まつのベジタブルガーデン

福井県GI登録が弾みに!種を守り続けたい山内かぶら

伝統野菜・食文化

今年も早いもので、あとわずか。
新しい年に向かってカウントダウンが始まっています。
やり残したことはありませんか?

福井県の野菜ソムリエプロ
だしソムリエ協会認定講師の
水嶋昭代です。

今回は、今年9月にGI「地理的表示保護制度」の認定を受けた若狭町山内の伝統野菜「山内かぶら」をご紹介いたします。

【GI制度とは?】 地域固有の気候風土や伝統製法と結びついた農産品や食品の名称を、知的財産として保護する制度。

GIの認定を受けることによって、その産物のブランドを守ることになります。

 

GI制度登録のメリット

①国のお墨付きが与えられることで、産品の品質が保証され、価格の安定や 向上が見込まれる。

②品質を守るものだけが市場に流通する 。

③行政が取り締まることで、訴訟などの負担なく、ブランドが守られる。

④GIマークが付いているものだけが、真の産物であることが証明され、海外への不正流失などを防ぐことができる。

この制度ができるきっかけは、シャインマスカットなどが海外で無断繁殖されていたことでした。

日本の大切な産物を守るために、行政が立ち上がったのです。

この制度は、平成27年より始まり、平成28年10月の時点で、夕張メロン、神戸ビーフ、三輪素麺など21品目が認定登録されています。

福井からは、鯖江市の「吉川なす

小浜市の「谷田部ねぎ」も認定、登録 されています。

これらの産物には、GIのマークが 付けられ、流通されます。

山内かぶらでも、このGIの登録を おこなうことによって、品質が 認められると共に、注目され、 東京や大阪などからも、たくさんの 問合せや注文が入っているとのことです。

今回、「山内かぶらちゃんの会」代表の 飛永悦子さんにお話をお聞きました。

穏やかで優しい笑顔の素敵な方です。

GIの登録を受けたことによって、 取材や問い合わらせがとても多いそう ですが、飛永さんは、GIを取って、 とても良かったと言われています。

飛永さんと山内かぶらの出会いは、 山内に嫁いで来られた昭和38年に なります。

山内かぶらがいつごろから栽培されて いたのかは、不明ですが、 大正5年の鳥羽村誌には、山内蕪菁が 栽培されていた記録があり、 明治のころから100年以上栽培され 続けていることは、間違いないようです 。

飛永さんの家では、当時はお姑さんが 大切に育てておられました。 お盆になると、春に採れた種を 知人のところへ配ることが、 飛永さんの役目でした。

 

この蕪は、山内の土地以外では、上手く 育たないのですが、お姑さんは、 山内かぶらを守りたい思いから、 種を渡され続けたのでしょうか。

生産者の高齢化から、 昭和62年には、福井県農業試験場に 種を預け、一旦栽培が途絶えました。 平成8年、山内かぶらの大切さに 気が付かれた飛永さんたち数名が、 再び栽培を始めました。

平成23年に、7名で 「山内かぶらちゃんの会」を発足。

現在では、新しい作り手さんも含めて 10数名で栽培しています。

仲間の多くは、70代から80代、 新人さんには、畑の土づくりから、 栽培の方法までを丁寧に指導しています 。

山内かぶらの特徴は、円錐状で、表面に えくぼがあり、たくさんのひげ根が 生えています。

実も葉もおみそ汁にするとおいしく、 煮崩れしにくいことが特徴です。

採れたてを切って食べてみると、 真ん中部分は甘いのですが、 皮に向かうほど固く、ピリッと辛みが あります。

GIの登録には、県の振興局の方が アドバイスと指導を。 

 

商品のタグやキャラクターは、若狭町の 産業課の方が作ってくださいました。 

飛永さんの倉庫に描かれた大きな絵も 近所の方が描いてくださったそうです。

山内かぶらを作る方たちのお人柄が たくさんの支援に繋がっているのだと 思います。

飛永さんは、注文が入ると、グループの 人たちみんなに平等になるように、 蕪を出してもらいます。

漬物などの加工品も、みんなで作ります 一部は、乾燥したりして保存し、 イベントなどで、餃子やコロッケにして 振舞われます。

ところで、皆さん「かぶらライン」を ご存じですか?

かぶらラインは、福井-滋賀-愛知を 通っているといわれ、 これを境に「西洋型」と「日本型」に 概ね系統が分かれます。

丁度、かぶらラインの通る福井には、 二つの系統の蕪が生育されています。

西洋型」原産のアフガニスタンから  伝わった寒さに強い品種。  葉がギザギザしている。  東日本を中心に栽培される。  

金沢青かぶ、金町小かぶなど。

日本型」中国から伝わったと 言われる。気温に敏感で  徒長しやすい品種。  

毛のない幅広の葉  西日本を中心に栽培。

天王寺かぶら、聖護院かぶらなど 。

福井の伝統野菜には、 山内かぶらの他にも いくつかの蕪があります。

滋賀県との県境に近い 敦賀杉箸地区「杉箸アカカンバ

福井市美山地区の「河内赤かぶら」 

岐阜県に近い大野市和泉地区 「穴馬かぶら

山内かぶらと杉箸アカカンバは日本型 と思われます。 河内赤かぶらは、西洋型のようです。 穴馬かぶらは、どうでしょう?

どのかぶらも、生産者さんたちが大切に 育てられています。 それぞれの地域で高齢化が進み、 作り手の後継が課題になっています。

かぶら蒸し

すりおろした山内かぶらと卵白、片栗粉、 塩を混ぜたものを白身魚や鶏のつくねに かけて、蒸します。 上から、昆布とかつお節だしのあんを かけます。

消化を助けてくれるジアスターゼや でんぷんを分解するアミラーゼを 多く含む蕪は、 疲れた胃を癒してくれる効果が 期待できます。

蕪の葉の信田巻き

広げた薄揚げに茹でた蕪の葉を敷き、 蕪の葉やにんじん、ねぎを入れた 鶏つくねを巻きます。 だし汁で煮ます。 

蕪の葉のふりかけ

我が家の定番!ご飯が進みます。 蕪の葉、しらす、にんじん、生姜 塩昆布を醤油とみりんで味付けして、 汁気が無くなるくらいまで炒め、 最後にごまとごま油を入れます。

蕪の葉には、根以上に栄養価が高く、 免疫力を高めてくれるβ-カロテン、 風邪予防のビタミンC、 骨を丈夫にするカルシウムなど、 健康効果が期待できる栄養素が 多く含まれています。

山内かぶらのクリーム煮

山内かぶらは、洋風にも合います。 福井産の美山ひらたけ、谷田部ねぎと共に 煮込みます。

GI認定されたことで、活気付く 「山内かぶら」

山内のかぶらを大切にしたい 飛永さんたち生産者さんや地域の 皆さんの思いを込めて、 これからの100年も作り続けて欲しい と願います。

福井のまつのべジフルサポーター

野菜ソムリエプロ

だしソムリエ協会認定講師

水嶋昭代でした。         

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