まつのベジタブルガーデン

佐賀県あれもこれもキャベツ・大家族のアブラナ一家【前編】

野菜・果物品目レポート

皆さまこんにちは。佐賀県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエ・食育マイスター前田成慧(まえだなりえ)です。

今回は一年中大活躍の野菜「キャベツ」について、食育エピソードを織り交ぜながらご紹介します。

食卓でおなじみの「キャベツ」は、サラダや炒めもの、スープ煮、ロールキャベツ、餃子やお好み焼きなど、いろいろな料理に欠かせないお野菜です。

キャベツを大きく分けると、春に収穫され葉が柔らかくゆるく巻くサラダなど生食に適した春キャベツを【春玉】。夏の高原で収穫され小ぶりで柔らかく、どんな料理にもあう夏キャベツを【高原キャベツ】。秋から翌年の春まで収穫され葉がかたくしっかりと巻くお好み焼きや煮物などに適した冬キャベツを【寒玉】と呼びます。

収穫は3シーズンあるので年中手に入り、それぞれの品種ごとに特徴が違うため、年に旬が何度も訪れるのです。

今キャベツが通年手に入るようになったのも、明治時代中期に秋に出荷していた品種を改良して春に出荷できるように研究を重ねた東京の農家・中野藤助さんのおかげ。「中野甘藍(かんらん)」という初めて日本の風土にあう品種が作られました。実は、「キャベツ」という名が定着するまでは『甘藍(かんらん)』、『玉菜(たまな)』、『巻菜(まきな)』、『毬菜(まりな)』、『介別(かいべつ)』とさまざまな呼び方がありました。昭和に入ってから、cabbageが『キャベツ』となり定着しました。

日本に入ってきた当初のキャベツは、巻いていないキャベツの種でした。オランダ人が薬草としてもたらし、当初は食べるものでなく、見て楽しむ観賞用の「紅夷菜(おらんだな)」として日本独自に進化しました。江戸時代中期の園芸ブームに乗って品種改良され、大きな花びらの様に葉が重なる姿が牡丹に似ていることから、牡丹菜や葉牡丹と呼ばれるようになり、300年経った今でも正月を彩り、人々に愛されています。

もともとキャベツは今のようなボール型ではありませんでした。青汁の原料として知られる「ケール」のように葉が巻かず背が高くなる植物でしたが、人間が栽培する中で気の遠くなるような年月をかけて巻くようになったのです。今でも野生のキャベツは地中海沿岸の岩場などに生えています。

カーボロネロ(巻かないキャベツ)
ケールの一種で、葉が黒いので「黒キャベツ」とも呼ばれています。葉は細く縮れていて肉厚なのが特徴です。繊維質で独特な苦味もあるので、生食よりスープやパスタ、煮込み料理、炒めもの料理に適しています。ケール(羽衣甘藍)が最も一般的なキャベツの祖先に近く、その名称はケルト人が栽培したことに由来しています。カールドタイプ(葉が縮れる)とプレーンタイプ(縮れない)とがあります。

他にも姿カタチは違いますが、キャベツの仲間はいっぱいあります。
コールラビ(球茎甘藍)

これは、ボールのように膨らんだ茎をサラダや酢漬け、スープにして食べます。これも同じキャベツの仲間だから驚きです。「かぶ甘藍」とも呼ばれています。紫色をしたコールラビもあります。

芽キャベツ(子持ち甘藍)は、わき芽が小さなキャベツのように結球したもので、17世紀にベルギーで生まれました。一般的なキャベツの4倍のビタミンCがあると言われ、通常のキャベツは淡色野菜なのですが、芽キャベツは緑黄色野菜となります。甘味が強くて柔らかいのですが、やや苦味があるのが特徴です。シチューやポトフに入れるのも良いですね。美味しい芽キャベツが食べられるのは、晩秋から春先までの寒い季節に限られています。

芽キャベツは地上から70~80cm程に伸びた1本の茎に50個から60個程鈴なりに実ります。1個の大きさは栽培環境にもよりますが平均20g程で、一口サイズという言葉がぴったりです。

私は芽キャベツとマッシュルームのアヒージョで楽しみました。

芽キャベツのように本葉のわきにいくつも芽が出る結球しない品種「プチヴェール」もあります。平成2年に静岡県(増田採種場)で作られました。芽キャベツとケールを交配させた新しい品種で、糖度が高く小さなフリルのような可愛い芽キャベツです。名前はフランス語で小さいという意味の「プチ」=Petitと、緑という意味の「ヴェール」=Vertを合わせて名づけられました。

それでは、サボイキャベツをご存知でしょうか。

形は一般的なキャベツと同じなのですが、葉が縮れているのが特徴です。別名「ちりめんキャベツ」とも呼ばれます。やや水分が少なく繊維質です。フランスのサボア地方発祥で、煮込み料理に向いています。紫色をしたサボイキャベツもあります。

たけのこキャベツ

長円錐形をした小型の品種で、種をまいてから3か月で収穫できる葉がとても柔らかい生食向きの品種。巻きは比較的緩めで、葉がやや肉厚です。写真は「みさき甘藍」という品種。とんがりキャベツとも呼ばれたりします。

他にも、スーパーで見かけるグリーンボールや紫キャベツ、花のつぼみを食べるブロッコリーやカリフラワーなどもキャベツの仲間です。

Brassica(ブラシカ)」…アブラナ属、「oleracea(オレラセア)」…畑に栽培されたという学名がキャベツの仲間にはついています。

最近ではハウス栽培などの技術が発達し、一年を通じてさまざまな野菜を食べることができますが、面白いことにキャベツは露地栽培がほとんど。もともと涼しい気候を好むので、冬より夏に作るほうが難しいのです。キャベツはあまり土地を選ばす、寒さや乾燥に強いので、適応力の高い野菜です。時期や産地、品種をうまく組み合わせて、いろいろな品種が全国で調整されながら、生産・出荷されています。今後も特色のある品種が作られていくことでしょう。

キャベツの歴史やルーツについて詳しくは、後編でご紹介いたします。
佐賀県のまつのベジフルサポーター 野菜ソムリエ・食育マイスター前田成慧でした。

※ キャベツ畑のお野菜写真は佐賀県吉野ヶ里町北部でイタリア野菜を中心に年間300品種ほどを栽培されている、こだわり農業を営む野菜ソムリエ「森田浩文」さんからご提供頂きました。
吉野ヶ里あいちゃん農園
http://yoshinogariyasai.com/ec/

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