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佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧です。
今回、絶滅が危惧されていた有明海の海の幸「あげまき」と呼ばれる二枚貝をご紹介します。
有明海は佐賀県の南部にあり、日本一の干満の差(最大6m)が有名な干潟(沿岸や河口で、潮が引いて泥地や砂泥地が現れるところ)です。
干満の大きさや流入河川の多さなどにより生まれた肥沃な土には海の幸がたっぷり。むつごろう、はぜくち、わらすぼといったはぜの仲間や、あげまき(まて貝の仲間)、うみたけ(にお貝の仲間)など、干潟独特の魚貝が生息しています。干潮時にむつごろうが飛び跳ねる光景は有明海の夏の風物詩です。
有明海でとれる魚介類を地元の人は「前海(まえうみ)もの」と呼び、あげまき貝は庶民の味として親しまれていました。しかし、1988年に776トンを漁獲して以降、干潟広域で発生した原因不明のあげまき貝の大量死により、1992年と1993年は1トン、1994年以降は漁獲量がゼロとなり、全く採れなくなりました(佐賀県有明漁業協同組合の資料より)。
1996年から資源保護のため禁漁とし、佐賀県有明水産振興センターは、人工的に卵から7~8ミリサイズの稚貝になるまで育て、2009年から毎年冬に稚貝の大量放流(100~200万)をしています。それでも沖合の生息数の調査ではなかなか増えずに伸び悩んでいましたが、ついに2016年、例年の生息数の10倍に急増していることがわかりました。
そこで、今年は6月の15日間、漁獲を行う者(6名)や漁獲区域を限定して、一日60キロを目処にあげまき漁を解禁しました。
あげまき貝が獲れなくなって22年…懐かしの味を求めて、JF佐賀有明海直売所「まえうみ」に行列ができるほどに注目されていました。私も有明海の幸「あげまき貝」の味が気になり、開店前から並んで買い求めました。
開店と同時に人がなだれ込み、大きいサイズ(7cm)の「あげまき貝」に一直線です!
あっという間に大きいサイズのものは完売でした。
この日は大きいサイズ(7cm)が23パック、小さいサイズ(5cm)が54パック入荷されていましたが、売り切れてしまいました。地元の方々の懐かしい味に対する熱意に驚かされました。
「小学生のころ干潟で採ってきよった」や「みそ汁、煮つけ、バター焼き、なんでん食べよった。よくみそ汁にしよったけど、せっかく30年ぶりに食べるからみそ汁にはもったいなか」、「あさりのごと(様な)感じでいっぱいあったけんねぇ」など、ご年配の方々の言葉から30年前は「あげまき貝」が身近にあったことがわかりました。
家に持ち帰った「あげまき貝」、早速塩水に浸すと元気を取り戻したように2本の水管を伸ばし始めました。水管は思ったよりも長く3~4センチあります。
「あげまき貝」は細長い形をしており幅は約1.5センチ、殻は薄くて黄白色と薄茶色が混ざった色合いです。1年で約4~5センチ大きくなり親貝に成長します。「揚巻(あげまき)」とは聖徳太子が耳の横で左右に髪を束ねた髪型であり、その形が似ていることから名付けられたそうです。中身が長い胴に短い脚が2本ついた人のような形をしているので「兵隊貝」とも言われたり、「チンタイガイ」という呼び名もあります。
酒蒸しにして醤油で味わいました。大きなあさりに似た肉厚な食感と味わいで、磯の香りは強くなく上品な風味。地元の人は「塩をかけて食べるのが一番だ」と言います。酢味噌和えやみそ汁、煮つけなど、日常食としても行事食としても昭和の時代に県民に親しまれてきた「あげまき貝」を味わうことができ、とても嬉しかったです。来年以降ももっと漁獲量が増え、佐賀県の特産物として定着してほしいものです。
今期最後の販売は6月29日(金曜)から7月1日(日曜)までとなっております。
ちなみに、直売所「まえうみ」は有明海漁協が運営しており、有明海や玄海で獲れた新鮮な海産物を販売しています。鮮魚はもちろん有明産の佐賀海苔販売コーナーが充実していて、有明産の海苔を買い求める方が多く訪れます。
むつごろうのかば焼きといった貴重な海産物の加工品も多数あります。
特に目を引くのは、こちらの「わらすぼ」の干物。
有明海の干潟の泥の中に生息し、うなぎのような形をしていますが、ハゼの仲間です(下の写真2枚は佐賀県立宇宙科学館内の干潟で生体展示されているわらすぼ)。
目は退化して凹み、牙があり獰猛な魚です。
その容姿から「エイリアン」と愛称が付けられ商品化されています。
また、有明産の海苔を使った「佐賀海苔ソフト」は、海藻のフレッシュな香りが漂うまろやかな味わいです。有明海直売所「まえうみ」の名物です。
農産物だけでなく、海産物も豊富な佐賀県、有明海の海の幸をご紹介しました。
佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧でした。