が始まったばかりの伊勢芋を長年作られている長井孝代さんのご案内で、多気郡農業協同組合伊勢いも部会長の村田駿爾さんの畑を訪ねました。 夏は青々としている畑ですが、収穫を迎えた今は葉が黄変し、枯れてきています。このように枯れてきたら収穫の合図。収穫作業は10月中旬から11月まで続きます。
種芋の植え付けは3〜4月頃、収穫した伊勢芋の3〜4割を種芋として残したものを植えますが、発芽率や生産率が低いことから、改めて伝統野菜の貴重さを感じます。 芽が何本か出たうちの元気な1本を残す芽かき作業は、一番暑さが厳しい時期に行うので大変です。いろいろな苦労がありながらも、夫婦で丹精込めて育ててきた伊勢芋の収穫は、昔ながらの手作業でクワで丁寧に畝から掘り起こしていきます。
大きさも形もさまざまな伊勢芋がずらりと顔を出しました。
掘り起こされたばかりの伊勢芋をよく見るとツルの根元に土の固まりに見える部分があり、それが親芋(種芋)になります。伊勢芋は親芋を上に抱くように子芋が生育していくので「孝行芋」とも言われ、祝い事の縁起ものとされ、贈答品としても喜ばれるそう。
こんな形の丸々した伊勢芋ができると嬉しいそう。 伊勢芋は湿気を嫌うため、同じ畑でも畝によって出来ばえが違います。3本の畝から掘り出された伊勢芋は畝によって大きさや収量に大きな差があり、その違いが一目瞭然で驚きました。
多気町の津田地区は櫛田川流域にあり、土壌は水はけが良く、伊勢芋栽培に適しています。「他の土地に持っていって育てても美味しいものはできないんだ」村田さんと長井さんが口を揃えて話します。この土地に誇りを持って、ここでしかできない伝統野菜を育てていることが伝わってきます。
独特の強い粘りとすりおろしても白さが変わらない伊勢芋は、日本料理店や和菓子店で高級食材として扱われてきました。和菓子では薯蕷饅頭の皮などに使われます。三重に住んでいても私が住んでる地域では売っているのを見かけたことはありませんが、地元ではスーパーでも購入できるそう。
「畑のうなぎ」と言われるほど滋養のある自然食として長年愛されてきた伊勢芋が、もっと身近な野菜となり、後世に受け継がれていくことを強く願います。
さて、貴重な新物の伊勢芋を分けていただき、早速味わってみました。伊勢芋は長芋に比べると水分が2割ほど少ないので、皮をむいてすりおろせば、つなぎなしで指でつまめるほど粘りが強く、濃縮された旨味があり、クリーミーな餅のような食感が楽しめます。
こんなモチモチした食感をそのままを楽しむにはやまかけが一番! 伊勢名物の鉄板コラボをご紹介します。
コシがあるうどんは美味しいですよね。私もコシのあるうどんが大好きです。でも、伊勢うどんは1時間ほど茹でるのでコシのない極太麺のモチモチうどんです。それにたまり醤油に出汁を加えた黒いタレをかけていただきます。
伊勢芋のすりおろしは出汁でのばしてとろろにしますが、今回は出汁は入れずにそのままをトッピング。 モチモチ麺を包み込む伊勢芋の包容力!他の芋じゃ味わえないやまかけうどんになりました。 一度食べたらすっかり魅了されてしまう三重の宝、伊勢芋の強い粘りと美味しさをぜひ体感してください。
三重県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの小畑貴子でした。