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佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧です。
この度の記録的な豪雨により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。佐賀県内でも各地で被害が出ております。一日も早い復興を祈り、応援の思いを込めて、豪雨の前の果樹園の様子をレポートさせていただきます。
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前回に引き続き、「フルーツの里」佐賀県伊万里市南波多町のすもも農園のすももたちについて詳しくご紹介します。
「すももも、ももも、もものうち」という早口言葉のように、「すもも」と「もも」は同じバラ科の植物ではありますが、すももは杏や梅、プルーンに近い品種で、桃はアーモンドと兄弟といえるほど近い品種。どちらも同じ核果類のグループですが、従兄弟のような関係です。すももは酸味が強いことから「酸桃」と呼ばれるようになりました。
すももの原産は中国の華中地方で、弥生時代に日本に伝わったといわれています。古事記や日本書紀にも記述があり、万葉集にも「吾が園の李(すもも)の花か庭に散るはだれのいまだ残りたるかも」という歌があります。その時代にすももの花を眺め、実を食べるために植栽されていたのが分かります。
明治時代まで主要果樹としての価値は低かったのですが、アメリカに逆輸入され、日本の在来すももが高く評価されました。英語で「プラム」と呼ばれ、アメリカで品種改良が盛んに行われました。その後、大正時代に日本のすももが品種改良され、英語名の新しい品種となって日本に帰ってきたのです。
6月に一番早く出回る品種で代表的なすももに「大石早生」があります。少し小ぶりで酸味があり、実は柔らかく中は濃い黄色、さっぱりした甘さが特徴です。約50~60gの重さで直径は4㎝ほど。実が熟すと急激に軟らかくなりやすいので、果頂部の色が少しついた頃、黄緑色の状態で収穫します。香りが豊かで追熟すると真っ赤に色づいて糖度も増します。
ハウスものは5月下旬から出回り、露地ものは7月上旬まで収穫できます。平均糖度は9~11度。
「大石中生(なかて)」は、早生品種より少し後に出回ります。ハウスもの6月中旬、露地ものは7月中旬に収穫します。果皮は熟すと牡丹色になり、平均90g程度で大石早生より大きく、果肉の色は黄色ですが、皮の付近が赤く染まっています。果肉は綿密でジューシー、糖度は17~19度と甘さが強く、酸味が少ない品種です。だた大石早生より皮が薄くて破れやすいので長期輸送には不向きです。
「ソルダム」は大石中生と同時期に収穫され、ハウスものは6月中旬〜7月上旬、露地ものは7月中旬から収穫できます。果皮は飴色で、黄緑色が強い時に収穫します。完熟すると赤紫色になるので1週間ほど追熟させてから食べます。果肉は真っ赤な色をしているのが特徴。皮の表面が波打っているときがあります。かりりと歯ごたえが良く、酸味が持ち味のすももです。日持ちが良くて甘味と酸味のバランスが良い品種です。糖度は11~14度程度。
出荷するときは黄緑色ですが、完熟すると食欲をそそるような紅色へと変化します。
品種によって追熟の期間はちがいますが、果皮に触れて少し柔らかく感じ、香りがしてきたら食べ頃です。
収穫時にすでに赤紫色をしている品種「ハリウッド」は、大石早生より小さくて、重さは約40g、3.5㎝程度の大きさ。
受粉樹として植えているそうですが、その独特な容姿は特徴的です。
ハリウッドの樹は他品種の樹と色が違って、枝も葉の裏側も紅色をしています。赤紫の葉に薄ピンクの花を咲かせることから、紅葉すももとして観賞用にされることもあります。
果皮、果肉ともに濃い紅色をしています。ジューシーで甘味が強く(糖度13〜15度)、酸味が少ないのですが、小ぶりで色が濃いためジャムや加工用向きと言われています。ハウスでは6月中旬から、露地ものは7月中旬〜8月中旬に収穫します。
ソルダムと同時期かやや遅く成熟する「サマーエンジェル」は、ソルダムとケルシーを交配して育成された品種で、150~200gと大きな果実です。ピンク色の可愛らしい実は樹上で完熟してから収穫されます。熟すと鮮赤色になり美しくなります。糖度が高くて酸味が低いので食味が良いとされるますが、果肉はやや硬めの品種です。
果肉は黄色で緻密。糖度は15〜17度ですが、酸味もあるためほどよい甘さ。
(写真右下は貴陽)
今まさに収穫・出荷が始まった「貴陽」は、「すももの王様」と呼ばれるほど糖度と酸度のバランスが良く、ほどよい硬さとジューシーな果肉で、食味が良好な品種です。ハウスものは7月上旬から、露地ものは7月下旬から収穫されます。重さは200gを超し、平均糖度は16~18度で、酸味が少ないためとても甘く感じます。果汁も多く、果肉の硬さが適度で、食感が抜群に良いと評判です。世界一重くて甘いことで知られています。
最後にご紹介するのが、「バイオチェリー」という品種。これは受粉樹として植えているそうですが、ハリウッドより小ぶりで黒紫色。果肉は黄色で緻密、糖度13~15度で多汁で甘いのが特徴です。
「すもも」と「さくらんぼ」との交配でできた品種で、確かに大きなさくらんぼ(アメリカンチェリー)のように見えますね。初めて出会う品種で驚きました。ちなみに自家結実性があるそうです。
それでは、最後にすももの種を使った「杏仁豆腐」のレシピをご紹介します。
杏仁豆腐とは杏の種の中の仁(じん)と呼ばれる独特な香りのあるものを原料に作るのが一般的ですが、杏とすももはまさに兄弟のように近い仲間。すももの種でも杏仁豆腐がつくれます。まず、すももの種を10粒用意します。
水に浸しふやかし、キッチンばさみで種を割り、中の仁を取り出します。
仁をすり鉢ですり、牛乳か豆乳(500ml)と合わせてさらにすり混ぜます。
鍋に移して沸騰させないように弱火にかけてザルでこします。湯100mlでとかしたゼラチン10gを加えて鍋に入れ、沸騰させないように加熱して砂糖大さじ4を入れます。カップに流し入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やし固めます。シロップ(水100mlと砂糖大さじ3を加熱)をかけて、クコの実を飾ると完成。今回はサマーエンジェルを添えました。
香りの強い杏仁豆腐ができました。すももの種の仁をつぶしていると、「杏仁豆腐のにおいがする!」と息子も種に興味を持っていたようです。
今回は個性あふれる様々なすももをご紹介しました。他の産地ではもっと個性的なすももに出会えるかもしれませんね。蒸し暑い夏の時期、さっぱりしたすももを食べて爽やかに過ごしませんか。
佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧でした。