まつのベジタブルガーデン

佐賀県国産長粒米「ホシユタカ」で日本の米文化に新風を!(後編)

ベジフルレシピヒント集

佐賀県のまつのベジフルサポーター野菜ソムリエ・食育マイスター・雑穀エキスパートの前田成慧です。

前編に引き続き、佐賀県で誕生した新品種・長粒米「ホシユタカ」についてご紹介いたします。後編は普段食べている短粒米(ジャポニカ米)とはひと味違う長粒米「ホシユタカ」のお料理や活用法についてです。「ホシユタカ」は、短粒米(ジャポニカ米)のもっちりした食味と香り、長粒米(インディカ米)のパラパラ感がある粘りが少ないのが特徴のお米の品種です。
ホシユタカ
11月上旬、収穫時期が少し遅いため、他の田んぼは全て収穫後の姿でしたが、稲の穂と背丈は短粒米(ジャポニカ米)より長く堂々とした姿で収穫を待つ「ホシユタカ」に出会えました。
ホシユタカ
左は短粒米(さがびより)、右は長粒米(ホシユタカ)

長粒米「ホシユタカ」は、炊飯器で炊くよりも生のまま調理する料理に適していて、主に中華や洋食、エスニック向き。私はホシユタカを雑穀のように短粒米(ジャポニカ米)を炊く際に少し加えて、ブレンドして調理するのも面白いと思いました。

ところで、昨年、ホシユタカの認知度向上を目指し、レシピコンテストが開催されました。応募総数123作品の中から最終審査まで残った3作品は、サラダBOX、トマトファルシ、佐賀牛の混ぜご飯。
   ホシユタカ
(写真提供:西松浦農業改良普及センター)
私も長粒米の長細い形をイメージして中華料理の「蒸しだんご」を作ってみました。粘りが少ないため、単粒米でつくる時より形成がうまくいき、イメージ通りにできあがりました。惜しくも入賞には至りませんでしたが、実際に作ってみて食材の特性がよくわかりました。

埼玉県の米問屋「金子商店」の五ツ星お米マイスター金子真人さんは、「ホシユタカはチャーハンにするのがおすすめ」と言います。お米を衣にして揚げる中華料理にも使ってみたいですね。適した料理を模索する中で米の性質を感じとり、様々な料理のアイディアが浮かびます。佐賀県伊万里農林事務所西松浦農業改良普及センターの方の「調理する楽しみが生まれ、作りたくなるお米なんだ!」という言葉が印象的でした。
ホシユタカ
イタリア米のようなパラパラ感とアルデンテの食感が特徴的ですので、パエリアとリゾットも作りました。炊飯器で炊かずに、直接フライパンに生米を入れて作ります。
ホシユタカ
家庭のキッチンで作ったとは思えないほど、長粒米の特徴を生かしたアルデンテの食感で美味しくできあがりました。噛めば噛むほどにお米の優しい甘味が口の中に広がり、輸入米で作るリゾットやパエリアに比べると独特なクセのある香りや味がなく、カラダにも合うお米だ!と感じました。輸入した長粒米はこのホシユタカよりも長さがあるため炊く時間が長くなります。時短料理としても活用できる食材ではないでしょうか。
 ホシユタカ
 【リゾットの作り方】

材料
・白米(長粒米) 1合
・オリーブオイル 大さじ2
・タマネギ 1/2~1個
・鶏もも肉 100g(豚肉などお好みの具で代用可)
・トマト 1個
・コンソメキューブ 1個(湯400mlで溶かす)
・塩・黒こしょう 適量
・白ワイン 50ml
・バター 8g
・とろけるチーズ お好み量
・粉チーズ 少々
・粉末パセリ 少々

 .熱したフライパンにオリーブオイルをひき、鶏肉を炒めみじん切りしたタマネギをやや半透明になるまで炒めます。塩・黒こしょうで味を調えます。
.ひと口大に切ったトマトを加え軽く炒めて、白ワインを入れアルコールを飛ばします。
.生の白米(長粒米)を洗わずにそのまま加え、米粒に透明感が出るまで軽く炒める。その際、フライパンに円を描くように混ぜましょう。
4.お湯で溶いたコンソメを加え、軽く混ぜたらフタをして中火で10分煮込みます。
.煮込み時間は10分程度ですが、お好みで柔らかいものが好きな方は約5分煮込み時間を増やします。
.バターを入れて溶かし、お好みで黒こしょうで整えます。
.とろけるチーズを加えて溶かし、お皿に盛り付けたら粉チーズとパセリを振りかけて完成です。

ジャーサラダも作ってみました。柚子胡椒とジェノバソースをかけると、エスニックな味わいとなりパラパラとしたお米はサラダととても合い美味しかったです。
ホシユタカ
ホシユタカは水を吸って膨らむことがないので、サラダにトッピングしたり、クスクス(小麦粉から作る粒状のもの)を使う料理の代用食材として活用できそうです。タイカレーなどの液状のカレーに合わせると本格的な一皿になるでしょう。
ホシユタカ
 (写真はだし汁に炊いたご飯を入れて2時間経った状態)
実験したのですが、雑炊を作って約2時間放置してみました。普段使うジャポニカ米で作ると水分がなくなり、米自体が膨らみ、時間が経つほどに形が崩れて美味しさが損なわれますが、長粒米(ホシユタカ)では水分は無くなりませんでした。ほとんど吸っていない状態で形も崩れていません。これは、粘りの成分が少なくデンプンの一種であるアミロースが高いため。一般的に日本人が好むお米は、アミロースが少なくつやや粘りのあるタイプ。長粒米「ホシユタカ」は、高アミロース米の特性を活かした新しい食材として期待されています。
ホシユタカ
 「ホシユタカ」は、佐賀県では道の駅「伊万里ふるさと村」、福岡県では博多にある「九州マルシェ」で販売されています。
ホシユタカ
今はまだ少量販売で、知名度を高めるべくPRに努めています。可愛いデザインは、佐賀大学の地域デザイン科の学生と印刷会社で考案したもの。猫のスタンプでイラストもサイズも愛らしいですね。

今回、プロジェクトに関わる方々や生産者の想いを取材の中でたくさん受け取りました。金子真人さんのような実需者が声を大きくすることで、新しいイネの品種が佐賀県で生まれ、それを生活者が試行錯誤してレシピを考える…今は新品種の可能性を模索する段階と言えますが、「国産・長粒米プロジェクトin佐賀」として、様々な方の夢をのせているホシユタカ。全国に新たな米文化の新風を吹きこみ、日本国民に愛されることを願っています。

佐賀県のまつのベジフルサポーター野菜ソムリエ・食育マイスター・雑穀エキスパートの前田成慧でした。

 

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