長野県茅野市では古くから寒天産業が盛んで、今も寒天を製造する企業が多く長野県寒天水産加工業共同組合があります。なんと寒天の生産量は日本一!パワースポットで有名な諏訪大社上社の周辺には、あちこちにのぼり旗が掲げられ「寒天の里」をPRしています。
ところで、寒天の原料をご存知でしょうか…?
寒天は「天草」という海藻から作られます。
天草は写真左のように赤紫色をしていますが、何度も天日干しをしたり水で洗ったりすると色素が抜けて右のような黄色いさらし天草になります。それから、あく抜きを行い、煮込んでからろ過して、流し箱に入れて固めた後切り分けられます。その後、屋外に干して約2週間かけて乾燥させるそう。そんな様々な工程を経てできあがるのですね。
寒天を天日干しする時期は12〜2月の3ヶ月のみ。工場から干し場までは距離があり、水分を含んでずっしり重い寒天を運んで並べていく作業はさぞかし大変なことでしょう。でも、こうしてたくさんの寒天がずらりと並んでいる様子は、冬の間しか見られない光景で茅野の冬の風物詩となっています。
海に面していない長野県で寒天産業が盛んだなんてとても不思議な気がしますが、江戸時代、行商人によって伝えられ農閑期の副業として定着したそう。八ヶ岳山麓に位置する茅野市は美味しい水と空気に恵まれていて、朝晩は氷点下まで冷え込む気候が寒天作りに適していたのでしょうね。
太陽の光を受けてキラキラと輝く無数の寒天…それはそれはとても綺麗でした!
2週間ほど寒風にさらし、凍結と溶解を繰り返しながら少しずつ水分が抜けていくと棒寒天のできあがり。
さて、せっかく茅野に来たので、実際に寒天を食べてみたい!…と思い、松木寒天産業株式会社さんへ向かいました。
こちらでは昔ながらの方法で無添加・無漂白にこだわった天然の寒天を製造しています。
透明感が美しい心太、早速試食させていただきました。
今回はダシ酢&金胡麻で。
つるんとした喉ごしの良さは、寒天ならではの食感。ほんのり海藻の風味が残るもののほとんど無味無臭の寒天、だからこそ様々な味付けで楽しめるのも魅力です。
こちらは今の時期しか味わえない生寒天のあんみつ。
天日干ししないでそのまま味わう生寒天、これほどまでに海藻の香りと独特の風味が残るものなのか!
と驚きました。
今では角状や糸状の寒天だけでなく、粉末の商品も多く出回り使いやすくなってきています。
水で戻すことなくスープにポン!と入れるだけの手軽な糸寒天もあり、我が家の子供たちでも簡単に作れるような寒天デザートも種類豊富。
ちなみに、こちらは以前長野県内で食べた寒天料理。寒天の麺を使い
冷やし中華風にアレンジしてありました。
寒い時期には山菜やキノコたっぷりの温かいうどん風にして。
ご存知のように、寒天は食物繊維が豊富で、ローカロリーですが、このように野菜と上手に組み合わせれば
ボリュームもアップ!
現在では和洋菓子だけでなく医薬品や化粧品など様々な分野で使われている寒天。江戸時代から続く長野県茅野市の寒天産業がその幅広い活用を支えてきたのですね。そして、茅野の気候と風土を活かした寒天作りの技術は今の時代へ脈々と受け継がれ、地元住民の食生活にも定着し特産品として親しまれています。でも、これほどまでに手間をかけて作られていることは私も全く知りませんでした。
松木寒天産業株式会社広報ご担当の熊沢さんは
「昔から変わらず伝統製法で製造している角寒天は、その見た目からは想像できない程、過酷な作業工程で製造されており、その工程が美味しさにつながっています。しかしながら、なかなかその工程の重要さがお客様に伝わらず、割安の輸入品や工業寒天にお客様が流れている状況です」
と仰っていました。
煮込んだ寒天液を同じ厚さに注ぎ、固まった寒天を同じ幅に切る、そして、寒天が折れないように丁寧かつ素早く並べて、寒天に満遍なく針を刺す。天日干しにおいては、24時間監視して、気候の変化に合わせて並べたり重ねたり雨や雪をよける作業があります。 天然寒天作りはどの工程も大切で、極寒の非常に厳しい環境の中でも丁寧な仕事が求められるそう。
そんな過酷な作業を経て寒天という食材は大切に受け継がれてきたのですね。昭和14年の創業当時から昔ながらの天然の製造方法を貫き、手間ひまかけて作られてきたこだわりの寒天、その価値を理解しながら私も日常生活に積極的に取り入れていきたいと思います!
松木寒天産業株式会社
長野県茅野市宮川宮川2623番地
TEL 0266-72-4121
http://www.kanten.co.jp/